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パキスタン・ソマリアとロシアの共通点とは?

【ベルリンIDN=ラメシュ・ジャウラ】

 

騒乱に満ちたイラク、予測不可能な北朝鮮、危機に見舞われたパキスタン、「破綻国家」ソマリアと、ロシアに共通する部分とはなんだろうか。

リスク分析を専門とするメイプルクロフト社が出した年次報告書「政治的リスクアトラス(Political Risk Atlas)第3版」によると、かつての超大国ロシアは、これら4カ国とともに、「きわめてリスクの高い」国に分類されている。

 
 
ロシアの経済力は確かに向上している。しかし、「動的な政治的リスク」という面から見ると、ロシアは世界でもっともリスクの高い10ヶ国の中に入ってくる。「動的」という言葉の意味は、政府や地方自治体、政治的動機を持つ集団などの行動により急速に変化するようなリスクを示しており、具体的には、紛争やテロ、法の支配、ビジネス環境などの領域に関連している。

今年の報告書
で注目すべきは、新興経済国ロシアが昨年の15位から今年初めてトップ10入りしたことである。一方、パキスタンも昨年の11位から2つランクを上げて9位となった。

「きわめてリスクの高い」国々は、ソマリアを先頭に、コンゴ民主共和国、スーダン、ミャンマー、アフガニスタン、イラク、ジンバブエ、北朝鮮、パキスタン、ロシア、中央アフリカ共和国の計11ヶ国である。

この内のアフリカ3カ国及びパキスタンについての評価をみるとロシアのトップ10入りがいかに深刻な状況であるかを示している。

ソマリアは、北西部の「ソマリランド共和国」と北東部の「プントランド」に分裂しており、まさに「破綻国家」といえる。

コンゴ民主共和国(DRC)
はアフリカで3番目に大きな国土と6700万人の人口を擁する国であるが、ロンドンの政治経済誌「エコノミスト」が「アフリカの世界大戦」と呼んだ紛争の舞台となり、約300万人の犠牲者を出し人道危機に苛まれている。

アフリカ北東部に位置するスーダン(アフリカ・アラブ地域で最大、世界で10番目に大きな国土を擁する)は1989年からオマル・ハサン・アル・バシール大統領が支配している。2008年3月8日、国際刑事裁判所(ICC)がバシール氏に対して戦争犯罪・人道に対する罪で逮捕状を発行したことから、同氏は現職の首脳でICCから起訴された最初の人物となった。

さらにICCは2010年7月12日、ジェノサイドの罪でバシール大統領を追訴した。ICC判事達は、ダルフール地域の3つの少数民族に対して、バシール氏が一連の血みどろの大量虐殺を指示したとして告発している。「バシール氏が少数民族であるフール族、マサリト族、ザガワ族の一部殲滅を意図して行動したと信じるに足るもっともな理由がある。」と判事たちは結論付けた。

中央アフリカ共和国
CAR)はアフリカで最も貧しい10カ国に挙げられる世界最貧国の一つであるが、1960年にフランスから独立して以来、政情不安定な状況が続いている。
 
 CAR
は北をチャド、東をスーダン、南をDCRコンゴ共和国、そして西をカメルーンと国境を接している。CARはこれまでいくつかのクーデターに見舞われ、1970年代には自ら皇帝を名乗ったジャン=ベデル・ボカサの圧政を経験している。

パキスタン
は、アフガニスタンからの国境を越えて同国北西部に侵入を繰り返すタリバンのゲリラ活動に悩まされている。報告書は、「今年のテロリストリスク指標(Terrorist Risk Index)によると、テロ攻撃の回数自体は前年より減っているが、1回あたりの死者数は増えている。」と記している。2009年6月から2010年6月の期間に発生したテロ攻撃における死者数は1回の攻撃あたり1.6名となっている。

またパキスタンは、「政府は国内のウルドゥ語を話す住民と少数民族のパシュトゥーン系住民間で起こっている暴力的な衝突を抑えるのに苦労していることから」政治体制の安定度指標(Regime Stability Index)においては、「きわめてリスクの高い」国に分類されている。両者はカラチにおける政治的主導権を巡って争っており、国内の政治情勢悪化につながっている。

リスク諸指標

政治的リスクアトラス2011」は、41のリスク指標によって196ヶ国を評価しているが、「動的な政治リスク」の分野だけではなく、資源確保(Resource Security)、人権、気候変動、インフラ整備の状況、教育、貧困など、「生起しつつあるリスク分野」や、長期的な政治体制の安定に影響する「構造的な政治リスク」についても、さまざまなリスクの側面を明らかにしている。

