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清掃することを恐れる「不潔な」キリスト教徒

An injured Christian woman is taken to the ambulance after the bomb attack on a church in Peshawar that left 85 dead, and scores injured. Credit: Ashfaq Yusufzai/IPS.

【ペシャワール(パキスタン)IPS=アシュファク・ユスフザイ】

ジョハル・マセーさんは、パキスタンの大半のキリスト教徒がそうであるように、清掃の仕事をしていた。場所はカイバル・パクトゥンクワ州の州都ペシャワールの工場である。

彼は、ペシャワールの諸聖徒教会で9月22日に起きた自爆テロの犠牲者の一人である。また、清掃の仕事をしていることから人口の大半を占める国内のイスラム教徒から「不潔な人々」と蔑まれている数十万人におよぶキリスト教徒の1人でもあった。

地元で仕立屋を営むラフィク・マセーさんは、「キリスト教徒と握手する奴なんていないよ。文字通り、私たちは『触れてはいけない人間』として扱われているのさ。」と語った。彼の店にはイスラム教徒の客も多いが、大半の客は彼と口をきこうともしないという。

「キリスト教徒の大半は、ペシャワールの街に集中してのさ。なぜなら田舎だと、(イスラム教徒)の住民からなにをされるかわからないからね。」

またキリスト教徒の圧倒的多数は、不衛生で水道もなく、保健施設も整っていないスラムで極貧生活を送っている。ペシャワール大学で清掃の仕事をしているジャヴィド・プヤラさんは、「私たちは2部屋の泥とレンガの家に住んでいるが、家族10人にはあまりに狭い」と語った。

このように厳しい環境に置かれているキリスト教徒だが、彼らはしばしば欧米諸国の手先と見なされる傾向にある。

「世界で(イスラム教に対する)何らかの冒涜的な事件が起こると、パキスタンではキリスト教徒がその責めを負わされることになります」とシャムシャッド・カーンさんはIPSの取材に対して語った。昨年、米国で預言者ムハンマドを冒涜する映画が制作されたのを受けて、近隣の町マルダンでは、キリスト教会が焼き打ちされる事件が起きた。

「人々はキリスト教徒を異教徒(非イスラム教徒)として嫌っているのです。」とカーンさんは語った。IPS Japan

パキスタン憲法では、キリスト教徒が大統領や首相の職に就くことを禁じている。「国会や州議会ではキリスト教徒に1%の議席が割り当てられているのですが、これをもって彼らの声が国の政治に反映されているとはとても言えません。」「住民の多くはキリスト教徒を握手したがりませんし、ましてや食事を共にするものなどいないのが現状です。」とカーンさんは語った。

このような状況の中で、多くのキリスト教徒たちの望みは、次の世代がよりよい生活を送れるようになることだ。「最近では、若いキリスト教徒の中に、教育を受けて高賃金の仕事に就く者が増えてきています。彼らは(親の世代のように)清掃の仕事に就こうとはしません。」と政府庁舎で清掃の仕事をしているブータ・マセー(60)さんは語った。

「私は地元の大学を卒業して今では銀行で現金出納係をしています。私の友人十数人も大学を卒業して高給な仕事に就いています。」と息子のアクラム・マセーさんはIPSの取材に対して語った。

多くの若い世代のキリスト教徒は、親の世代では経験することがなかったより良い未来を見据えている。「友人にはイスラム教徒もいます。私たちはともに食事をし、政治やいろいろな話題を語り合います。お互いに尊敬しあっているのです。」と掃除人の息子で現在はペシャワールのイスラミア大学に通うムクタール・マセーさんは語った。

「キリスト教徒の少女の大半は、(イスラム教徒の)地元の少女が就労を望まない看護の仕事に就きます。あるいは公立や私立の学校で教師の職に就くこともあります。」と、地元住民のジャラル・マセーさんは語った。しかし、こうしたより良い生活を志向するキリスト教徒の若者らの希望は、今回のキリスト教徒を狙った過去最悪の自爆テロにより。大きく揺らぐことになった。この死亡者85人、負傷者140人を出した自爆テロに、パキスタンのキリスト教徒は震え上がった。

ペシャワール在住の10万人にも及ぶキリスト教徒らは、まともな生活と、社会に受け入れられることを求めて努力を積み重ねてきたが、今やテロリストからの脅迫に対処することを余儀なくされている。

「私たちキリスト教徒は全く無防備な状況に置かれています。テロリストたちは私たちを標的にしてくるので、当局によるしっかりとした保護が必要です。」と9月22日の自爆テロで負傷したジャミル・マセーさんは語った。

ペシャワールの宗教学者ムハマド・カリム氏は、「テロはイスラム教徒とキリスト教徒の間の対立を煽ることを目的にしているのです。」と指摘したうえで、「キリスト教徒は、私たちの病院や事務所、市場を掃除し、奉仕してくれているのだから、彼らに感謝しこそすれ、傷つけてはならないはずです。イスラム教では、非イスラム教徒と共存することを謳っているのですから。」と語った。

ウラマー連合のマウラナ・タヒール・アシュラフィ会長は、「マイノリティー(=キリスト教徒)を保護できないでいる現状に衝撃を受けるとともに、極めて恥ずかしいことだと思っています。なぜなら、預言者ムハンマドの教えによれば、非イスラム教徒のための礼拝の場を保護することは国の義務なのですから。」と語った。

一方、イスラム宗教学者マウラナ・ザファル・グル氏は、「イスラム教スンニ派宗教学者のほとんどは、教会の存在を認めていません。彼らがそれでも沈黙を保っているのは、政府や国際社会からの圧力があるからにすぎないのです。」と語った。

パキスタンマイノリティー運動のサレーム・グラブル会長は、「パキスタンではキリスト教徒はこれまでも惨めな生活を送ってきました。私たちは僅かな賃金で清掃の仕事をしてきたのです。そして今、テロ攻撃により命の危険に晒されているのです。」と語った。

「最近のキリスト教徒を標的にした自爆テロは、パキスタン政府がタリバンとの対話を決意したタイミングを狙って国際社会の注目を引こうとしたものです。テロリストらは、対テロ戦争におけるパキスタン政府の関与に激しい憤りを感じており、パキスタン国内のモスク、シーア派住民、葬列、学校、市場、政府庁舎等を標的にすることで、そうした怒りを訴えているのです。」とラホールの政治学者サワール・シャー氏は語った。(原文へ

翻訳=IPS Japan

 

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