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|インド|魚を使ってマラリア対策

Children in India’s southern city Mangalore promote demonstrations of guppy fish feeding on mosquito eggs. Credit: Stella Paul/IPS.【マンガロールIPS=ステラ・ポール】

サンプリース・モンテイロ君(13歳)の隣人は、「グッピーを購入すれば、それはあなたの家の蚊の幼虫や卵を食べてくれるため、蚊がいなくなります。そのため、またマラリアに感染することは無くなるのですよ。」という彼のアドバイスを真剣に受け入れている。

モンテイロ君が通っている、インド南部カルナータカ州のマンガロール市にある聖アロイシウス高等学校は、市当局と協力して、約1か月前にマラリア対策キャンペーン「グッピー運動」を開始した。この運動は、グッピーのような自然界の生物を使ってマラリアの感染を抑制することを目的としている。

この運動に参加したボランティアらは、蚊の幼虫とグッピーが入った水槽を携えて地元の病院や学校を訪問し、グッピーが蚊の幼虫を捕食する様子を実演してみせている。

ボランティアらはまた、市内各地の路上でも同様の実演を行い、マラリア対策のメッセージを幅広く知らしめる活動に従事している。モンテイロ君がグッピーまつわるこうした効能を知ったのもそうした路上実演を見学したのがきっかけだった。この運動は、「世界マラリアデー(4月25日)」を契機にとりわけ大きな注目を浴びている。

マンガロール市から遠く離れたインド北東部メーガーラヤ州シロン市では、州政府がマラリア予防対策のワークショップを開催し、州政府職員や保健活動家らに対して、グッピーのような魚を繁殖させることがベクター伝播疾病(生物媒介の疾病)対策に効果的な方法だと講演していた。

「現在、衛星マッピング技術を利用して、マラリア多発地域の特定作業を進めています。」「マッピングが完成すれば、(蚊の卵や幼虫を捕食する)魚を問題地域に対して効果的に配送して繁殖できるようになります。」とウエスト・ガロ・ヒルズ地区のカーター・サングマ医療保健官はIPSの取材に対して語った。

An Aedes aegypti mosquito, which transmits the dengue virus, feeding. Credit: jentavery/CC-BY-2.0サングマ氏は、州政府が2012年にマラリア予防対策としてグッピーの繁殖を始めて以来、既に州内の蚊を介在した病気の発生率は既に50%減少している、と語った。

インドでマラリア対策にグッピーが活用された事例は大英帝国植民地時代の1908年に遡る。当時蚊に悩まされていたセルヴィーという名の英国陸軍少佐が、本国からグッピーを持ち込み、赴任地バンガロールの野営地周辺の池や湖で繁殖させたという記録が残っている。

それと同じころ、ムンバイ市当局は、米国のテキサス州からグッピーを輸入してマラリア対策に使い始めている。

このようにマラリア対策にグッピーが有効なことは100年以上知られているにも関わらず、インド政府はこの対策手法を全国に拡大してこなかった。その理由について、マンガロール市を拠点にした保健活動家のスレシュ・シェティ氏は、インド政府が、蚊を介在した疾病で年間数千人が犠牲になっている農村地域にこの対策を広げることに失敗したからだ、という。

WHO世界保健機関(WHO)によると、推定34億人がマラリアに感染するリスクに晒されているという。インドでは、控えめに見積もっても年間1500万人がマラリアに感染し、2万人近くが命を失っている。

マラリア蔓延の背後には、不衛生、未処理のゴミ、停滞水、激しい気候変動などが主な理由としてあり、その予防対策としては、蚊帳と殺虫剤の併用や水回りのチェックが一般的であるという。しかし、グッピーなどの魚を使って予防することは、最も安く、最も効果的であると専門家らは指摘している。

インド東北部アッサム州グワーハーティー市にあるマラリア研究センターでは、今では大規模なグッピーの養殖がおこなわれている。

「アッサム州では、生体制御でマラリアの感染率を大幅に軽減することができました。2012年までこの州では年間3万人以上がマラリアに罹っていましたが、今では3000件から4000件まで減少しています。」と、公衆保健技術部のヌリペンドラ・クマール・シャルマ氏は語った。

シャルマ氏は、政府は村落を基盤にしたNGOや自治組織、民間セクターをうまく巻き込まなければならない、と指摘した。

バンガロール市から南に181キロのマイソール市の企業家ソマセカール・ゴーダ氏は、マラリア対策を実施する財源を確保するうえで、企業や金融機関を巻き込むことは有効だと語った。ゴーダ氏は、昨年5月にマイソール市郊外のディー・サルフンディ村で4人の子どもがデング熱で死亡したのをきっかけに、グッピーの養殖を開始し、無料で配布している。

子どもたちの死後、村ではパニックが広がり子どもを連れて村から逃げ出すものも出てきた。そこでゴーダ氏は、村に乗り込み、村人の助けを借りで、村内50カ所を超える溜池や水たまりにグッピーを放流したのだ。

Dabbawalla/Wikimedia Commonsゴーダ氏は、政府部局間と官民の連携のありかたを改善すれば、どこでもマラリア撲滅に向けた成果を上げることができる、と指摘したうえで、具体例として、「ムンバイ市では、ダッバーワーラーと呼ばれる弁当配達人がマラリア対策キャンペーンに一役買っています。また、マンガロール市では、市当局が地元の大学や金融機関と協力してマラリア対策を実施するために必要な資金とボランティアを確保しています。」と語った。

マラリア抑制対策におけるグッピーの効果については疑問の余地はないが、研究者の中には、外来種のグッピーは蚊の幼虫や卵以外にも在来種の魚も捕食することから、大量導入が進めば、インドの生物多様性を脅かす恐れがあると指摘する者もいる。こうした研究者は、解決策として、蚊の幼虫や卵を捕食するインド在来種の魚も平行して活用することを勧めている。

タガヤシ/ Wikimedia Commons「そうしたインド原産の捕食魚にはティラピア、カダヤシ、インドメダカなどがあります。蚊とマラリアを抑制するには、これらの魚をグッピーと併用することは十分可能です。」と、インド北東部にあるトリピア大学薬学部のガンブシア・デブ元教授はIPSの取材に対して語った。

「インド南部タミル・ナードゥ州のヴェールール市では、これまで10年近くマラリア患者が1人も発生していませんが、市当局は、それでも毎年同地(=市内にあるインド医療機関最高峰のキリスト教医科大学)を訪れる数千人にのぼる医療観光客をマラリアの感染から守るために、先月だけで4500匹のグッピーを市内各地の井戸に放流しました。」と、地元の昆虫学者ラジャ・ゴパル氏は語った。(原文へ

翻訳=IPS Japan

 

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