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毎日15人が行方不明になるリオデジャネイロ

【リオデジャネイロIPS=ファビオラ・オルティス】

 

公式統計や学術調査によるとブラジル南東部のリオデジャネイロ州では、過去20年間に92,000人近い人々が失踪しており、しかもその大半が、殆ど捜査されることもなく未解決事件とされている。

 

アマリウド・デ・ソウザさん(43)は、州都リオデジャネイロ市を囲む丘陵地帯に広がる多数の貧民街(ファヴェーラ)の中でも最大規模のロシーニャ(Rocinha)貧民街に、妻と6人の子どもと暮らしていた。

 

デ・ソウザさんの住居は、丘を登り切ったところの「ロウパ・スジャ(汚い洗濯物)」と呼ばれる細い路地に面したわずか10平方メートルほどの建物だった。

 

その近辺には街灯はなく、衛生環境は劣悪で、上下水道も未だに整備されておらず、ゴミの収集も行われていない。

 

デ・ソウザさんは、家族を養うため、建設労働者として働く傍ら様々な雑務をこなしていた。そして非番の日にはよく魚釣りに出かけていた。

 

6月14日の日曜日、デ・ソウザさんが魚釣りから帰って自宅にいたところ、戸口に20人ほどの軍警察官が現れ、これから尋問のために軍警察治安部隊(UPP本部まで連行すると告げられた。

 

UPPは、リオデジャネイロ州政府が州内各地の貧民街の犯罪捜査、とりわけ麻薬密売組織を締め出す目的で創立した特殊部隊である。同州政府は、2014年のサッカーワールドカップ2016年のオリンピックがリオデジャネイロで開催されるのを念頭に、公共サービス(水道導入、公共衛生・教育プログラムの提供等)の向上を盛り込みつつ、貧民街の治安回復に主眼を置いた「広域警備・犯罪防止戦略」を2008年から実施している。

 

リオデジャネイロ州政府はこの戦略に基づいて2011年11月に警察軍特殊作戦部隊BOPE)を中心とする治安部隊3000名をロシーニャ貧民街に投入し、それまで同地を実質支配していた重武装の麻薬組織の一掃を図った。そして2012年9月、UPPの設置をもって、同貧民街の(麻薬密売組織からの)完全解放を宣言していた。

 

軍警察の車に押し込められたのが、ゼ・ソウザさんに関する最後の目撃情報である。

 

リオデジャネイロではこの2か月ほど(政治への不満や汚職の多発に対して)激しい抗議活動が続いているが、デ・ソウザさんの失踪事件は警察腐敗を象徴する出来事として、大いに注目を浴びることとなった。今では、「アマリウドはどこ?」という言葉とともに、彼の顔写真を載せたポスターが街中に貼られている。

 

アムネスティ・インターナショナルのジャンディラ・ケイロス氏は、「軍警察の動向には不審な点が多い。もし尋問が目的ならば、デ・ソウザさんはUPP本部よりはむしろ地元の警察署に出頭すれば済むことだったはずだ。」とIPSの取材に対して語った。

 

アムネスティ・インターナショナルは、300百万人にのぼる世界各地の支援者に対して、リオデジャネイロ州政府及び連邦政府(連邦警察局を管轄する部門)に対して、デ・ソウザさん失踪事件について、徹底した捜査の実施と、目撃者の保護、そして違反者の訴追を求める書簡を送るよう呼びかけている

 

「軍警察はデ・ソウザさんを釈放したと主張していますが、これまで彼に関する情報は何も見つかっていません。デ・ソウザさん(或いは彼の遺体)の所在が全く不明なのです。もし彼が既に亡くなっているとすれば、少なくともきちんとした埋葬をしたいというのが家族の希望なのです。」とケイロス氏は語った。

 

デ・ソウザさんが釈放後歩いて出所したとする軍警察側の主張は、UPP本部に取り付けられている監視カメラの映像を確認すれば裏付けられるはずだが、軍警察は事件当夜はカメラが故障していたとしている。また、デ・ソウザさんを逮捕した際に使用されたパトカーのGPS装置は、当日電源が繋がっていなかったとされている。

 

一方地元警察は、この事件を、UPPの要員か麻薬密輸業者による殺人事件とみて捜査している。

 

デ・ソウザさんの家族は、生きて再会する希望を失いつつある。またこの失踪事件は、近隣住民の間に、警察に対する憤りと十分に保護されていないことへの不安感を広める結果となった。

