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INPS JAPAN   IDN-InDepthNews - UN INSIDER

|軍縮|英国核防衛システムの不透明な行方

 

【ロンドンIPS=サンジェイ・シュリ】

 

反核ロビイスト達にとっての勝利と呼ぶには時期尚早だが、先週英国政府が下したトライデントシステムの更新延期の決断は、少なくとも英国に新型核兵器を望む人々の勝利を否定する結果となった。

政府は当初、
トライデントシステムの更新に関する決定を国会休会中の9月に予定していたが、数名の議員より改めて国会で審議するよう要求の声が上がっていた。ゴードン・ブラウン首相は、この決定時期を、来年5月の核不拡散条約NPT)運用検討会議開催後まで延期することとした。

 
「この決定は、世界的に多国間で核軍縮に関する決定をしていくことを支持しているブラウン首相の意図に沿ったものです。」と核兵器廃絶運動(CND)ケイト・ハドソン議長はIPSに語った。


これに伴い、トライデントシステム更新の件も、来年春に作業開始予定の「戦略防衛見直し」(Strategic Defence Review)に含まれる予定である。


トライデントとは、4隻の
英国ヴァンガード級原子力潜水艦に搭載した58基の潜水艦発射核弾道ミサイルで構成される防衛システムで、少なくとも常時1隻が任務についている。このシステムは、それぞれが核ミサイルを搭載した14隻からなる米海軍原子力潜水艦艦隊の縮小版ともいうべき存在である。


トライデントシステムは1994年に導入された時点で既に時代遅れと見られていた。それはこのシステムが対象としていたソ連の脅威が、導入時点で既に弱まっていたからである。まして、今日の国際状況において、この核防衛システムを更新する理由付けは当時と比べても遥かに脆弱なものとなっている。

「私たちは、英国に核兵器による防衛システムは必要ないと確信しています。最近行われた世論調査の結果も、英国政府による同システムの廃棄を支持しており大変嬉しく思っています。また、退役した将軍や陸軍元帥達も、トライデントシステムが軍事的に役に立たないものであり廃棄されるべきと発言してきています。」とハドソン氏は語った。


世論調査会社のICMとガーディアン紙が共同でおこなった7月14日の調査によると、イギリス国民の54%が政府に核兵器を放棄することを望んでおり、一方、トライデントシステムを更新して新世代の核兵器を配備することを望む人々は僅か42%であった。


英国が、トライデントシステムを維持するためにかかる経費は年間最大20億ポンド(32億ドル)と膨大な額にのぼる。また今回のシステム更新に要する費用は760億ポンド(1240億ドル)で、現行のシステムに要する費用も含めると、核兵器関連支出の総額は1000億ポンド(1600億ドル)にのぼる。


しかしリスクは金銭的な負担に止まらない。多くの人々が、現在なくとも将来発生するかもしれない英国に対する脅威に備えて、役に立たない核防衛システムを維持し続けることは、むしろ安全保障上マイナスではないかと懸念している。


「核兵器のような兵器を、不測の事態に備えてとりあえずとっておくということで済まされる問題では決してないと思います。そのような政策は、他国の追従を促すだけであり、その結果、どこかの国が核兵器を実際に必要としてしまう事態を引き起こすことになりかねない。私たちに必要なのは、世界の人々が熱望するグローバルゼロ(核兵器根絶)に向けて互いが核兵器を削減していく善循環なのです。」とハドソン氏は語った。


トライデントシステムの更新を「戦略防衛見直し」に含めようとする動きについて、議会における党派を超えた支持には限られたものがある。しかし、トライデント更新問題についての英国政府の姿勢は、5月のNPT運用検討会議とほぼ同時期に行われる可能性がある来年の国政選挙後、確実に変化するだろう。それは、次回の選挙では、労働党に比べて伝統的に核兵器による防衛に関して熱心な保守党の勝利が有力視されているからである。


デービッド・キャメロン保守党党首は、トライデントシステムの近代化政策を後押ししてきた。「もし我々が選出されれば、これは実現しなければならない事項である」とキャメロン党首は言う。


しかし英国首相は、バラク・オバマ大統領とドミトリー・メドヴェージェフ大統領間の米露首脳合意から生まれる国際政治の趨勢を見習わざるを得ないだろう。4月のロンドン及び6月のモスクワにおける首脳会談を通じて、直ちに核軍縮とはいかないまでも、両国の核兵器保有量削減に向けた段階的な道筋が新たに示された。


従って英国政府の核兵器システム更新に向けたいかなる動きも、同盟国である米国のオバマ政権が定めようとしている核軍縮の趨勢に真っ向から反抗する形となってしまいかねない。また、英国の核兵器計画は公式に米国のものから独立していることになっているが、核防衛システムの多くの部分を米国に依存している実態を考えれば、システム更新の判断は全く英国側の判断のみで実現できるものではないかもしれない。


また、トライデントシステムを更新させようとするいかなる動きも、トライデント搭載原子力潜水艦が全てスコットランドの
クライド海軍基地を拠点としていることから、イギリス議会(ウエストミンスター議会)とスコットランド議会の諸政党との間の対立を深めることとなる。スコットランドの英国からの分離独立を主張しているスコットランド国民党は、いくつかの少数政党の支持を取り付けており、トライデントシステム更新の動きは、これらスコットランド諸政党の反イギリス議会の動きを活発化させる可能性がある。


スコットランド国民党のアレックス・サモンド党首は、保守党のキャメロン党首がトライデントシステム更新の動きを阻止しないよう求めたことから、既に同党首と衝突をしている。


「もしトライデントシステムが、スコットランド国家、ウエストミンスター議会のスコットランド選出議員、及びスコットランド議会が望まないものであるならば、スコットランド議会が、当然ながら許される全ての機会と手段を通じて自らの見解を知らしめるということを英国首相は理解しなければならない。」とサモンド党首は語った。(
原文へ


翻訳=IPS Japan浅霧勝浩
 
 

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