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|中国|歴史の教訓に学ぶ、ただし選択的に

【北京IPS=アントアネタ・ペツロヴァ】

世界の次の超大国になる準備を整えている中国が、歴史の教訓を学ぼうと他の大国の盛衰を検討し始めた。ただし、省かれている1章がある。中国自身の歴史だ。

中国経済はこの20年にわたる市場改革を通じて急速に成熟し、今や世界4位を占めるまでに至った。しかし一方で、10億人を超す国民に教えられている中国の近代史の多くは訂正されぬまま、依然として共産主義の教義に支配されている。中国の世界における影響力が高まる中、専門家は、検閲された歴史を基盤に国を育てることの影響について深く考え始めている。

「文化大革命」の発生原因とその結末や、3,000万人の命を奪ったと言われている「大躍進運動」中の大飢饉をはじめ、中国の近代史の多くは、検閲されあるいは一般に知らされぬままである。研究者による精査は継続されているものの、彼らの研究の多くは香港や台湾で発表されるに留まり、中にはまったく公表されないものもある。

中国共産党は、政治的失敗を精査されることをおそれ、自国の過去の苦難よりは将来の偉大さについて国民の関心を呼ぼうとするばかりだ。12月中国中央テレビで放映されたドキュメンタリー新番組「諸大国の台頭」もまさにそうした意図であった。

番組は、15世紀の新興ポルトガル帝国から現在世界を支配する米国に至るまで世界の大国9カ国の台頭を検証して、こうした国を成功に導いた要因を明らかにしようという内容だった。中国はこの9カ国に含まれていなかったが、番組は、現在の中国指導者が国民に訴えたいと願っているソフトパワーの重要性を説くものであった。

ドキュメンタリー番組は、中国共産党の中央委員会の委託であったにもかかわらず、歴史の描写からはマルクス主義の視点がまったく排除されており、世界の諸大国がいかにしてソフトパワーを構築したかを重点的に描いている。

従来の中国の歴史本のように帝国の圧政を強調するのではなく、番組はそれら帝国が理念、制度、文化の魅力によって他に影響を及ぼすその力を掘り下げて検討している。

このシリーズ番組のチーフ・プロデューサーRen Xue’anは、中国日報の取材に応えて、「中国が世界に門戸を開く中、私たちは世界についてもっと合理的な理解を身につけることが必要です」と述べている。

ドキュメンタリーは、英国とその産業革命の紹介に当たっては、経済発展における同国の偉大な科学者ニュートンとワットならびに経済学の天才アダム・スミスの貢献に時間を割いている。米国を扱った部分では、台湾との再統一を目指すことを誓っている中国共産党自身の中核理念である国の結束に功績を上げたフランクリン・ルーズベルト大統領に焦点を当てている。

12部構成のドキュメンタリーは高視聴率を上げ、中国中央電視台(CCTV、中央テレビ)で2回連続して放映された後、現在では地方テレビネットワーク各局で放映されている。

「世界の大国の台頭にとって理念や哲学、文化がいかに大切であったかを見ることはすばらしい」とインターネット掲示板に匿名で書き込んだあるネチズンは、「しかしそれら大国が恐ろしい軍事力なしに大国になったと考えるのは間違いだ」と記している。

もうひとりのネチズンは、「従順に知識を深めることがすべてと考える上で儒教の伝統の影響を排除する必要がある。米国や日本の例から明らかなように、技術と科学を全面的に推進することによってのみ、国家は大きな権力を達成することができる」と書いている。

中国の将来の台頭を見据えたこの番組は、国のソフトパワーがいかに重要であり得るか、あるいは経済力ははたして軍事力なしに実現可能なのかどうかについて十分な議論を巻き起こした。ただし真正な歴史の欠如またはその重要性について意見の分かれる問題を提起することはなかった。

中国が最後に自らの自己分析をテレビで放映したのは、18年も前のことになる。1988年に放映された6部構成のテレビシリーズ「黄河哀歌」は、放送後直ちに中国全土にセンセーションを巻き起こし、その結果放送禁止となった。

論議を呼んだこのシリーズは、黄河の緩やかな不変の流れに形作られた中国文明が極度に安定した抑圧的な「封建的」政治文化を生み出したのだと示唆し、西側世界はこれと対照的に、科学と民主主義に教え導かれたものとして描き、そして変革を呼びかけた。

中国共産党の保守派の多くは、「黄河哀歌」放送禁止後の激しい議論が、学生の民主化運動に影響を及ぼし、後に天安門広場でのデモと政治改革の要求にまで至らしめたと考えている。中国共産党長老のひとりWang Zhenは、このドキュメンタリーを「文化的ニヒリズム」と呼び、全面的な西洋化を提唱したとして番組を非難したと言われている。

「諸大国の台頭」は、こうした公認されない領域にまでは踏み出していない。チーフ・プロデューサーRenの言葉を借りれば、ドキュメンタリーは、大国を構成する要素と大国に至った過程とを明らかにする「答探し」にすぎない。

過去の亡霊を追い払い、厄介な過去の説明を試みることは、ドキュメンタリーで推奨されていることではない。有識者は、共産党は依然、過去を問題にすることで古傷を開き、政治改革への要求を再び呼び起こす結果になることをおそれていると見ている。

中国の歴史書におけるナショナリズムを批判する論文を掲載したことで2006年初頭に週刊紙『氷点』の編集長を解任された李大同は、「物事に疑問を呈し始めれば、それがどのようなことに行き着くか誰もわからない。ひとつの疑問が別の疑問を生み、尽きることはない」と述べている。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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