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セルビアを襲うインターネット検閲の洪水

【ベオグラードIPS=ベスナ・ペリッチ・ジモニッチ】

セルビアでは、この120年で最悪と言われるほど激しかった洪水がようやくおさまった。ところが水が引いたあとに「現れた」のは、大きな被害を受けた家屋や田畑に止まらず、インターネットの検閲という別の問題であった。

2週間前に被害が頂点に達した未曾有の洪水(死者50名以上)に対する政府の対応を批判した多くのウェブサイトが、次々とハッキングされたり、利用不可になったり、削除されたりしている。攻撃に晒されたウェブサイトにアクセスを試みると「Error404」のメッセージがモニターに映し出される。

Obrenovac/ Ventinetさらに、セルビア検察庁の発表によると、これまでに約30人が「虚偽のニュースを拡散してパニックを引き起こした」として逮捕されている。

今回の大洪水で最大の被害を出したベオグラード南西33キロにあるオブレノヴァッツ市(Obrenovac)で何百人もの犠牲者が出ていることをフェイスブックで報告した3人の若者が、9日間にわたって当局に身柄を拘束された。3人はその後釈放されたが、今後裁判にかけられる予定で、有罪になると6か月から5年の禁固となる。

匿名を条件にIPSの取材に応じた検察局の関係者は、「彼らが発信したコメントや投稿はパニックを引き起こしたり、公共の秩序を著しく乱したりする恐れがありました。」と指摘したうえで、「警察の対応は検閲によるものではありません。」と語った。セルビアでは、検閲は憲法で禁止されている。

しかし、セルビアの市民保護官(人権オンブズマン)の職にあるサーシャ・ヤンコヴィチ氏やメディア専門家らは、「民衆は必死」「首相、哀愁と自己憐憫で立ち往生」と題した記事を掲載してアレクサンダル・ブチッチ首相の政権運営を痛烈に批判してきたニュースサイト「テレプロンプター」や「ドルガストラーナ」がハッキングされ、利用不可に陥ったのは、明らかに当局による検閲だとみている。

またセルビアで最も人気を博しているウェブニュースサイト「ブリック」上のブログコーナーから、「私、AV(アレクサンデル・ヴチッチ)は辞職します」と題した記事が突然何の説明もなく削除された。しかしニュースサイトの所有者であるアクセル・スプリンガーメディアは、この件についてはノーコメントとしている。

「明らかに社会的対話を制限しようとする政府による動きがあります。これは言論統制の導入を目指す動きでもあります。」とセルビア独立系ジャーナリスト協会(NUNS)のヴカシン・オブラドヴィッチ代表は語った。

Saša Janković ヤンコヴィチ市民保護官は声明を発表し、「特定の情報の削除や批判者の逮捕が、以前より公開されているメディアや情報空間で発生していることから、当局にとって検閲の実態を隠ぺいすることはますます困難になってきている。」と語った。

こうした検閲の明らかな事例の一つが、ベオグラードシニシャ・マリ市長が(行政管轄下にある)オブレノヴァッツ市の市民に対して自宅から離れないよう呼びかけた5月16日のメッセージが削除されたケースである。

この自宅待機を呼びかけた市長のメッセージは、ベオグラード市の公式ウェブサイトに掲載されたが、オブレノヴァッツ市全域が同日の内に完全に冠水し、(市長の呼びかけとは反対に)2万3000人が緊急避難を余儀なくされる事態に及ぶと、密かに削除されたのである。しかしこの呼びかけはキャッシュには残っていて、フェイスブックやツイッターを通じて拡散されている。

Aleksandar Vucicマリ市長は、ヴチッチ首相が率いるセルビア進歩党の幹部の一人である。進歩党は3月の議会選挙で大勝(250議席中158議席)し、故スロボダン・ミロシェヴィッチ氏が創設した社会党(44議席)と改めて連立を組んでいる。進歩党と社会党は、2000年にミロシェヴィッチ政権を倒した民主党が汚職の蔓延と世界金融危機後の経済立て直しに失敗したとして退陣した2012年の総選挙以来、連立パートナーとして国政を運営していた。

しかしヴチッチ首相は、最近出演したセルビア国営放送の番組の中で、検閲の存在をきっぱりと否定している。

「検閲が行われているとか、特定の文言や投稿文書を削除する要求がなされたとかいう話は全く事実無根です。」とヴチッチ首相は語った。

Dunja Miratovic/OSCEこの首相の発言は、欧州安全保障協力機構(OSCE)の「報道の自由」担当官であるドゥニャ・ミヤトビッチ氏の発言に激しく反発したものである。ミヤトビッチ氏は、先週ストックホルムで開催されたOSCE会合において、「セルビアでウェブサイトやインターネット上の情報が検閲されているという疑いについて深く憂慮する」としたうえで、「これは明らかに表現の自由の権利を侵害するものです。インターネットはこうした権利を支援する絶好の機会を提供するものであり、情報の自由な流れやアクセスの確保に不可欠なものです。」と発言していた。

セルビアの事情通にとって、今回の洪水にあたってヴチッチ首相がとったこうした行動は驚くにあたらない。北大西洋条約機構(NATO)がセルビア爆撃を行った1999年当時、ヴチッチ氏はミロシェヴィッチ政権の若き情報相だった。ヴチッチ氏は、当時独立系メディアに対して抑圧的な法律を適用して数十万ドルにのぼる罰金を課すなど、厳しい検閲を敷いていたことで知られている。

「ミロシェヴィッチ時代と何もかわりません。むしろメディア規制は今の方が悪化しているかもしれません。」とベテランジャーナリストのジャスミンカ・コチジャン氏は語った。

コチジャン氏は今年初め、ヴチッチ政権のメディア検閲がどのように機能しているか身をもって知ることとなった。

コチジャン氏は、ヴチッチ氏がセルビア北部の街フェケティッチで降り積もった雪の中から子供を救出したとする映像が大々的に報じられたのち、実際にはボランティアが人々を救出していた実態を報じる赤十字の記事を自身のフェイスブックに掲載した。彼女はその直後、勤務先の国営タンユグ通信の編集委員の職を解かれたのである。

2012年に政権に就いて以来、ヴチッチ氏と側近らは、与党進歩党に批判的なオンライン上のあらゆる報道内容(風刺議論のみならず事実報道も含む)を削除することに躍起となっている。与党内の問題を取り扱ったブログは削除され、昨年11月に2度目の結婚をした時も、それに関する写真や記事は即座に削除の対象となった。

最新の独立系オンラインメディアに対する弾圧は6月1日に発生した。「ペスカニック」が、ヴチッチの側近ネボイシャ・ステファノヴィッチ内相の博士号論文に関する3人の大学教授による分析内容を報じたところ、ウェブサイトが突如利用不可能な状態になったのである。同メディアは3教授の分析結果として「ステファノヴィッチ氏の博士論文は盗作」と結論付けていた。(原文へ

翻訳=IPS Japan

 

 

 

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