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小島をめぐる対立で日韓関係が悪化(シャムシャッド・A・カーン防衛問題研究所研究員)

【ニューデリーIDN=シャムシャッド・A・カーン】

 

韓国の李明博大統領の島根県竹島(韓国名・独島)への突然の訪問が、日韓の外交関係を悪化させている。

李大統領が竹島を8月10日に訪問した数時間後、日本政府は駐韓国大使を召喚する措置を取った。また、日韓首脳が毎年行っている「シャトル外交」を延期し、国際司法裁判所(ICJ)に領土問題をめぐる提訴を検討している。

竹島
は、島根県隠岐諸島の北西157キロの日本海(韓国名・東海)に浮かぶ島で、日韓双方が領有権を主張している。韓国側は、新羅王朝時代の512年に独島が韓国に併合されたと主張し、1954年から同島を実効支配している。

 
他方、日本側は、竹島は1905年(日本政府は当時無人の同島を、島根県隠岐島司の所管の竹島と閣議決定:IPSJ)から島根県の一部であったと主張している。この岩礁の領有権を巡る論争は、度々日韓外交関係が行き詰まる原因となってきた。最近では、2006年に島根県が2月22日を「竹島の日」と制定したことから、同島を巡る日韓の対立が再燃してきている。

過去において竹島は、日露戦争(1904年~05年)では日本政府のための、そして朝鮮戦争(1950年~1953年)中は米国政府のための一時的な観測所として利用された。そうしたことから、竹島が占める戦略的な位置が、日韓両国の領有論争の火種となっているのかも知れない。竹島の面積は僅か0.08㎡に過ぎないが、領有権を取得することで同島の周り200カイリに排他的経済水域を設定し、同域内の資源を管理することができるようになる。

近年、韓国政府は、竹島を含む近辺の島嶼周辺地域の防衛態勢強化を目的とした鬱陵島の海軍施設拡充をはじめ、竹島近辺の実効支配を強化するための一連の措置を講じている。日本のメディアは、韓国筋の情報として、「韓国政府は鬱陵島の海軍基地拡張について、2017年までの完了を目指している」と報じた。この拡張工事が完成すれば、韓国政府は係争中の竹島周辺の領土・領海の支配に関して、日本政府よりも優位な立場に立つことになる。

前代未聞の行動

李明博大統領
は2008年の就任以来、日韓関係を強化しようとし、「日本は韓国にとってもっとも親密な同盟国」とまで語っていた人物だけに、大統領自身による突然の竹島訪問という前代未聞の行動は、日韓両国の多くの政治アナリストからも驚きをもって迎えられた。李大統領は、今年6月にも、結果的には国内世論の反発で延期を余儀なくされたものの、軍事分野を軸とした日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の署名に尽力したばかりであった。

日韓双方の識者らは、今回の竹島訪問は、概して李大統領の国内政治上の計算からなされたものだと見ている。朝日新聞は社説の中で、「李大統領の竹島訪問は、竹島問題をはじめとする外交問題ではなく、むしろ韓国の国内政治に対する関心を動機としたもののようだ。」と報じている。また同紙は、「李大統領が来年2月末の任期満了に向けた準備に取り掛かる中、実兄や側近らがスキャンダルで相次いで逮捕される事態が発生した。また、韓国国内には、ますます広がりつつある所得格差に対する不満が広がっている。」と付加えた。

一方、韓国日報も社説の中で、「野党各党は、李大統領の独島訪問は、近親と側近が関与した不祥事を受けて厳しくなった国内世論をなだめるために行った『政治ショー』に過ぎないとして、冷ややかに見ている。」と報じた。そして、「我々は、李大統領の独島訪問が政治的動機に基づいているどうかは分からない。大統領は、『我が国領土』のどこにでも自由に訪問できるのだから。」と付加えた。

愛憎併存

日韓関係を過去20年に亘る長期的な視点から見ると、李大統領の竹島訪問という行動も必ずしも驚くには当たらない。日韓関係は、多くの蜜月と疎遠を経ながら、歴代韓国大統領の任期最後の年には、決まって関係が冷え込むパターンを繰り返してきた。韓国の評論家オ・テキュ氏は、1990年代の金泳三大統領時代からの日韓間の「愛憎」関係を分析し、韓国大統領任期の最終年に日韓関係が悪化する「最終年シンドローム」の存在を指摘している。デキュ氏は、李明博大統領についても、今回の竹島訪問のずっと前から、同様の現象が起こることを指摘していた。
 
しかし、今回の「最終年シンドローム」が及ぼした影響は長期に亘りそうだ。日本政府は、竹島問題を国際司法裁判所(ICJに提訴する決意を固めたようだ。日本政府は過去にも1954年と62年に竹島問題をICJに共同で付託するよう韓国側に提案したが、韓国政府が拒否した経緯がある。


当時、日本政府は日韓関係への悪影響に配慮して、IDJへの単独提訴は思いとどまった。しかし、今回の李大統領による竹島訪問を受けた玄葉光一郎外務大臣の一連の発言から、日本政府はICJへの単独提訴を行い、韓国に対して国際的な調停を受け入れるよう、外交圧力をかけていく決意のようだ。ICJ規定では、領土問題に関する審理を行うには、紛争当事国双方がICJにおける審理に同意していることが条件となっている

影響

李大統領の竹島訪問に続く日韓間の外交的睨み合いは、両国間はもとより東アジア地域全体の協力関係にも影響を及ぼすだろう。今後短期的には、日韓間の経済関係に悪影響が出るだろう。中断したままの日韓EPA(経済連携協定)についても、近年交渉再開に向けた協議が進められていたが、今回の問題で見通しは不透明になった。

また、中国を含めた三国間での自由貿易協定の交渉についても、日本政府が韓国との「シャトル外交」延期を示唆していることから両国間の高官レベルの交渉がなくなる可能性があるため、影響があるだろう。

また、安全保障関係では、日韓両国が2011年1月より下地作りを進めてきた2つの軍事協定-日韓物品役務相互提供協定(ACSA)と軍事情報包括保護協定(GSOMIA-の締結の行く末にも影響を与えそうだ。

日韓両国は、「慰安婦問題」など歴史認識をめぐる対立によって、緊張関係が高まってきていた。そこに李大統領による竹島訪問で領土紛争が新たに加わってきた。今後日韓間の歴史問題や領土紛争がどのようになるかは不透明な状況である。

しかしこうした問題を巡る日韓間の対立が長引けば、共通の安全保障上の脅威に対応するために想定されてきた安保協力を含む幅広い分野に影響がでてくるだろう。日韓両国は、従来より平和と安定という共通の目標を持つとたびたび表明してきたが、両国間の歴史問題と領土問題がエスカレートするようなことになれば、そうした目標は妨げられ、東アジア全体の安全保障環境にも影響が及ぶことになるだろう。(原文へ

翻訳=IPS Japan

※シャムシャッド・A・カーンは、防衛問題研究所(IDSA、ニューデリー)研究員。

 

 

 

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