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売り子の人権を無視するビール会社

 

【クアラルンプールIPS=チェアン・ボファ

ここクアラルンプールで週末に開催された「性的健康に関する地域会議」のパネルディスカッションや討論は、チャナやソフィアの日常とはあまりにかけ離れた世界だった。騒々しい音楽、お客の騒がしい声、望みもしない客からの誘い。2人がビールの売り子として働くのは、カンボジアにあるこうしたレストランだ。売り子たちは、ぴったりとした服を着て、お客たちにビールを売り込もうとする。しかし、多くの売り子が歩合制で給料をもらっているため、生計を維持するのは容易でない。11月17日から20日までの日程で開かれた「性と生殖・健康に関する第3回アジア太平洋会議」(Third Asia-Pacific Conference on Reproductive and Sexual Health)に参加した活動家たちによれば、彼女たちはまた危険な環境に置かれてもいる。


 
チャナは、性的サービスと引き換えに男性客からお金を受け取ることがたびたびあるという。なぜなら「月にたった55米ドルという貧しい収入を補う必要があるからです」。2人の子供を持つチャナは、カンボジアで行なわれた会議の性と生殖・健康(Reproductive and Sexual Health)に関する分科会でこう語った。「この仕事をやっているとプライドがズタズタになる。たくさんのお客が私にひどいことをするから」。「同僚も、私も、こういう暴行に耐えなくちゃならない。もし断れば、家族を食べさせていくためのお金を得ることはできません。母親はとても年老いているし、まだ小さい弟の面倒も見なくてはなりません」。彼女の声が響き渡る。発言の間、エアコンの効いた室内を沈黙が支配していた。
このようにして売春を行なうことは「間接性労働」と呼ばれている。というのも、これが女性の労働環境と経済的な圧力に起因しているからだ。こうした商売上の性的行為が起こるのがカラオケ・バーのような場所であったり、売春宿のような通常の場所以外であったりすることから、「間接的」とみなされているのである。さらに、このような行為は、通常15歳から39歳のビールの売り子たちを性行為を通じて感染する病気やエイズの危険にさらすことになる。なにしろカンボジアでは、15歳から49歳の女性のHIV感染率がすでに2.6%にも達しているのである。ビール売り子歴9年で月収58ドルのソフィアは、ビール売り子は基本的に自分で何でもやっていかなくてはならないという。乱暴な言葉を投げかけられたり望まないのに触られたりするなどの嫌がらせや不愉快な行為がバーやレストランで起こったとしても、売り子たちは店長に助けを求めることができない。ソフィアの説明はこうだ。「店長は、お客を失いたくないから売り子たちを助けたりはしないの。お客の行動とか嫌がらせに文句を言ったりしたら、ビールなんか買ってくれないもの」。ほとんどが国際的に有名なビール会社の製品を売るその売り子の女性たちは、推定で約4,000人いる。これらの女性たちが、推薦するブランドのビールを売ったり注いだりしている光景は、カンボジアでよく見られる光景のひとつだ。リプロダクティブ・ヘルスの問題に取り組む活動家たちによれば、たくさんの女性がHIV/AIDSに感染しているという話も最近ますますよく聞くようになっているという。1998年に国が行った調査では、毎年、約20%のビール売り子がHIV陽性反応を示したという。シエム・リアプ県のビール売り子の女性の調査を行なっているスリラクシュミ・ガナパティ氏(シンガポール国立大学)によれば、女性のビールの売り子は夜間も働き、月27日労働だという。シエム・リアプ県は、近くにアンコール・ワットがあることから、人気の観光地となっている。しかし、彼女らがビール会社のために売上げる金額が月2000ドルという現実からすると、彼女たちの稼ぎは少ないものだ。ガナパティ氏はいう。「ビール売りの女性たちは健康上の危険にもさらされる。仕事のためにアルコールを過剰摂取しなくてはならないからだ。その量は一晩約1.23リットルほどにもなる」。ガナパティ氏は続けて、「家族を経済的に養っていくために、しばしばお客から無理やり飲まされたあげく、仕事後に売春を強要されてそれを受け入れてしまうこともある。しかしこうした場合、コンドームの使用率は下がるし、エイズその他の健康被害にあう危険性は高まる」と述べた。HIVに感染した売り子は長く生きることが難しいかもしれない。というのも、彼女たちの雇い主、すなわちビール会社が、彼女たちの健康に気を配ったり、健康保険に入れたりすることがないからだ。また、彼女たちはエイズ薬(抗レトロ薬)を簡単に手に入れることもできない。シエム・リアプ県において同じ調査を行なっている、ゲルフ大学(カナダ)のイアン・リュベック氏は、「これらビール会社は、売り子の健康と給料に関する責任を回避しようとしている」と述べた。「カンボジアの労働法には、パートタイム労働の給与支払いに関する条項が存在しない。それをいいことに、先進国のビール会社は売り子たちを従業員ではなく製品の広告塔ぐらいにしか考えていない。だから、会社側は彼女たちを健康保険に入れようとしないのだ」。リュベック氏は、海外のビール会社がもっと責任を持つようにプレッシャーをかけていくべきだと訴える。すでに、ハイネケン社のような会社がこうした批判に反応をし、より露出の少ない衣装を売り子に着せたりするなどの処置を取っている。また、同社は売り子の女性を夜は家に帰すように手配したともいう。「ケア・インターナショナル(CARE International)」のような市民団体は、より多くの会社がこの動きに追随し、業界自体が、売り子と販売店の行動規則を作成するよう望んでいる。また、報道によれば、4つのビール会社が、責任あるビールの飲み方と攻撃的な客への対処の仕方を学ぶ訓練プログラムを始めることによって、労働環境を向上させる試みを始めたという。リュベック氏は「私たちは、ビール売りの女性たちの人権を尊重しないビール会社に対して、労働法と商法を遵守するよう要求することによって何かを行なわねばならない」と語る。また、ビールの売り子や活動家の中には、「ビールの売り子」や「間接的性労働」という用語の使用に疑問を呈する者も増えてきている。というのも、これらの言葉には、性労働を貶める意味合いがいまだに含まれているからだ。(原文へ翻訳=山口 響/IPS Japan浅霧勝浩関連記事: 
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