 

デ・ソウザさんの妻エリザベス・ゴメスさんは、怒りに震えながら「軍警察は、夫を逮捕した際、彼が所持していた書類も押収していきました。夫が失踪して既に1か月が経過し、手元にはもう現金がありません。せめて、適切な埋葬をするためにも、夫の遺骨は帰ってきてほしいです。『アマリルドはどこ?』という質問に対する答えがほしいのです。」と語った。

 

ブラジルでは、この注目を集めたデ・ソウザさんの失踪事件によって、これまでに忽然と「失踪」した数知れない人々のことが問題になり始めている。そしてそうした未解決事件の大半について、主に警察官の関与が疑われている。

 

「治安研究所(Public Security Institute)」によると、リオデジャネイロ州では1日平均15人が失踪しているという。そしてそれらの主な原因は、殺人、家族内不和、精神的問題などである。

 

また、リオデジャネイロ連邦大学の社会学者ファビオ・アラウジョ氏の調査によると、1991年から2013年5月までに、リオデジャネイロ州で9万1807人が失踪したとみられるという。

 

この調査によれば、2011年の失踪者数は5482人、そして翌年の2012年の失踪者数は5934人であった。また失踪者の大半は、各地の貧民街或いは郊外の貧しい地区に住む男性であった。

 

またアラウジョ氏は報告書の中で、警察は民兵組織(強奪その他の組織犯罪に関与している非番の警察・軍関係者で構成)や麻薬密輸組織と同様に、「極めて暴力的」であり、「これらの組織は時には互いに争うが、時には(失踪した犠牲者の)死体を隠すために協力し合っている。」と記している。

 

8月13日、リオデジャネイロ州議会人権委員会による公聴会が開かれ、失踪人の家族や人権活動家が証言した。

 

2008年6月に失踪した当時24歳の技術者パトリシア・アミエイロさんの兄弟であるアドリアーノ・アミエイロさんは、「私の妹の車が警察によって銃撃され、もう5年も戻ってきません。」「今は姉に再び生きて会えるとは思っていませんが、彼女の遺体を埋葬できない状況では、私たち家族はこの問題に踏ん切りをつけることができないのです。」と証言した。

 

現在、連邦上院では、強制失踪犯罪を刑法の新たな条項に分類する法案審議が進められている。

 

ブラジルでは犠牲者の遺体が消失するケースが頻繁に報告されている。その背景には、遺体が発見されなければ、警察が捜査を中止する慣行が影響しているものと考えられる。

 

市民団体「Rio de Paz(平和なリオ)」のアントニオ・カルロス・コスタ代表はIPSの取材に対して、「この国は、生命に対する罪に関しては、罰せられない国と言わざるを得ません。」「数千人に及ぶ人々が失踪しても、政府当局は犠牲者に何が起こったか気にかけようともしません。そして失踪事件の多くが、警察署に登録さえされないのです。それどころか、失踪事件に警察官自身が関与していることも少なくないのですから。」と語った。

 

またコスタ氏は、「公式統計の内容は確かに『恐ろしい』ものです。しかし、実際の失踪者数はこうした公式統計よりも多いのが現実です。また、リオデジャネイロ市の周辺にはこうした犠牲者の遺体を埋める秘密の埋葬所が点在しています。」と語った。

 

「私たちは人の生命が失われることに無感覚になってしまう文化に生きています。そしてこの文化はこの国の権力者の姿勢によく表れています。」とコスタ氏は語った。

 

リオデジャネイロ州議会人権委員会のマルセロ・フレイソ委員長は、デ・ソウザさんの失踪に関する調査には「大きな矛盾点」があり、検察当局と地元警察に対して、事態を明らかにするように8月に入って公式に要請した。

 

フレイソ委員長は、デ・ソウザさんがロシーニャ貧民街における麻薬取引に関与していた疑いがあるとする軍警察当局の主張について、デ・ソウザさん自身と彼が失踪しているという主張の信頼性を貶めることを狙ったものであるとみている。

 

フレイソ委員長は、IPSの取材に対して、「(警察の主張とは異なり)デ・ソウザさんや彼の家族が麻薬取引に関与していた証拠はありません。」と指摘するとともに、リオデジャネイロ州内における失踪事件を捜査する、検察局、連邦警察局、社会扶助・人権擁護活動家からなる独立タスクフォースの創設を提案している。(原文へ

 

翻訳=IPS Japan

 

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