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|視点|ムスリム同胞団を「テロ集団」とみなすことの深い意味合い

As more MB leaders are detained and as communications between the leadership and rank and file are interrupted, younger and perhaps more radical members of the MB will hit the streets. Credit: Hisham Allam/IPS【ワシントンIPS=エミール・ナクレー】

12月25日、ムスリム同胞団(1928年創設)が85年の歴史の中で初めて、エジプト政府(軍部を背景にしたアドリー・マンスール暫定政権)によってテロ集団指定を受けた。おそらくは軍部からの承認によってなされた今回の暫定決定は、北部ダカリヤ県のマンスーラとカイロにおける2度の爆弾テロ事件を受けてなされた。

エジプト政府はムスリム同胞団がこれらのテロ事件に関与したとの証拠を示していない。それどころか、アンサール・ベイト・マクディス(聖モスクの擁護者)という名前の過激派集団が、犯行声明を出しているのである。ムスリム同胞団自体は、すべての暴力的行為、とりわけ治安当局に対するそれを非難している。

 

今回のムスリム同胞団に対する政府の措置は、エジプト及び最終的には米国にとって短期長期にわたって深い意味合いを持つことになるだろう。テロ団体指定は、短期的には、ムスリム同胞団の撲滅を公言してきた軍部及び現暫定政権内部の強硬派にとっての勝利を意味している。しかし1940年代以来、歴代エジプト政権がムスリム同胞団を潰そうと試みてことごとく失敗してきている事実を振り返れば、この勝利は多くの犠牲を強いる割に合わないものといわざるをえない。

ムスリム同胞団は、強硬派の主張とは異なり、単なる政治的組織ではない。その奉仕活動は、社会、宗教、教育、医療、文化など幅広い分野に及び、今日エジプトのイスラム運動の中で最も顕著で信憑性のある組織である。また、アラブ及びスンニ派イスラム世界において、最大かつ最も規律がある社会運動・宗教運動組織である。

ムスリム同胞団は、無数の非政府組織を通じた奉仕活動を通じて、エジプト社会、とりわけ、下位中流階級及び貧困層の間に浸透してきた。こうした組織では、食料、医療、保育、教育サービスが、無料あるいは廉価で提供されている。さらにムスリム同胞団が運営する病院では、数多くの中流階級や専門職の人びとも、医療サービスの恩恵を受けている。

大半のエジプト人にとって、診療費が高価な私立病院や医療サービスの質が低い公立病院と比べると、ムスリム同胞団系の病院が唯一の魅力的な選択肢となっているのが現状である。

テロ団体指定という政府の近視眼的な決定により、ムスリム同胞団が提供してきたこれらの機能は全て停止に追い込まれ、数百万人に及ぶエジプト国民が、突如として、保健、教育、福祉サービスから切り離されることになる。そうなれば、追い詰められた民衆が街頭に繰り出し、あらたな騒乱と社会不安が引き起こされることになるだろう。

強権姿勢を強める軍部は、現暫定政権に対する抗議活動を一向に止めないムスリム同胞団に対する締め付けに躍起になっている。さらに先月には、2011年にホスニ・ムバラク元大統領に反対する大衆蜂起で中心的な役割を果たした活動家3人(アハメド・マーヘル氏、アハメド・ドゥマ氏、モハメド・アデル氏)が、今年11月に無許可で抗議デモを組織したとして禁錮3年の判決を言い渡され投獄された。このことは、世俗系かイスラム主義組織かに関わりなく、あらゆる反対の声を許さない軍部の冷酷な側面を改めて示している。

軍部はムスリム同胞団関係者や支持者を多数逮捕し締め付けを強めているが、抗議運動は収まりそうにない。このままムスリム同胞団の幹部が次々と逮捕・投獄され、指導部と一般メンバーの間の連絡が寸断されれば、より若い世代の、そして恐らくより過激なメンバーが街に繰り出してくることになるだろう。そうなればエジプトは、一層不安定で混乱した事態に陥ることになるだろう。

A solider trying to stop a protest by Muslim Brotherhood supporters in Cairo. Credit: Hisham Allam/IPS.あらゆる政治勢力が話し合いで事態の収拾を図れる可能性は急速に遠のきつつある。もし軍部がムスリム同胞団抜きでエジプトに安定した政治体制をもたらせると考えているとしたら愚かなことだ。なぜなら、政治におけるイスラム主義運動は、1928年のムスリム同胞団創設以来、エジプト政治文化の一部を構成しているからである。

アブドルファッターフ・アッ=シーシー陸軍大将(国防大臣、兼エジプト国軍総司令官、現第一副首相、エジプト軍最高評議会議長)は、反ムスリム同胞団のヒステリーの波に乗って大統領の地位まで突き進もうとするかもしれない。しかしエジプト現代史が示しているように、強権で独裁を進めようとする試みは極めて危険な冒険である。シーシー氏も、大統領としてムスリム同胞団を弾圧しその指導者や幹部を投獄・処刑しても結局撲滅できなかった前任の軍事独裁者らの経験から教訓を学ぶべきである。おそらくエジプト暫定政権は、今回の軍部の決定が引き起こすであろう暴力の連鎖に直面して、最終的にはムスリム同胞団をテロ団体指定した判断の再考を迫られることになるだろう。

また、今回の動きは、米国にも好ましくない影響を及ぼしかねない。つまり、軍部を支持する強硬派は、ムスリム同胞団に対して米国は甘いと不満を持つことになるだろうし、一方でムスリム同胞団支持者らは、米国が軍政を支持しているとして反発を強めることになるだろう。

米国務省は、エジプト軍部・暫定政府によるムスリム同胞団のテロ団体指定に関して、「包摂的な政治プロセス」を支持し「政治的な領域を超えた対話と政治参加」を求める内容の声明を出している。しかし、この微温的な態度はエジプト軍部とムスリム同胞団のいずれも満足させることはない。

米国政府は、エジプト軍部に対して、ムスリム同胞団と関係者を排除してもエジプトに政治的安定をもたらすことはできないという立場をエジプト軍部に対して明確に表明すべきである。

事実米国は、ムスリム同胞団が過激主義を排し選挙政治への参加を目指すようになった90年代以来、ムバラク政権からの度重なる反対があったにもかかわらず、同胞団との関与政策を進めてきた。米国は、今回の軍部の誤った判断とは別に、今後もこの方針を貫くべきである。(原文へ

エミール・ナクレーは、CIA政治的イスラム戦略分析プログラムの元ディレクター。著書に『必要な関与米・イスラム教徒世界関係の作り直し』。

翻訳=IPS Japan

 

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