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INPS JAPAN   IDN-InDepthNews - UN INSIDER

|インド|福島第一原発事故でインドの原子力推進はどうなる

【ムンバイIDN=シャストリ・ラマチャンドラン】

 

日本が3重災害(震度9.0の巨大地震、津波、福島第一原子力発電所の放射能事故)に見舞われた結果、インドの野心的な原子力推進計画に暗雲が垂れ込めている。とりわけ、日本政府とインド政府が協議中の原子力協力協定の交渉は、無期限で延期されることが確実な情勢である。

また、与党統一進歩同盟(UPA)の最大の戦略的・外交的成果と喧伝されてきた[すでに締結されている]米印間の原子力協定についても、その実施までには両国の当初の予想に反して、より時間を要することになるかもしれない。


さらに印仏間の原子力協定に至っては、ジャイタプールでの原子炉建設計画に地元からの抗議行動が強まっており、とくに厳しい状況にある。

 
日本が深刻な危機に直面する中、空前の進展を見せていた日印間の経済関係も、共同事業の減速、停止などを通じて後退を余儀なくされるだろう。


日印関係は、2000年代に入って順調に推移し、戦略的・グローバルパートナーシップを構築するまでに発展していたが、ここ数年間にみられたような勢いの大半は、失われることになるだろう。


日本にとって対インド関係は、良好であった1950年代以降は、あまり進展することなく推移し、1998年のインドの核実験実施によってもっとも厳しいものになった。その後、2000年に
ビル・クリントン米大統領(当時)がインドを訪問したことが転機となり、その後、インドとの経済的、政治的、戦略的関係が強まることになった。今日、日印間で毎年首脳会談を含む年3回の閣僚会議が開催されている事実は、両国関係の強い絆の深さとその可能性を示すものと言えよう。そうした中で、協議中の日印原子力協定は、もし締結されれば、日印二国間関係で最大の成果となっていただろう。


日印2国間の貿易総額のみを見れば依然として100億ドル規模であるが、政府開発援助(ODA:インドが最大の受領国である)、直接外国投資( FDI )、外国間接投資(FII)も含めて見れば、日印間の経済協力規模は例外的に高いレベルのものである(因みに、日本がインド以外でこのレベルの経済協力関係を有する国は米国のみである)。このような両国の経済関係を反映して、インドに進出した日本企業はこの5年間で250社から750社にまで急拡大した。また日本は、
デリー・ムンバイ間産業大動脈回廊とチェンナイ・シンガポール間回廊という2つの計画を後押ししている。


今後
東日本大震災からの復興に日本の資源と労力の多くが費やされると予想されることから、日印間の開発計画、とりわけ建設、インフラ設備関連の企業が関与した計画は、大きな見直しを迫られることになるだろう。例外はチェンナイ・シンガポール間回廊くらいかもしれない。また、日印間の戦略、防衛分野の協力関係も後退を余儀なくされるだろう(今日の二国間関係から一方の都合による変更が大きな問題に発展する可能性はほとんどないが)。


インドは、投資資金の撤退という事態を、なんとか乗り越えることができだろうが、民生用核開発計画が被るダメージは、電力、インフラ開発分野に止まらないだろう。その影響は、インドが従来エネルギーオプションとして追及してきた原発開発の時計の針を巻き戻し、既に締結した米国やフランスとの原子力協定をも危ういものにしてしまうかもしれない。


日本の核関連技術は世界最高峰で最も洗練されていると評価されている。だからこそ、米国の
ゼネラル・エレクトリック(GE)社及びウェスティングハウス社、フランスのアレバ社は、それぞれ日立、東芝、三菱と提携関係を結んでいる。日本の専門知識、技術、部材は、大半の原発設備の中核に使用されている。このため、日本の協力がなければ(日本との原子力協力に関する二国間合意が現時点でない中、事実上困難な状況にある)、米仏の企業が原発建設の発注を受けても建設が困難ということになり、結果的に米印・仏印原子力協定も頓挫してしまう可能性がある。

さらに、福島第一原発事故は、こうした流れに水をさすことになった。日本には広島・長崎における原爆の経験があり、放射能流出を引き起こした福島第一原発事故は、この記憶が呼び覚すとともに、原発建設をこうしたリスクを踏まえたモラルの問題として再浮上させた側面がある。


福島第一原発事故に危機感を抱いた人々は、日本政府が近い将来、インド政府との原子力協定締結を検討することにさえ反対するだろう。また、こうした日本国内に広がる感情は、インドや世界各地における原発反対世論を押し上げることになるかもしれない。そして、ジャイタプール原子炉建設計画に対する地元住民の抗議活動のような現在進行中の反原発運動は、こうした世論を背景に新たな勢いを獲得するだろう。


世界各国に目を移せば、中国は原子力発電計画の承認を一時中止し、ドイツは7つの原発施設の閉鎖を決定した。そして米国とインドも操業中もしくは建設中の施設を対象に包括的な安全性検査を行う方針を示した。しかし、各国政府のこうした措置は、国民の原発に対する信頼を高めるどころか、かえって反対世論を勢いづかせる結果になったかもしれない。


問題は、原発施設そのものの安全うんぬんにあるのではなく、原子力に対する世論の感情にある。こうした現状は、インドにとっても、原発の将来にとっても、現在の成長・開発モデルにとっても、よくない徴候であることに違いない。(
原文へ


翻訳=IPS Japan浅霧勝浩



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