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笑いを誘わない風刺マンガもある

Boligan, Cartooning for Peace/Reporters without Borders【パリIPSAD・マッケンジー】

ある女性とその夫がテーブルに座っている。女性が夫に話しかけているが、夫の顔は新聞に隠れて、妻の話に耳を傾けていないようだ。(右下の風刺画参照)

「少なくとも、オバマだけは私の話を聞いてくれるわ」と妻。

これは、米国の世界的な監視網が暴露されたスキャンダルを風刺した漫画の一コマで、国際的なメディア監視機関である「国境なき記者団」(本部:パリ)が「平和のための風刺漫画Cartooning for Peace)」と協力して12月に出版した書籍に掲載されたものの一つだ。

 

「『平和のための風刺漫画』が選ぶ報道の自由のための100の風刺漫画」と題したこの書籍は、この1年間に世界で起こった表現の自由に対する抑圧の実態について人々の認識を高めるために作成されたもので、世界各地から参加した50人を超える漫画家の風刺作品を収録している。

焦点が当てられているテーマは、「言論の自由」「米国の情報監視戦術」「世界情勢」の3つ。「世界をスパイする」と題した節には、最も風刺に富んだ作品が収録されているが、読者によってはいくつかの作品を見て不快に思う人もいるかもしれない。

例えば、一部に指摘されているのは、描かれる人物が大統領か貧困層かに関わりなく、一部の風刺漫画家がアフリカ出身の人物を描く際に用いる描き方である。この書籍にもいくつかの作品でアフリカ系の人物が典型的なステレオタイプによる描き方をされており、読書によってはそれらを無神経と捉える向きもあるだろう。

この点について、本書に作品が収録されているベルギーの風刺漫画家ニコラス・バド氏は、「問題が指摘されている風刺画は、全てのキャラクターをあえて『醜く』描いている漫画家の個人的なスタイルを反映したものにすぎません。」と指摘したうえで、「政治的に何が正しいか(ポリティカル・コレクトネス)という議論を持ち出して、風刺漫画家に対して、ある集団を常にある特定の方法でしか描いてはならないと要求することはできません。つまり、風刺漫画家が何を描いても、常に気分を悪くする人はでてくるのです。」と語った。

前国連事務総長のコフィ・アナン氏は、本書の序文で、「風刺漫画家は、他者の意見や気持ちに対する思慮をもって、議論を喚起しなくてはなりません……しかし、漫画家らがそうしようとしても、依然として、(作品が)他者の気分を害することはあり得るのです。」と指摘したうえで、「しかし、挿絵を通じて他者とコミュニケーションを取る自由は、擁護され守られるべき重要な権利だということを、私たちは忘れてはなりません。」と述べている。

アナン氏とフランスの有名風刺漫画家プラントゥ氏は2006年に「平和のための風刺漫画」を立ち上げた。預言者ムハンマドを描いたデンマークの風刺漫画に対する激しい批判が巻き起こった直後のことだ。同団体には現在、世界40か国から100人以上の宗教的背景が様々な風刺漫画家が参加している。

「このイニシアチブは、風刺漫画家には作品を通して激情を煽るのではなく対話を促す責任があること、また、読者を分断するのではなく教育する責任が伴っているという考えに基づいて活動しています。」とアナン氏は語った。

さらにアナン氏は、「この『国境なき記者団』と『平和のための風刺漫画』が共同出版した書籍は、記者たちが世界各地で引き続き直面している困難な現状と、情報の自由を保護し記者を援護する『国境なき記者団』のような組織の重要さを改めて思い起こさせるものとなっています。」と語った。

こうした努力に対して疑念をもつ人がいるとすれば、ジャーナリストの置かれている厳しい状況を報告した最近のレポートが参考になるだろう。「国境なき記者団」によれば、2013年に、世界で71人のジャーナリストが殉職し、87人が拉致されている。

2012年と比較すると、2013年の死者数は減少したが、拉致さらたジャーナリストの数は129%増加している。「国境なき記者団」は、「シリアソマリアインドパキスタンフィリピンを、メディアにとって最悪の5ヵ国」に位置づけるとともに、「今日世界では少なくとも178人のジャーナリストが投獄されているほか、脅迫や暴力により、国外亡命を余儀なくされるジャーナリストが増え続けている。」と指摘している。

また多くの国々で、風刺漫画家も当局による嫌がらせや襲撃の対象となっている。本書籍では、シリアのバシャール・アサド政権を批判していたシリア人の漫画家アリ・フェルザット氏が2011年に拉致監禁され、拷問を受けた経緯を紹介している。フェルザット氏は拘禁中にシリア当局によって(二度と風刺画が画けないよう)利き腕の左手を折られた。「平和のための風刺漫画」が何とかフェルザット氏をシリアから救出し、クウェートに逃がしたが、依然としてネットを通じた脅迫が絶えないという。

「国境なき記者団」では1992年以来、写真集「報道の自由のための100の写真」を出版してきたが、こうした状況を背景に、今回初めて写真に代えて風刺漫画を採用した。「国境なき記者団」によると、本書籍の販売から得られる収益は、世界各地のジャーナリストやブロガーを援護する同団体の活動費に充てられるとのことである。なお、「『平和のための風刺漫画』が選ぶ報道の自由のための100の風刺漫画」のデジタル版は、アップルストア(App Storei-pad及びi-phone用アプリ購入サイト)からダウンロード(有料)することも可能である。(原文へ

翻訳=IPS Japan

 

 

 

 

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