|タンザニア|土地収奪を狙う投資家と闘う先住民族社会
【ダルエスサラームIPS=キジト・マコエ】
ヘレナ・マガフさんは、係争の対象になっていた土地が自分のものであると認める文書を手に、笑顔を見せた。文書が彼女の手に渡され、隣人との激しい紛争が解消されたのだ。
「とてもうれしいです。これで、ここが自分の土地と言い張る人間はもう出てこないと思います。」とマガフさんは語った。
飢餓撲滅と食料安全保障のカギを握るアグロエコロジー
【ローマIDN=ジャヤ・ラマチャンドラン】
国連食糧農業機構(FAO)によれば、全ての人を養うのに十分な食料が世界で生産されているにも関わらず、依然として8億1500万人が飢えている。2050年までに100億人にまで増えると見込まれる世界の人口が必要とする食料を十分得られるようにすることは、国際社会が直面している最大の課題の一つだ。専門家らは、アグロエコロジーにひとつの解決策を見出している。
専門家によると、アグロエコロジーを普及することによって、従来の化石燃料に依存する工業化された農業に代わって、持続可能な食料・農業システムへと移行することが可能だという。これは、食料安全保障と栄養をすべての人に保証し、社会的・経済的平等をもたらし、農業が依存する生物多様性とエコシステムを保全するものだ。
気候変動がもたらす悪影響と闘うアフリカの女性農民
【ニューヨーク/バマコIDN=ロナルド・ジョシュア】
ファトウ・デンベレさんは、農業人口の半分が女性である西アフリカの内陸国家マリの農民である。農業は女性を貧困から抜け出させる重要部門だ。しかし、気候変動が引き起こす土地と天然資源の劣化が女性をより弱い立場に追い込んでいる。
デンベレさんは、自分の作物が貧弱になっていったとき、畑がダメになって自分の生活が危うくなったと感じた。「土地が病気になったと思いました。まさか作物の根っこを襲って殺すような寄生虫がいるとは思いもよらなかったのです。」とデンベレさんは語った。
|タイ|農業を充足的かつ持続可能にする「スマート農場」
【チャンタブリIDN=カリンガ・セネビラトネ】
タイの農民たちが、近代情報通信技術(ICT)を利用した「スマート農場」の枠組みの下で、基本に立ち返ろうとしている。タイでは、王国の生命線である農業と小規模農家を将来にわたって持続可能なものとするために、(民の苦しみ、とくに精神的状況を和らげるための)仏教的原則を基礎とした「足るを知る経済(Sufficiency Economy)」の下に農業を統合することが目指されている。
シティポン・ヤナソさんはIDNの取材に対して、多様な果実がよく茂ったドリアン・プランテーションで、「(同じ木から)より多くの果実を収穫するために化学肥料を使う農家もいますが、それだと3年から5年で幹が死んでしまいます。私たちは有機肥料を使うので、幹は30年はもちます。」と語った。
|スリランカ|紅茶農園が干ばつを背景に環境意識の転換を迫られる
【ラトナプラIDN=ステラ・ポール】
リルヒナの製茶工場で稼働している十数台の機械から発している耳をつんざくような回転音を聞くと、頭に激しい一撃を食らわされたような気になるが、この工場で働くビヒタ・マドゥラさんやラジャカクシミ・チャンドラクマールさんにとっては心地よい音楽のようなものだ。
騒音をあげ黒い煤を吐き出しているこの機械は、彼女たちにとっては最も肝心なこと、つまり「今日も一日働くことができた」という事実を象徴するものだ。マドゥラさんは、シャベルで茶葉を巨大な煎り釜に投入しているチャンドラクマールさんを見ながら、「これが私たちにとっての日常です。」と語った。いずれも40代のマドゥラさんとチャンドラクマールさんが安堵しているのには理由がある。紅茶生産大手「ディルマー」社のカワッテ・農園が保有するリルヒナ工場は、スリランカで屈指の優良茶葉生産企業だからだ。
若い世代が空腹のまま前進することはできない。
【国連IPS=タリフ・ディーン】
潘基文事務総長は、国連のポスト2015開発アジェンダにおいて、世界の青年には特別な役割があると主張している。しかし同時に、この若い世代が空腹のまま新アジェンダに掲げられた目標に向かって前進できないことも理解している。
潘事務総長は10月12日に開幕した世界食料安全保障委員会(CFS)第41回セッションに宛てたメッセージの中で、「私たちは、ゼロ・ハンガー・ジェネレーション(飢餓人口ゼロを体現する世代)になるという目標に向かって努力を傾注していくなかで、青年たちが活発に参画できるよう彼らをエンパワーしていかなければなりません。」と語った。
|アルゼンチン|学校菜園で子どもの健康を守る試み
【ブエノスアイレスIPS=ファビーナ・フライシネット】
アルゼンチンは肥沃な土地に恵まれているにもかかわらず、経済破綻の影響で数百万世帯が十分な食料を確保できないでいる。こうした中、ウエルタ・ニーニョプロジェクトでは、低所得者が大半を占める地方の小学校を対象に、敷地内に有機農作物の菜園を作り、子どもたちに飢えと闘うための食物栽培の方法を教えながら健康的な食習慣を指導する活動を展開している。
2015年以後の開発問題―飢餓に苦しむ者の声に耳は傾けられるだろうか?
【ローマIPS=ジェネビーブ・L・マシュー】
ミレニアム開発目標(MDGs)は2015年に期限が切れ、持続的可能な開発目標(SDGs)がその後を受け継ぐ。SDGsは、貧困と飢餓撲滅への国際社会の関与を強化するものだ。
SDGs策定にあたっては、全ての人に食料安全保障及び栄養を確保することが極めて重要である。「全ての人を食べさせるのに十分な食料を生産している世界において、飢餓に苦しむ者がいる現状については弁解の余地はありません。」と「オックスファム・インターナショナル」のデイビッド・テイラー政策アドバイザー(経済的公正)はIPSの取材に対して語った。
バルカン諸国で芽吹いた紛争の「種」
【ベオグラードIPS=ベスナ・ペリッチ・ジモニッチ】
この夏温暖な天候に恵まれたバルカン半島では、豊富に収穫された多くの食べ物が食卓に並んだ。ただし人々は、「トマトの味が悪くなった」「メロンが水っぽい」「キャベツが硬くて切れない」「玉ねぎを切っても涙が出ない」等、口々に不満を漏らしている。
こうした不満の声は、セルビアの人気討論番組や交流サイトでも溢れており、セルビアの農民は、種子輸入業者の圧力に屈して、これまで人々に親しまれていた地場の作物を育てることを放棄していると非難されている。