www.facebook.com
www.twitter.com
www.linkedin.com
www.blogger.com
www.myspace.com
RSS Feeds
 
INPS JAPAN   IDN-InDepthNews - UN INSIDER
  • 01
  • 02
  • 03
  • 04

Nuclear Abolition News and Analysis

SDGs for All

Institutional Highlights

エジプト、米国の「核の傘」を拒絶する

 

【カイロIDN-InDepth News=ファリード・マハディ】

 

今週開催された米国・エジプト首脳会談においては、中東をめぐる米国の「核の傘」という亡霊がつきまとった。5年ぶりとなるエジプトのホスニ・ムバラク大統領の訪米に向けた準備段階で、同大統領と側近の高官は、中東包括和平案の一部として米国政府が核攻撃から中東地域を守ることを提案しているとする疑惑を、きっぱりと否定していた。

米国による「核の傘」の起源は米ソ冷戦時代に遡り、通常、日本、韓国、欧州の大半、トルコ、カナダ、オーストラリア等の核兵器を持たない国々との安全保障同盟に用いられるものである。また、こうした同盟国の一部にとって、米国の「核の傘」は、自前の核兵器取得に代わる選択肢でもあった。



消息筋によると、
ムバラク大統領はオバマ大統領との8月18日の首脳会談に際して、「中東に必要なものは平和、安全、安定と開発であり、核兵器ではありません。」と主張した。


ムバラク大統領はそうすることで、1974年以来エジプト政府が国是としている「
中東非核地帯」設立構想をあくまでも推進する決意であることを改めて断言した。


またムバラク大統領は、首脳会談に先立つ8月17日、エジプトの主要日刊紙アル・アハラムとの単独インタビューに答え、「エジプトは中東湾岸地域の防衛を想定した米国の『核の傘』には決して与しません。」と語った。


「米国の『核の傘』を受け入れることは、エジプト国内に外国軍や軍事専門家の駐留を認めることを示唆しかねず、また、中東地域における核保有国の存在について暗黙の了解を与えることになりかねない。従って、エジプトはそのどちらも受け入れるわけにはいかないのです。」とムバラク大統領は語った。


ムバラク大統領は、「中東地域には、たとえそれがイランであれイスラエルであれ、核保有国は必要ありません。中東地域に必要なものは、平和と安心であり、また、安定と開発なのです。」と断言した。「いずれにしても、米国政府からそのような提案(核の傘の提供)に関する正式な連絡は受けていません。」と付け加えた。


同日、エジプト大統領府のスレイマン・アワド報道官も、米国の「核の傘」について論評し、「『核の傘』は、米国の防衛政策の一部であり、この問題が取り沙汰されるのは今回が初めてではありません。ただし今回の場合、問題が中東との関連で取り沙汰されている点は新しいと言えます。」と語った。


事実、
中印国境紛争が最も緊迫した時期(ちょうど米国が1962年10月のキューバ危機に直面した時期と重なっていた)、ジョン・F・ケネディ政権は、中国から自国を防衛するため米国の軍事支援を求めざるを得ないと考えていた当時のインド政府に対して、非公式に米国の「核の傘」の提供を申し出たことがある。


アワド報道官は、現在浮上している中東地域に向けられた米国の「核の傘」疑惑についてコメントし、「そのようなものは形式においても内容においても全く承認できない。今は米国の『核の傘』疑惑について話題にするよりも、むしろイランの核開発問題について、欧米諸国・イラン双方による柔軟性を備えた対話の精神を基調として、取り組むべきです。」と語った。


アワド報道官はまた、「イランは、核開発計画が平和的利用を目的としたものであることを証明できる限り、他の核不拡散条約(NPT)締結国と同様、核エネルギーの平和的から恩恵を受ける権利があります。」と付け加えた。


「このイランに対する取り組みには、2重基準との誹りをかわすためにも、同時並行で、イスラエルの核能力の実態解明に向けた真剣な取り組みが伴わなければなりません。」とアワド報道官は強調した。(エジプト政府は、核兵器保有国のイスラエルに対し、NPTに調印し、国際原子力機関の監視を受けるよう国際社会が圧力をかけることを求めている:IPSJ