同年次報告書の著者たちは、「ロシアがリスクプロフィールで順位を上げた背景には、ロシア各地への攻撃を意図する北コーカサス地方でのイスラム分離主義者の活動が活発化している現状がある。ロシアは、2010年の間、3月のモスクワ地下鉄での爆弾テロ(40人死亡)など、いくつもの痛烈なテロ攻撃に晒された。」と記している。

「こうしたテロ事件が、テロリスク指標と紛争・政治的暴力指標におけるロシアのリスクプロフィールを押し上げることとなった。さらにロシアのリスク評価が高まった背景には、ビジネス環境、企業統治、また政府全体に広がる腐敗について『極めて高いリスク』と評価された事情がある。」

リスク分析担当者によると、ロシアで事業展開する企業は、司法の政府からの独立の欠如など非効率的な法制度と向き合うリスクを負わざるを得ない。「これに関する最近の事例としては、石油企業『ユコス』のミハイル・ホドルコフスキー氏が有罪にされた事件が挙げられる。この事件は、政治的な見せしめ裁判だと一般に評されている。ロシアは、法の支配指標において『高いリスク』と評価されており、企業は高まる契約不履行のリスクについて監視するべきである。」

メイプルクロフト社のアソシエイトディレクターであるアンソニー・スキナー氏は、「政治リスクの動的な側面を理解することは、絶え間ない事業展開を確保する上で極めて重要なことである。政権の安定性や政治的暴力といった短期的指標は、経営判断をするうえで重要な判断材料となる。従って動的リスク分析に際しては、ブリックスBRICs:ブラジル・ロシア・インド・中国)やネクストイレブン(N11)といった市場への投資や事業拡大を志向するビジネスに対する影響を考慮しなければならない。」と説明した。

N11
とは、ゴールドマン・サックス証券が、2005年12月の経済予測報告書(2003年のBRICs報告書のフォローアップとして作成)の中で、BRICsに次ぐ急成長が期待されるとした11の新興経済発展国家群で、具体的にはイラン、インドネシア、エジプト、韓国、トルコ、ナイジェリア、パキスタン、バングラデシュ、フィリピン、ベトナム、メキシコを指す。

ゴールドマンサックス証券はその際、マクロ経済の安定性、政治的成熟、貿易の開放度合い、投資政策、教育の質を評価基準とした。

世界銀行によると、2011年における主な新興国への直接投資額は17%増加し、その半分をBRICS諸国(2010年に南アフリカ共和国が加盟)からの投資が占める見通しである。「しかし、投資家たちは引き続き、(投資先の国々における)法の支配の欠如、腐敗の蔓延、紛争がビジネスや社会環境の発展を妨げるリスクと向き合っていかなければならない。」とリスク分析担当者は言う。このことは特にBRICsが大幅に投資しているスーダン、イエメン(分類ランク「きわめてリスクの高い」)といった資源豊かな国々にあてはまる。

長期的な観点から見れば、BRICs諸国の「構造的」リスクは、2011年を通じて高まる傾向にある。BRICs諸国の最新版によるリスクランキングは、中国が25位、インドが32位、ロシアが51位、ブラジルが97位となっており、いずれの国も、昨年度版よりリスクが高まっている。

「構造的な政治リスクについては、いくら強調してもしすぎることはない。」とメイプルクロフト社CEO のアリソン・ウォーハースト教授は言う。「企業にとって進出先の教育レベルは、現地採用する職員の資質やスキルの決定要素であり重要な指標である。資源確保に関するリスク状況は進出企業にとって必要な原材料確保の成否を左右する。こうした要素は全て、長期的には進出企業の安定性と収益性に大きな影響を及ぼすことから、テロリズムやクーデターといった脅威と同じくらい重要な指標である。また構造的な政治リスクは動的政治リスクの主な指標ともなっており、モニタリングを必要とする。」

例えば、中国を例に挙げると、いくつかのリスク指標(市民権と政治的権利、司法の独立、民主的統治、労働者の権利、治安当局による人権侵害)で「きわめてリスクの高い」国に分類されている。

民主主義、自由、人権を抑圧する政府や機関をいかなる形でも支援しているとみなされた企業は、信用に対するダメージを被りかねず、結局は最終収益に影響を及ぼすことになる。

ウォーハースト教授は、「中国は経済の近代化に成功し世界経済に強い立場を構築したことから、特定の構造的なリスク指標(資源確保、インフラストラクチャー、経済の多角化)で『中リスク』に分類されている。」と付加えた。(原文へ

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩

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