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INPS JAPAN   IDN-InDepthNews - UN INSIDER

アジア諸国は静かに北朝鮮をなだめる方策を望んでいる

 

【シンガポールIDN=カリンガ・セネヴィラトネ】

 

北朝鮮の最高指導者である金正恩第一書記によるアジア・太平洋地域の米軍基地に対するミサイル攻撃の脅しについて、英米各紙が軍事衝突の可能性を盛んに報じる中、アジア各紙の時事解説には、この地域のいかなる国も戦争を望んでおらず、なんとか北朝鮮をなだめて事態の鎮静化を模索すべきとする論調の報道が多く見られた。

 

3月下旬、金正恩第一書記は、北朝鮮が攻撃を受けた場合、米国本土、ハワイ、グアムを攻撃する軍事計画を承認した。また与党朝鮮労働党の機関紙「労働新聞」は、攻撃対象となる可能性がある在日米軍基地として、神奈川県横須賀市、青森県三沢市、沖縄の基地をリストに掲載した。

 

これに対して、米国政府は、弾道ミサイルを追尾できる高性能Xバンドレーダーの海上配備型(SBX―1)と、高性能レーダーと迎撃ミサイルを装備したイージス艦2隻を、西太平洋と朝鮮半島近海(韓国南西沖)に派遣した。また米国政府は、数週間以内にグアムに最新式のミサイル迎撃システムを配備する決定をした。

 

今回の朝鮮半島を巡る舌戦と緊張の高まりは、改めてこの地域の調停者として中国が果たす重要な役割を浮き彫りにする結果となった。中国は、これまで長らくの間、北朝鮮の親密な同盟国とみられてきた。しかし、近年韓国は、中国との関係を、朝鮮半島の危機を共に解決に導く政治的パートナーにも発展しうる、地域の重要な貿易相手国と見做す立場を明らかにしてきている。

 

朴槿恵大統領は、就任まもなく、選挙対策委員長を務めた最側近の金武星元議員を特使とするハイレベルの政府代表団を北京に派遣した。朴大統領は、5月上旬に初の外遊先として米国を訪問予定だが、ここにきて韓国国内から、もし現在の北朝鮮との緊張関係の早期緩和につながるのであれば中国を先に訪問すべきとの声も上がっている。

 

韓国海洋戦略研究所主任研究員である尹碩俊(Sukjoon Yoon)韓国海軍退役大佐は、中国日報に寄稿した論文の中で、「朴大統領は、初外遊で訪米することで『米韓関係を強調する伝統的思考を機械的に踏襲する』のではなく、まずは中国を訪問すべき。」であり、「『朝鮮半島の信頼醸成プロセス』に対する韓国大統領のコミットメントが中韓関係の議題を設定することになるだろう。」と論じている。

 

北朝鮮に対して頑な姿勢で臨んだ前任者の李明博氏と異なり、朴氏はよりリベラルだと見られている。「そうしたことから中国は朴大統領の新たなアプローチに応じる構えを見せている。」「(北朝鮮が)この数か月に亘って展開した核の瀬戸際外交を受けて、人民解放軍高官を含む複数の中国政府高官が、韓国政府高官との会談の可能性を示唆している。」と尹氏は記している。

 

「北朝鮮に対して影響力を行使できるのは中国のみであり、このこと自体が、朴大統領が訪米前に訪中すべき十分な理由である。」と尹氏は主張している。

 

「中国の外交政策は新たな局面に差し掛かっている。」「王毅外相も、中国は自国の玄関口でトラブルを起こすことを決して許さないとの立場を明確にした。」と、沈丁立(SHEN Dingli)復旦大学国際問題研究院常務副院長は述べている。

 

自分勝手な利益追求ではない

 

王毅外相のコメントは、北朝鮮の若い指導者による瀬戸際外交について中国が不満を持っている兆候として、国際メディアに大きく取り上げられたが、沈副委員長は異なった見方をしている。「近年、一部の国々が中国周辺で騒動を引き起こしている。(中国から遠くに位置する)域外の国が地域の同盟国と協力して軍事力を誇示している。こうした動きが、中国周辺地域に予断を許さない状況を作り上げているのだ。」と沈副委員長は、中国日報に寄せた論評の中で述べている。

