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INPS JAPAN   IDN-InDepthNews - UN INSIDER

|報告書|世界経済に悪影響与える児童栄養不良

【ワシントンIPS=ジム・ローブ】

 

国際援助団体「セーブ・ザ・チルドレン」(STCが5月28日に発表した最新報告書によると、児童栄養失調は健康上の被害のみならず、患者の基本的な技能を身につける能力も奪うため、世界経済に年間数十億ドルもの被害をもたらしているという。

 

この追跡調査報告書(23頁)は、慢性的に栄養失調を経験した子どもたち(今日の世界では4人に1人の新生児がこのケースにあたる)の基本的な学習能力(読み書き・計算)は、そうでない子どもたちと比べて著しく劣っており、成長後の所得レベルも20%低いものであったと指摘、このことから、栄養失調に伴う認知問題がこうした子どもたちが暮らす国の経済成長にとっても大きな足枷となっていると結論づけている。

 

この報告書「知性を奪う食料不足:栄養不足解決で子どもの潜在能力を引き出し、繁栄をもたらす」は、この分析結果から、現在の児童が成人する2030年ごろまでには、子どもの栄養失調問題により世界経済が被る損失規模は年間1250億ドルに達するだろうと推計している。

 

またこの報告書は、6月17、18の両日に英国北アイルランドで開催される主要8カ国(G8)首脳会議に出席する各国首脳に対して、子どもの栄養失調問題について、援助額の大幅拡充を含むより積極的な取り組みをとるよう、強く求めている。

 

「幼児期における栄養失調の問題は、途上国で今日危機的な状況にある読み書き・計算能力の問題の主要原因であり、今後の幼児死亡率を引き下げる取り組みにとっても大きな障害なのです。」とSTCのキャロライン・マイルズ事務局長は語った。

 

「母子にとって極めて重要な最初の1000日間(妊娠から子どもが2歳の誕生日を迎えるまでの期間)に母子の栄養状態を改善できれば、子どもの成長・学習・貧困からの脱出のための能力を大きく高めることが可能になります。G8首脳はこの重要な『最初の1000日期間』に栄養失調を改善する具体的な対策をとることを公約し、子どもたちの未来に投資すべきです。」とマイルズ事務局長は付け加えた。

 

国連がまとめた2012年の統計によると、南アジアでは5歳以下の子供の半分近く、また、サブサハラアフリカでは同年代の子どもの39%が栄養不足による発育不良の状態に陥っている。中でも最も深刻な状況に直面しているのインド(約6000万人)とナイジェリア(1100万人)である。

 

またこの報告書は、2015年に期限を迎えるミレニアム開発目標(MDGsについて、国際社会が過去20年間に「幼児死亡率の削減」と「初等教育での就学率向上」の分野で、目覚ましい成果を上げてきたが、ここにきて、栄養失調の問題によりその成果も脅かされていると指摘している。

 

STCによると、1990年から2011年の間に、5歳以下で死亡した子どもの数は1200万人から690万人に減少したが、依然として毎年230万人の子どもたちが栄養失調を原因に命を落としている、という。

 

また、1999年から2011年までの間に、初等教育に通う子どもの数は32%(4000万人以上)増加したが、一方で数100万人の子どもたちが幼児期の慢性的な栄養不足が原因で認知障害を患っており、最も初歩的な学習過程さえついていけない状況に直面している。

 

この調査は、栄養失調が子どもたちの教育成果にどのような影響を及ぼすかを広範囲の地域を対象に把握することを試みた初の試みで、4か国(エチオピア、インド、ペルー、ベトナム)3000人の子どもを対象に人生の様々なポイントで教育上の能力や自信、願望についてのインタビューやテストを繰り返し、20年間にわたる追跡調査の結果を基にまとめたものである。

 

その結果、母親のお腹の中で生命を得てから2歳の誕生日を迎えるまでの1000日の間に栄養失調を経験した子どもたちは、健康的に栄養を摂取した子どもたちと比較して、学習能力の点で厳しいハンディキャップを負っていることが分かった。

 

具体的には、栄養不良状態にある児童は、そうでない児童に比べて、算数の能力が7%劣っていた。また、8才までに簡単な文章を読めるようになる可能性が19%低く、簡単な文章を書けるようになる可能性が12%低い。また、学校において「落第」する可能性が13%高いという結果がでた。

 

また報告書の基礎となった調査結果によると、栄養不良状態にある子どもたちは、そうでない子どもたちと比べて、自身の学力や自身をとりまく状況を改善する能力について自信が持てない傾向にある。

 

また栄養失調の子どもはそうでない子どもと比べて成長してからの所得レベルが20%低く、しかもその所得ギャップはさらに大きい可能性もあるという。

 

報告書はまた、この所得格差は、とりわけ体力を必要とする農業や肉体労働の分野に、幼少期に栄養不良を経験した大人が比較的少ないことからも説明ができると指摘している。

 

「この報告書は、栄養不良は、子どもの身体上の発達のみならず、学習能力や貧困から抜け出すための生きていく力にさえ深刻な悪影響を及ぼすという様々な証拠を改めて裏付けるものとなりました。」とルーシー・サリヴァン1000デイズ」代表は語った。同団体は、ヒラリー・クリントン前国務長官とマイケル・マーティン元外務大臣らが2010年9月に創設した、妊娠期から子どもが2歳になるまでの1000日における母子の栄養状態改善に投資することを呼びかけている団体である。

 

「栄養失調が世界経済にもたらすコストは、年間1250億ドルという途方もないものです。しかしこの報告書は、栄養失調の問題も、回避と解決が可能だということを物語っています。」とサリヴァン氏は付け加えた。

 

世界銀行は2006年の研究報告の中で、母子の栄養向上への取り組みが最も経済効率に優れた開発分野の一つであると結論づけている。しかしそれにも関らず、援助支援国は、過去3年間で栄養不良の問題に対して全支援のうち平均0.37%しか振り向けていない。その理由としては、農業関連官庁と保健関連官庁の間で役割分担がなされていないことが指摘されている。

 

6月8日には、英国・ブラジル政府が共催で、「成長のための栄養」という会議をG8サミットにおいて初めて開くことになっている。

 

また報告書は、援助国に対して、栄養支援プログラムへの支援拠出額を現在の2倍以上にあたる10億ドルに増やすよう、そして各国政府に対して、向こう10年間で栄養失調を削減するための計画と目標を策定するよう求めている。(原文

 

翻訳=IPS Japan