これら一連のムバラク大統領の報道官による発言は、「中東非核地帯」設立を目指して35年に亘ってエジプト政府が取り組んできた方針に一致するものである。ムバラク大統領は、1990年4月、このイシニアチブを更に推し進めるべく、守備範囲を更に拡大した「大量破壊兵器フリーゾーン」構想を新たに提案している。


このエジプトの取り組みは殆どのアラブ諸国の支持を獲得し、最近でも22カ国のアラブ諸国で構成するアラブ連盟のアムレ・ムサ事務局長がこのイシニアチブの正当性を改めて是認する発言を行った。


ムサ事務局長は7月5日、「中東の非核化は必ず実現しなければならない問題です。」と宣言した。


「中東非核地帯」構想へのアラブ諸国の支持は、米国、イスラエル、欧州諸国がイランの核兵器開発疑惑を問題視するようになってから、特に湾岸地域のアラブ諸国において益々強まっている。


イランはこうした欧米諸国からの嫌疑を全面的に否定し、同国の核開発プログラムはあくまでも平和的利用と原子力発電を目的としたものであると主張している。一方、米国、イスラエル、欧州諸国は、イランに核兵器開発を許さないとして一歩も譲らない構えである。


このような欧米諸国の強硬姿勢は、イランの核武装は望まないものの、その他の事態収拾策を望むロシア、中国の姿勢とは対照的である。アラブ諸国も、欧米諸国が主張するイランの核兵器開発意図について、どちらかと言えば疑念を抱いている。


欧米の見方については
国際原子力機関(IAEAの天野之弥新事務局長(12月1日就任予定)が暗に異議を唱えている。天野氏は、新事務局長選出後の7月3日、記者団に対して「イランが核兵器を開発する能力を取得しようと試みているとの動かしがたい証拠は見当たりません。」と語った。

ロイターのシルヴィア・ウェスタール記者による「イランが核武装を試みているとの見解をお持ちですか?」との質問に対して、ベテラン外交官で核不拡散問題の上級専門家でもある天野氏は、「この問題に関するIAEAの公式記録を見ても、そのような疑惑を裏付ける証拠は一切見当たりません。」と答えた。


2日後の7月5日、アラブ連盟のムサ事務局長は、クウェートの日刊紙『アル・アンバ』との単独インタビューで、「イランは中東地域にとって現実的な脅威か?」との質問に対して、「イランが軍事目的の核開発計画を行っていると証明できる書類化された証拠は何もありません。」と答えた。


「(中東には)核兵器を保有する国は1つしかありません。それはイスラエルです。」と、ムサ事務局長は強調した。


イスラエルは60年代半ばに核兵器開発を開始したが、同国の歴代政府は、核兵器の保有に関して、意図的に肯定もしなければ否定もしない政策をとってきた。


それにも関わらず、
ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)は、イスラエルを2009年1月現在における核弾頭配備数で世界第6位の核兵器大国とランク付けしている。

SIPRI
のデータによると、イスラエルが配備している核弾頭数は、安保理常任理事国の5大国(米国、ロシア、英国、フランス、中国)に次ぐ80基で、インド(60~70基)、パキスタン(60基)の配備数を上回っている。


またSIPRIによると、北朝鮮は、使用可能な核兵器を保有しているかどうかについては不明だが、既に若干数の核弾頭を組み立てるには十分なプルトニウムを生成していると考えられている。


イスラエルは、米国、ロシア、英国、フランス、中国と異なり、1968年に署名開放された
核不拡散条約(NPTに加盟していない。

しかしながら、イスラエルは、今年1月の時点で総計23,300発超と見積られている世界の核弾頭を保有している8カ国の一角を構成している。このSIPRI発表の核弾頭数には、「即時使用可能核弾頭」、「非現役予備核弾頭」、活性及び不活性の「備蓄核弾頭」、及び解体待ちの「退役核弾頭」が含まれている。


「インド、パキスタン両国も、イスラエル同様、NPT未加盟の事実上の核兵器保有国であり、引き続き、核弾頭を搭載可能な新型ミサイルシステムの開発と核分裂性物質の生成能力強化に取り組んでいる。」とSIPRIは報告している。


しかし、SIPRI発表の核弾頭数については、疑問を呈する声も上がっている。例えば、ジミー・カーター元米国大統領は、「イスラエルは150基ないしそれを上回る数の核弾頭を保有している。」と主張している。


