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INPS JAPAN   IDN-InDepthNews - UN INSIDER

|軍縮|核廃絶というユートピア実現に近づけたか?

【広島IDN-InDepth News=浅霧勝浩】

 

「私達がここで目の当たりにしたものは悲劇です。そしてより悲惨なのは、(原爆で)全てが跡形もなく忽然と消されたことです。」と川口順子氏は目に涙を浮かべながら語った。川口氏はちょうど広島平和記念資料館の見学を終えたところだった。

川口氏は日本の元外相で、オーストラリアのギャレス・エバンズ元外相とともに、賢人会議「核不拡散・核軍縮に関する国際委員会」(ICNND)の共同議長を務めている。

 
ICNND
国際委員会の一行は、10月18日から20日に開催の第4回ICNND広島会合に先立ち、原爆投下の恐怖を伝える広島
平和記念資料館を訪問し、実際に原爆被害を経験した「被爆者」の証言に耳を傾けた。また、核兵器が人類にもたらす惨禍を懸念する広島の市民団体との意見交換会にも参加した。


川口共同議長と26名のICNNDメンバーは広島在住の高橋昭博さん(78歳)の原爆体験を知って強く心を動かされた。高橋さんは高齢化が進む原爆被害の生き証人の一人である。


同じく委員たちが心を動かされたのは
ICNND日本NGO連絡会主催の円卓会議における広島のNGO代表とのICNND最終報告書を巡る白熱した議論だった。

NGO
代表達は、「(被爆地広島における討議の結果)最終報告書の内容が消極的なものになることは、市民社会としては容認しがたい。報告書の内容は、後世、1) 核兵器の先制不使用方針、2) 北東アジアの非核兵器地帯化、3) 核兵器禁止条約締結を勧告したレポートとして記憶されるべきだ。」と主張した。


またあるNGO代表は、「核兵器の先制不使用方針を早期に核保有国が採用するようになれば、そのようなドクトリンの変更は、核兵器のない世界へむけての大きな一歩となるだろう。」と語った。


「核兵器被害の問題を心で感じてほしい」


もう一つの被爆地である長崎から参加した
田上富久市長は、「被爆地を目で見て、被爆証言を耳で聞いて、被爆の問題を心で感じて頂くことが重要だと思う。その意味で、ICNND委員の皆さんが被爆地広島に来られたことに心からの敬意を表したい。今という時を大切にし、被爆者が生きているうちに核廃絶の実現を目指すべきだ。」と語った。


同円卓会議に出席したICNND両議長と委員は、核兵器の廃絶と平和な国際社会の確立を心から希求するNGOの真摯な姿勢を高く評価する一方で、「しかし委員会としては、どこまでも現実主義的でなければならないと考えている。最終報告書を発表しても、核兵器保有国がその内容を行動に移せるものでなければ意味がない。」と指摘した。


「核兵器の問題は、そんなに生易しいものではない。地雷などとは全く異なった生き物なのだ。」とあるICNND委員は述べた。


70カ国余りの国々で展開された地雷禁止国際キャンペーン(ICBL) は成功を収めた。このキャンペーンは1997年の
対人地雷禁止条約(オタワ条約)締結の原動力となったことが評価されノーベル平和賞を受賞した。


その一方で、NGOの意見に耳を傾けていたあるICNND委員は、「むしろ私は、皆さんの側に座ったほうが良いように感じている。結局のところ、現実を動かすのは、市民の力であり、情熱と道理である。市民社会の皆さんには、それがある。」と語った。


ICNND
共同議長は、「委員会は核軍縮についての世界的な議論を再活性化し、更なる核兵器の拡散を防ぐことを目指す。」と約束した。


両議長は、ICNNDは日本とオーストラリア政府の支援で設立されたが、独立した国際委員会であり、元政府高官、閣僚、軍事戦略家、核軍縮専門家等で構成される委員は、幅広い分野の識者からなる国際諮問委員会の支援を受けていること。また、世界各地の研究機関とも協働している点を指摘した。


