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│ペルー│希望を見出す低所得者層の癌患者

Claudia Alvarado, with her parents and her nail polish, who along with Peru’s Plan Esperanza have helped her to bravely face the treatment for leukaemia. Credit: Milagros Salazar/IPS【リマIPS=ミラグロス・サラザール、2014年4月10日】

体重わずか18キロの彼女の細い手足の爪先には、さまざまな明るい色のマニキュアが塗られていた。まだ幼い彼女がたどってきた半生とはまったく異なった色である。

現在まだ7歳に満たないクラウディア・アルバラドちゃんは、ペルー政府が提供する癌治療プログラム「希望計画(Plan Esperanza)」の支援を得て、臨床検査と、時には痛みを伴う治療に耐えながら、白血病(血液の癌)と闘っている。

Map of Peru癌は、他のアメリカ大陸の諸国と同様、ペルーでも循環器疾患に次ぐ死因となっている。

ペルー厚生省によると、人口3050万人のこの国における癌死亡率は10万人あたり157人で、毎年新たに4万5000人が癌に罹患している。

こうした高い罹患率と膨大な癌治療費を抑制するため、ペルー政府は2012年11月に「希望計画」を始動させた。このプログラムは、癌患者に対して、より包括的な治療を提供するとともに、とりわけ貧しい患者に対して、政府保証付きの癌治療を提供することを目的としている。

クラウディアちゃんは、治療を受けるために、学校に通い友達を作るといった同世代の女の子の生活とは異なり、かつて暮らしていた同国北部のラ・リベルタ県から遠く離れた首都のリマへと、病院を転々とする生活を送ってきた。

彼女の故郷は北部のサンタ・ローサという貧しいコメ農家が多いコミュニティーだった。母のイヴォン・サンチェスさんはIPSの取材に対して、「3歳の時に初めてこの子を治療に通わせた公立病院は、途中3つの廃墟と化した村を通り抜けて、バスで1時間かけてようやくたどり着けるチェペン市にありました。」と語った。

クラウディアちゃんは、まもなく専門的治療を受けるために、ランバイエケ州の州都チクラーヨ市にある公立病院に回され、そこからさらに首都リマにある「国立腫瘍病研究所(INEN)」に回送された。

ANDINA/Jessica Vicente同研究所では、積極的治療が行われたが、費用は全て「健康のための無形連帯基金(FISSAL)」によって賄われた。FISSALは、貧困層を中心とした国民健康保険機構(SIS)加入者(加入料1ヌエボ・ソル=約30円支払えば加入できる)を対象に癌治療のような高額治療費をカバーしている。

SISはまた、クラウディアちゃんの家庭のような、年間収入5分位階級第4位・第5位(世帯を年間収入の髙いほうから順番に並べていったときに、5等分して下から2番目と1番目のカテゴリーに属する収入世帯)の世帯には、無料で医療サービスを提供している。

2012年1月、クラウディアちゃんの病気が再発した。クラウディアちゃんの母は、この時の「再発」という宣告がもう助からない可能性を婉曲に表現しているものと知っていたので大いに狼狽したのを覚えている。

この時点で唯一の望みは骨髄移植だったが、12歳の兄レンツォ君はドナーとして不適合だったことが発覚した。「その時、すべての希望が絶たれたかに思われました。」とクラウディアちゃんの母は語った。

Plan Esperanzaクラウディアちゃんの命を救ったのは、ペルー政府が2012年11月に始動した「希望計画」だった。この年SISとFISSALは、化学療法の結果が芳しくなかったり、病気が再発したりした子供を対象に骨髄移植を行う合意を米国の2つの病院と結んだのだ。

その結果、クラウディアちゃんは2013年9月に、マイアミ子ども病院で骨髄移植を受けることができた。手術自体は8時間かかり、移植後は、28日に亘って、40度近い熱が出た。

クラウディアちゃんは、なんとかこの難局を乗り越え、昨年12月には母親と共に飛行機でリマに帰国した。以来、彼女は家族がリマ郊外の貧しい地区に借りた家で療養生活を続けている。記者は、今回この家を訪れて取材した・