エジプトの高名なジャーナリスト、作家、政治評論家で、故ガマール・アブドゥン・ナセル、故アンワル・サダト両大統領の側近として顧問を務めたモハメド・ハサネイン・ヘイカル氏は、イスラエルは200基の核弾頭を保有していると語っている。


米国に本拠を置く軍備管理協会(ACA)は、効果的な軍備管理政策に対する公衆の理解と支援を促進する目的で1971年に設立された無党派のシンクタンクであるが、イスラエルの保有核弾頭数は75基から200基と見積もっている。


一方、エジプト軍諜報筋はイスラエルが保有する核弾頭数を230基から250基の間と見積もっている。


イスラエル政府は、これらの報告や数値に関して否定(も肯定も)していない。


アラブ諸国の支持を集めているエジプトの中東非核地帯化イシニアチブは、イスラエルが域内唯一の核兵器保有国として、中東地域全体の脅威となっている現実を踏まえたものである。


匿名を条件に記者の取材に応じたエジプト政府高官は、「我々は常々、中東地域で唯一の明らかな核兵器国(イスラエル)を特別扱いしている米国には、未だ核兵器の開発をしていないイランに対して、核開発計画を中止するよう要求する正当性は持ち合わせていないと主張してきた。」と語った。


また同政府高官は、「ムバラク大統領はオバマ大統領との会談の席でこの議論を持ち出しました。エジプトは、もし米国がイスラエルに圧力をかけて核兵器廃棄に持ち込んでいたならば、イランの潜在的な核開発の野望を止めさせる上で、正当かつ強固な立場を構築できていただろうと常々明言してきたのです。」と語った。


また同政府高官は、ムサ事務局長が最近述べた声明に言及した。「中東の非核化は必ず実現しなければならない問題です。イスラエルの核兵器の存在は、核不拡散の原則を破り、非核保有国を核開発に走らせる原因となっているのです。」


エジプト外務省のハッサム・ザキ報道官は今週初旬に行った公式声明の中で、「エジプトは、政府のあらゆるレベルで、また、国際会議などあらゆる機会を捉えて『中東地域は非核兵器地帯と宣言されるべき』と一貫して論じてきました。」と語った。


ザキ報道官は、米国・エジプト首脳会談は、核軍縮を協議するのに相応しいタイミングで開催された点を指摘した。オバマ大統領は4月5日、チェコ共和国の首都プラハで行った演説で、「核兵器のない世界」の実現に向けて取り組んでいくことを誓った。


7月6日、米国のオバマ大統領は、ロシアのメドベージェフ大統領との間に、向こう7年以内に双方の備蓄核兵器の一部削減を目指した共同文書に署名した。


このモスクワ合意は、大陸間弾道ミサイルと潜水艦発射ミサイル双方を含む戦略核弾頭を削減対象としたもので、今年12月に失効する第1次戦略兵器削減条約(SART1)の後継条約について骨子を合意したものである。


米国・エジプト首脳会談は、また、核兵器廃絶に向けた重要なステップとして世界的な核軍縮キャンペーンが展開されている最中に開催された。


核兵器廃絶を目指す世界的な核軍縮運動
「グローバルゼロ(Global Zero)」キャンペーンは、政治や軍事、経済、宗教、市民活動など、様々な政治路線を横断的に網羅した有識者およそ100人の署名人によって、昨年12月にパリで創設された。

このキャンペーンは、「グローバルゼロ宣言」の中で運動の目的を、「2大核兵器大国(世界の核兵器の95%を保有する米国とロシア)が、段階的かつ検証を伴う削減システムの確立を通じて、世界の核兵器廃絶に向けた包括的合意を実現できるよう運動を通じて支えていくこと。」としている。


現在グローバルゼロでは、段階を踏んだ核廃絶を実現していくための政策立案を進めており、世界的なメディア、オンラインコミュニケーション、市民社会組織を通じた幅広い一般民衆による支持態勢の構築に取組んでいる。


グローバルゼロの署名人は、2010年上旬に数百人の各界の指導者を集めて、同キャンペーンのヨルダンのヌール王妃が「核の狂気(the nuclear folly)」と呼ぶ「核兵器」の廃絶をテーマとしたグローバルゼロ世界サミットを開催すると発表している。(
原文へ


 

*編集:ラメシュ・ジャウラ

 

翻訳=IPS Japan 


関連記事:

|軍縮|核兵器に反対しつつも伸び続ける米国の武器輸出