10月20日、川口・エヴァンズ両議長は共同記者会見を開き、3日間に亘った非公開協議の結論について、「国際委員及び諮問委員会のメンバーは最終報告案を取りまとめるべく集中協議を行った。この報告書は、2010年
核不拡散条約(NPT運用検討会議開催に先立って来年初旬に公開される予定である。」と語った。

そして報告書の内容については、「報告書は、来年5月にニューヨークで行われるNPT運用検討会議を前に、(核廃絶に向けた)国際的な合意形成を促すことが目的であることから、世界の核弾頭数を削減し最終的には核廃絶という究極の目標を実現可能なものとする戦略的な側面を重視した。」と説明した。

核兵器ゼロを目指す


両議長は、「委員会のメンバーは本報告書の焦点、すなわち主要提言内容を実現していくための3段階に亘る行動計画(CTBT発効等の初期目標を達成する2012年までの短期的行動課題、核兵器最小化地点到達を2025年までに目指す中期的行動課題、そして核兵器ゼロへと至る長期的行動課題)を強く支持した。」と付け加えた。


両議長は、「本委員会は2010年の報告書発表に続いて、主要な政府及び非政府関係者に対して一連の働きかけを行う。」と強調した。


消息筋によると、ICNND報告書には核廃絶の目標年次は明記されていない。共同通信が広島会議前に入手した草案では、核兵器削減目標として現在の20,000発から2025年までに「世界中で1千発以下」にするとの提言が盛り込まれていた。


最終的な削減目標数は公表されていないが、広島に拠点を置く中国新聞は、有力筋の情報として「1000発という目標は、最終報告書では2000発に後退したようだ。」と報じた。


この報道を確認するかのように、マレーシアの通信社べルナマは、10月23日付記事の中で、「委員会メンバーは世界の核弾頭を現在の20,000発から大幅に削減することで合意した。その削減目標は草案段階の1000発以下よりは多くなるとみられている。」と報じた。


「心変わり」


べルナマ紙はさらに共同新聞の記事を引用して次のように報じた。「同委員会に近い筋の情報によると、ICNNDの心変わりの背景には、ロシアや米国と同様の割合で核兵器を削減することに強硬に反対した一部核保有国の存在があった。それらの国々は、自国の核兵器保有量は既に最小限度のレベルに抑えていると主張した。」


「川口順子共同議長は、会議後の記者会見で、(当初の)野心的な核兵器削減目標を達成する上で障害となりうるもう一つの問題として、核弾頭処理を行う物理的な能力の問題が会議中に浮上したことを記者達に明らかにした。これは明らかに、同議長が、核兵器の解体施設が世界的に不足している現状について言及したものである。現在世界には核兵器解体施設が米国に1箇所、そしてロシアに2箇所存在しているとされている。」とべルナマ紙は付け加えた。


「解体不可能な核弾頭については、核分裂性物質再利用を防ぐために、防護された安全な環境に厳重に保管するよう、確実に検証します。」と川口共同議長は述べた。


広島・長崎両市長が代表を務める国際平和団体「平和市長会議」の代表は、ICNNDが会議後に発表した最終目標について、「それらの目標は全く十分とは言えない。」と述べ、失望の念を明らかにした。


平和市長会議は、広島・長崎原爆の被爆者が存命のうちに「核兵器のない世界」の実現を希求する立場から、来年に予定されているNPT運用検討会議において、2020年までの核兵器廃絶達成を目標とする核軍縮条約の採択を目指している。


「核兵器廃絶をめざすヒロシマの会」(HANWA)の森滝春子共同代表(70歳)は、「報告書の提言は先導的でなければならないのに、現実に縛られすぎている。」と指摘。2012年までに核兵器を半減する米国政府の方針を引き合いに「このままではICNNDの提言内容は現実に追い越されてしまう。」と主張した。