 

「中国は自分勝手な利益を追求しない。しかしだからといって他国が自国の玄関口で問題を引き起こすのを傍観してはいない。周辺地域を平和的な環境に保つよう要求する中国の姿勢は、公海及びその領空の使用は平和利用に限定されいかなる国も問題を引き起こしてはならない、とする国際法に依っている。」「中国には外交政策の転換が求められている。」と語った。

 

今回の朝鮮半島危機は、他から切り離して考えるものではなく、バラク・オバマ政権によるアジア・太平洋地域への「ピボット(軸足)」政策あるいは「リバランス(再均衡)」政策の文脈の中で捉えられている。中国を含むアジア・太平洋地域の多くの国々が、この政策の発表以来、地域に緊張が高まっていると指摘している。地域における米国の伝統的な同盟諸国による敵対的な動向や、中国の領土主張に対する日本・フィリピンの反発と緊張関係の高まりは、紛争でなく平和を望むアジア・太平洋地域の多くの国々から肯定的に見られていない。

 

シンガポールのザ・ストレーツ・タイムズ紙は、論説文の中で、米国がステルス戦略爆撃機B2を(グアムから)朝鮮半島に飛来させ(韓国に設置した模擬標的を使って)爆撃訓練を実施したことについて批判する一方で、大陸間弾道弾の発射実験を中止(5月に延期)する決断をしたことについては、歓迎する立場を表明した。

 

読売新聞は、「北朝鮮は脅迫的な言動を繰り返し、世界の平和と安全保障を脅かす核武装を進めており、許容できない。」と指摘したうえで、「日本と米国、韓国、中国がしっかり連携して北朝鮮に対処していくことが重要」と述べている。また同紙は、金正恩第一書記が中国の指導層との間に、父や祖父がかつて持っていたような信頼関係を築けていそうにない点について懸念を述べている。

 

アジア重視政策

 

一方、インドネシアのカッピー・ハキム元空軍参謀長は、ジャカルタポスト紙に寄せた論説の中で、米国によるいわゆるアジア重視(「軸足」移転)政策の動機及びそのタイミングについて、疑問を呈している。ハキム参謀長は、米国がアジア・太平洋地域の同盟国に武器を供給し、オーストラリアに新たに海兵隊を駐留させることで、アジア・太平洋地域に紛争を呼び起こそうとしていると捉えているようである。

 

「最も驚いたのは、米海兵隊が米軍機とともに災害対策の名目で、オーストラリアのダーウィンに駐留するというニュースだ(4月3日に第一陣駐留部隊が到着:IPSJ)。これは前代未聞の出来事で馬鹿げている。」「人々は、どうして今なのかと訝っている。南シナ海は既に数十年に亘って潜在的な紛争の原因でありつづけてきたが、米国はどうして今行動を起こす決断をしたのだろうか?それは中国の経済成長に対する米国の恐れが背景にあるのだろうか?」とハキム元参謀長は記している。

 

このように、地域の多くの観測筋は、北朝鮮による現在の脅しについて、「朝鮮半島危機」という観点よりも、むしろ中国がいかに平和裏かつ協力的な方法で(北朝鮮に対する)自らの影響力を行使するかを着目している傾向がある。

 

中国が北朝鮮指導部をなだめる意向を示している一方で、アジア・太平洋地域諸国は、北朝鮮との直接対話を呼びかけた朴大統領の提案を歓迎している。コリアンタイムズ紙はこの点について論説の中で、「…明るい面を挙げれば、朴大統領からの対談の申し出は、金正恩第一書記が体面を失うことなく、従来の戦争の脅しから一歩引く決断をする助け舟となるかもしれない。一方で、朴大統領も、南北対談にむけた緊張緩和が実現すれば、称賛されることになるだろう。」と述べている。(原文へ

 

翻訳=IPS Japan

 

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