家族はクラウディアちゃんと一緒に過ごすために、リマに引っ越してきていた。父のフォルトゥナード・アルバラードさんは、農場労働者の仕事をすてて、リマでタクシー運転手をしている。

クラウディアちゃんは、手術後200日に亘る安静期間、病気をうつされるのを防ぐため他の子どもとは遊べず、また体調に負担をかけるような運動もできなかった。その結果、彼女の体重は僅か18キロにまで落ち込んだ。

それでもクラウディアちゃんは頑張った。薬の摂取についても、医師の指示をきちんと守り、最も苦い薬を飲むときは、直後にレモンドロップを食べるなど工夫してこなした。

Plan Esperanza2013年末までに、5万7531人が「希望計画」によって無料の医療支援を受け、640万ドル(約6528億円)が支出された。またこの計画では、全国規模の癌診断、予防キャンペーンも実施されている。

「これまでに、60万人が癌の早期発見のための集団検診を受け、300万人が専門医師のカウンセリングを受けました。」「重要なことは、人の命を救うために、患者にきちんとした治療を提供することです。」と癌専門医で「希望計画」のコーディネーターとつとめているディエゴ・ヴェネガス氏はIPSの取材に対して語った。

「希望計画」では、癌と診断された患者のうち、75%が進行癌であることが判明したため、新たに自宅療養もプログラムに含めた。

ヴェネガス氏は、「『希望計画』による無料治療は、プログラム開始時点のSIS加入者約1300万人を対象に始まりました。FISSAL基金で治療費をカバーしている癌で代表的なものは、頸癌、乳癌、直腸癌、胃癌、前立腺癌、白血病、そしてリンパ腫です。なお、その他の癌でも、SISの加盟者であれば、無料でこうした高額治療が受けられます。」と語った。

一人の癌患者あたりの治療費は、平均で26万ドル(約2650万円)である。

クラウディアちゃんの場合、マイアミの子ども病院での骨髄移植費用、彼女と母親の渡航費、半年におよんだ米国滞在費は、合計で30万ドルを上回った。さらに、米国での手術・療養前後にペルーのリマの病院で受けた化学療法の費用や薬代は別にかかった。しかしこうした費用は全て、「希望計画」によってカバーされた。

「国立腫瘍病研究所(INEN)」のブレストクラブのスサナ・ウォン会長は、「希望計画」の恩恵を受けた多くの乳がん患者を見てきた。

「癌治療は高額なことが分かっているため、かつては乳癌の告知がなされると、瞬時にしてもう自分の人生は終わったと絶望したものです。しかし、乳癌治療を支援してくれるプログラムがあることを知れば、頑張って生きようという勇気が湧いてきます。『希望計画』のお蔭で、人々は生きるチャンスを獲得したのです。」と、2006年に自身が乳癌を宣告された経験を持つウォン会長はIPSの取材に対して語った。

FISSALのミゲル・ガラヴィート所長は、「ペルーは、高額な癌治療費を無料にするこのような支援を行っている世界でも数少ない国の一つです。」と語った。

一方で、先述の「希望計画」コーディネーターのヴェネガス氏は、「現在、癌患者の統計は3大都市(リマ、アレクイパ、トルヒーリョ)のものしかないため、より広範囲の癌患者を正確に登録する計画が進められています。より人里離れた地域の患者にも医療支援を行きわたらせるためには、スタッフの増員や医師の訓練・養成、さらには運営の地方分権化をさらに進めていく必要があります。」と語った。

また、清潔な水や衛生設備へのアクセス向上など、他部門に亘って癌対策を推進する委員会の設立も進められている。

中部のワヌコ県の事例から、劣悪な衛生環境と癌の相関関係が指摘されている。70%の住民に上水道が整備されていない同県では、胃癌死亡率は10万人あたり150人で、国の平均値を大幅に上回っている。

ヴェネガス氏は、「この種の癌は、飲用水の質が関係しています。」と語った。

人生の半分以上を白血病と闘いながら、お気に入りのマニキュアを爪に塗って自分を励まし続けてきた幼いクラウディアちゃんのような患者の事例に見られるように、ペルーでは、癌は公衆衛生の問題として、政府が積極的な取り組みを進めている。(原文へ

翻訳=IPS Japan

 

 

 

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