元原爆資料館館長の高橋氏は、大方の市民の感情を代弁して次のように語った。「私が被爆経験を証言した後に握手を求められたので、ICNNDメンバーの反応は良かったと思っていた。核保有国にインパクトを与える(核兵器削減の)数字を盛り込んでほしかった。しかし、このような結論では、被爆地で開いた意味がなく、率直に言って、大変失望した。」と語った。


報告書の内容に対して一般的に失望の声が広がる一方で、川口共同議長は、「私達は野心的な目標に合意した。被爆者にも理解してもらえると思う。」と語った。


川口氏は記者会見で、「広島で市民や非政府組織(NGO)と交流し、二度と原爆被害を起こさないようにしなければならないとの気持ちになった。議論の結果、この手順で進めば世界の核兵器をゼロにしていける包括的な内容となった。核兵器のない世界を追求するオバマ大統領がノーベル平和賞を受賞するなど、恵まれた時期に報告書を出すことができる。」と語った。


川口氏は報告書の内容について、「行動指向型だ」と説明。
包括的核実験禁止条約(CTBT批准・発効を促す点や、核使用を核攻撃への反撃に限る先制不使用宣言を2025年までに全ての核保有国に求めることなどを挙げ、「政府の2歩先を行く内容。」と指摘した。

エヴァンズ共同議長は、「困難な課題もあったが、世界の政策責任者の考え方を変えていくことを目指した。200頁の最終報告書を全会一致できたことは誇りだ。広島、長崎の原爆投下以来、核兵器は使われていないが、それは単に幸運だっただけだ。」と語った。


記者から核兵器の削減目標について尋ねられ、エヴァンズ氏は「非常に少ないものを目指している。それ以上は答えられない。数は合意しており変わることはない。」と述べた。


なぜ削減目標数を公表できないのかとの質問に答えて、川口氏は、「ICNNDは日本とオーストラリア両政府の合意で始まった。まず両国の首相に伝えたい。」と語った。


さらに『先制不使用宣言』について尋ねられ、エヴァンズ氏は、「全ての核保有国が先制不使用を宣言することは、核兵器ゼロにする重要なステップである。2025年までとしたが、もっと早い実現を願う。」と答えた。


2025年は遅すぎるのではないかとの質問に対して、エヴァンズ氏は、「私達も核兵器のない世界を明日にでも見たい。被爆者に会い、核兵器廃絶を強く望んでいる。しかし望むだけでは実現しない。報告書を読んでいただければ理解してもらえるはずだ。」と語った。


実行可能性を優先


中国新聞は、「爆心地で『核なき世界』の道筋を議論したにしては物足りず、共同記者会見はインパクトに欠けるものだった。」と報じた。


また同紙は、「実現可能性が優先されたとのことだが、本報告書の提言を本当に実現するためには、来年5月に予定されているNPT運用検討会議で国際社会の合意をとるなどの取組みが不可欠となる。」と付け加えた。


『実行可能性』という概念は、遠まわしに核廃絶は現実からかけ離れたユートピアか否かという議論に繋がる。しかし、
創価学会インタナショナル(SGI)の池田大作会長は、9月29日のIDN-InDepth News/IPSによる共同インタビューの中で、「『核兵器のない世界』はもはやユートピアではなく、具体的に実現可能なものであると信じられる複数の理由があります。」と述べている。

池田会長は、「近年私たちは、人道的な理想が、軍事上の理論や偏狭な国益を乗り越える形で、新たな軍縮条約として結実される重要かつ革新的な事例を目の当たりにしてきました。」と付け加えた。


池田会長はIDN/IPSの取材に対して、「私たちは、核兵器廃絶が達成可能かどうかということよりも、この時代に『核兵器のない世界』を実現していくためにはどのようにしていくべきかを、自らに対して問いかける必要があります。」と語った。(
原文へ


翻訳=IPS Japan浅霧勝浩



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