www.facebook.com
www.twitter.com
www.linkedin.com
www.blogger.com
www.myspace.com
RSS Feeds
 
INPS JAPAN   IDN-InDepthNews - UN INSIDER

|ドイツ|核兵器は持たず共有するだけ

【ベルリンIPS=ヴォルフガング・ケーラー】

 

ほとんどのドイツ国民は核廃絶を支持しているが、ドイツ政府は核兵器共有政策をまだ放棄しないかもしれない。

「政府は核兵器共有問題を巡って内部で意見が分かれている。」と、大西洋安全保障ベルリン情報センター(BITS)所長のオトフリート・ナサウアー氏はIPSに対して語った。BITSは、国際問題及び安全保障政策に関する問題について研究活動を行っている。


ナサウアー氏は、公開された限られた情報を基に、冷戦期にドイツに配備された数千発に及ぶ核爆弾の内、10発から20発の核爆弾が未だに国内に配備されていると見積もっている。


ドイツは1975年に批准した
核不拡散条約(NPTの規定により独自の核兵器を所有していないが、国内に配備された米国の核爆弾を共有している。この核共有政策の起源は当時の西ドイツに最初の核爆弾を配備した1950年代末に遡る。そしてドイツ政府は自らが加盟している北大西洋条約機構(NATO)の核抑止政策の一環として、核共有政策を今日も維持している。

 
アンゲラ・メルケル首相率いる与党連立政権のパートナーであるドイツ社会民主党(SPD)は、4月5日に米国のバラク・オバマ大統領がプラハでの演説の中で核廃絶に向けたビジョンを表明したことを受けて、ドイツ国内に残存する全ての核兵器の撤去を求めている。


オバマ氏は、世界中に拡散している数千発に上る核兵器を「冷戦時代の最も危険な遺産」と呼び、「世界規模の核実験禁止を実現するために、私の政権は、直ちにかつ強力に、
包括的核実験禁止条約(CTBTの批准を目指します。50年以上の協議を経た今、核実験はいよいよ禁止される時だ。」と語った。

「私たちは武器庫から核兵器を完全に消滅させなければならなくなる、そうした時代のために闘っているのです。」とSPDのフランク・ウォルター・シュタインマイヤー外相は7月14日の演説の中で語った。同氏は現連立政権の副首相であるとともに、9月に予定されている連邦選挙におけるSPD選出の首相候補でもある。


ドイツ国会においては、ドイツ自由民主党(FDP:ドイツ語表記の頭文字)、緑の党、ドイツ左翼党など、全ての野党がドイツ領土からの核兵器撤去を支持している。5月15日、最大野党FDPのギド・ヴェスターヴェレ党首は、「核軍縮が復活する時が来た」と強調した。


「ドイツから戦略核兵器を撤去することは、今日の新たな(軍縮に向けた)政治潮流に対する適切な反応である。」とヴェスターヴェレ氏は付け加えた。


メルケル首相を党首とするドイツの最大政党で保守のキリスト教民主同盟(CDU’s)とその姉妹政党キリスト教社会同盟(CSU)は、SPDと共に連立与党政権を構成しているが、ドイツ政府としては、オバマ大統領による核廃絶を目指す新たな努力を歓迎する立場をとっている。しかしながら、核兵器共有政策については、一方的に放棄するつもりはない。


メルケル首相は先の3月26日の国会における議論の中で、「私たちは政策目標とそこに到達するまでの手段を混同しないよう注意すべきです。私は全ての大量破壊兵器の廃絶を目指す政策を引き続き順守していきます。しかしドイツ連邦政府は、核兵器政策という慎重さを要する分野でNATO内におけるドイツ政府の影響力を保持するため、核兵器共有政策を堅持することを政策白書に明記しているのです。」と語った。


ドイツ政府が2006年に安全保障政策とドイツ連邦軍の将来について規定した政策白書を採択した際、シュタインマイヤー氏率いるSPDも核兵器共有政策を順守していくことに同意した。


BITS
のナサウアー所長はCDUSCUの政策は矛盾しているとして次のように語った。「連邦政府は、国際法に違反するとしてドイツ兵による核兵器の使用を禁止する一方で、戦闘機に搭載した米国製核爆弾の使用法については引き続きドイツ兵に対して訓練を継続している。」


「米国の大統領とドイツ首相の間に、私たちが知らないような秘密協定でもない限り、核兵器共有政策を放棄することがどうしてNATO内におけるドイツの地位低下につながるのか理解できない。」とナサウアー所長はIPSに対して語った。なぜならカナダやギリシャは何年も前に核共有政策を放棄したにも関わらず、両国はそれによってNATO軍事同盟内の影響力を失ってはいないからだ。


ベルリンに本拠を置くドイツ外交問題評議会(DGAP)の対米安全保障問題の専門家であるヘニング・リイケ氏は、首相の立場を擁護する。

「オバマ大統領と同様にドイツ連邦政府も段階的な軍縮を推進する立場をとっているのです。従ってNATO戦略の中で核兵器政策の部分のみが真っ先に交渉の課題になる必要はないのです。重要なのは一方のみが不利益を被るようなことがないよう調和のある軍縮政策を段階的に進めていくことなのです。」とリイケ氏は語った。


ナサウアー所長は、「NATOには必要な抑止力を維持できるだけの十分な核爆弾を搭載した潜水艦が配備されている。」と述べ、ドイツの核兵器共有政策が必ずしもNATOの核抑止力維持に貢献していないと主張した。
 
 
しかし核兵器共有政策に対する見解がドイツ政界の中で如何に分かれていようとも、ドイツが核兵器不拡散について一貫して取り組んできたという点については、ナサウアー所長もリイケ氏も見解を同じくしている。


2007年にドイツとノルウェーはNATOの核兵器不拡散政策を強化するイニシャティブを開始した。ドイツ外務省はこの関連でいくつかの提案をNATOに提出している。「ドイツは、今までも米国に核軍縮の協議に応じるよう働きかけてきたのです。」とリイケ氏は語った。
 

 
シュタインマイヤー外相は、今年多くの機会を通じて、例えば2月に政府閣僚、高官、安全保障専門家が参加して開催されたミュンヘン国際安全保障会議の機会等を通じて、核兵器保有国に対して核兵器の武装解除プロセスを促進するよう強く求めてきた。


シュタインマイヤー外相は6月14日に開催されたSPDの特別党大会での演説の中で、「ロシアのドミトリー・メドヴェージェフ大統領とウラジミール・プーチン首相が、ロシアは核兵器の武装解除に向けた国際努力に参加すると自分に確約した。」と述べた。


しかし、世論調査ではアンゲラ・メルケル現首相の率いる保守政党が社会民主党を大幅に支持率で引き離しており、この様子では、兵器共有政策を巡るドイツ政府の公式な立場は、9月に予定されている総選挙を経ても変化することはないだろう。


にもかかわらず、ドイツ軍は、技術的な理由で、おそらく米国の原子爆弾を使用する能力を失うだろう。すなわち、米国の核爆弾を搭載可能なトルネード戦闘機は2020年までに退役・廃棄予定で、その後続機となるユーロファイター戦闘機には核爆弾を搭載する能力がないからである。


翻訳=IPS Japan浅霧勝浩


関連記事:

勢いづくドイツの平和運動