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INPS JAPAN   IDN-InDepthNews - UN INSIDER

│グアテマラ│戦争の被害者、忘却の被害者

Most of the victims of Guatemala's civil war were indigenous people. Credit: Danilo Valladares/IPSグアテマラシティIPS=ダニーロ・ヴァジャダレス

「1982年、彼らは私のお母さんと15人の人間を殺し、私たちの家を焼き払いました。私たちはいま支援を得ようとしていますが、まだ何も手にしていません。」こう語るのは、グアテマラの先住民族イクシル族のハシント・エスコバルさんである。

「当時彼らは、村人たちを中に押し込めたまま家屋を焼き払っていきました。幸い、私は我が家が襲撃された時に不在だったので、隠れることができたのです。」とエスコバルさんは、内戦の被害がとりわけ大きかった北西部のキチェ県で取材に応じて語った。

彼は、グアテマラ内戦(1960~96)の犠牲者の一人である。左翼ゲリラと政府軍との戦いの中で、主に先住民のマヤインディアンを中心に約25万人が死亡あるいは行方不明になった。国連の支援した「歴史解明委員会(Historical Clarification Commission)」の調査によると、死亡の93%は政府軍側に原因があるという。

 
1996年12月29日、グアテマラ政府とグアテマラ民族革命連合との間で和平協定が結ばれた。このとき軍側の代表であったのが、1月にグアテマラの大統領に就任したオットー・ペレス・モリーナであった。その際、内戦の被害者に対する補償や先住民のアイデンティティや権利に関する協定が結ばれた。

また2003年には、政府による被害者補償の枠組みが創設された。経済的損害に対して土地や住居などで補償をしたり、心理的な支援などを行うことがそのおもな内容である。

しかし、政府内の腐敗や縁故主義などにより、補償制度を自らの利益のために悪用する政治家が後を絶たない状況が続いており、未だに多くの被害者が補償されるのを待ちわびている。

チマルテナンゴ州の被害者マニュエル・テイさんは、「ここでは2011年に補償プログラムの一環として576軒の家が建てられたが、建築はまだ道半ばです。私たちは家を完成させるために、自分たちで建材を買ったり、職人を雇わなくてはなりませんでした。」と語った。そうした政府支給の家屋の中には建ってわずか3ヶ月でもう床が割れ始めたところもあるという。

しかしテイさんは、賠償金を得るためには政府やNGOによる煩雑な手続きを経なければならなかった。そこでカクチケル・マヤ語で「種子(Q'anil)」という名前の会を立ち上げた。

これまでにテイさんと内戦を生き残った兄弟が獲得した賠償は、36平方メートルの家屋と、3600ドルの現金である。


それでも、賠償プログラムに従事していた元役人達が会計の不正処理をしていたという報道を耳にしていなかったら、犠牲者たちはこんなにも憤りを覚えることはなかっただろう。

紛争遺族会(Associations of survivors of the conflict)を含むNGO19団体が2010年から11年にかけて行った社会監査では、こうした政府による補償事業の問題点として、プロセスの不透明性、恣意的な判断、差別があったことなどを挙げている。

2011年、32の先住民族団体が、政府は内戦被害者に適切な補償を行っていないとして、米州人権委員会IACHR)に提訴した。

また犠牲者に対する精神面、社会面における支援や、社会復帰を支援する努力が欠けている問題点も指摘されている。

戦争被害者を支援している「犯罪科学分析・応用科学センター(CAFCA」のセルジオ・カストロさんは、「これまでの補償は経済的・物質的な支援に偏っており、しかも補償がなされた被害者は全体の2割程度にとどまっています。」「一方、被害者達が内戦当時奪われた土地の返却や、破壊された農地への投資、強姦された女性に対するケアといった対策は、政府の補償プログラムに明記されているにも関わらず、実施されていません。」と政府の対応を批判した。

またカストロさんは、「犠牲者と加害者が同じコミュニティーで暮らしている現実を考えれば、内戦で崩壊した社会構造を再建し彼らが再び平和裏に共生していけるようにするためには、犠牲者に対する精神面の支援が大変重要になります。」と語った。

ラテンアメリカでは、チリやアルゼンチンのように、かつて軍事独裁政治を経験した国々では、犠牲者に対して経済的、社会的補償制度を実施した事例がある。またその他の先例では、ドイツ政府がナチスによるホロコーストの犠牲者に対して行った事例がある。

連れ合いを奪われたグアテマラ女性の会(CONAVIGUAのフェリシア・マカリオさんは、「グアテマラ政府の場合、内戦の被害者に対する支援を真剣に行おうとする意志が欠如しているのです。」と語った。

内戦時代国軍の特殊部隊で戦い和平合意の軍側の代表をつとめたペレス・モリーナが大統領に就任したという政治状況は、内戦の被害者にとって必ずしも明るい兆しとは言えない。

「現大統領が内戦終結を合意した当時の軍側の当事者であったということは、ますます彼は犠牲者へ約束された補償を実行に移す道義的な責任があるはずです。しかし実際のところ、モリーナ大統領がはたして補償プログラム予算をどのように取扱いかを見極めるまでは、なんともいえません。」

被害者補償に割り当てられた2012年の予算は1050万ドル。しかし、社会団体は、約4000万ドルは必要だと議会に訴えかけている。

活動家たちは、内戦で家族や家屋、田畑を失った人々にとって援助は極めて大事という。「とりわけ、精神的、社会的支援は重要です。」とマカリオさんは語った。

「犠牲者への補償は、内戦中に悲惨な暴力を経験してきた人が、その経験を克服していく上で大変重要な役割を果たすことができます。内戦中、グアテマラでは何千人もの女性が国軍による暴行に晒されてきましたが、政府は未だに彼女達に対する支援の手を差し伸べていないのです。(原文へ

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