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INPS JAPAN   IDN-InDepthNews - UN INSIDER

イスラエルの兵器庫、核兵器削減交渉担当者たちを苛立たせる

【国連IPS=ハイダー・リズヴィ】

 

国際連合では1ヶ月間に亘って核不拡散条約(NPT)運用検討会議(5年毎に開催)が行われており、その中でジョージ・W・ブッシュ政権は、イラン、北朝鮮における核兵器開発疑惑に対する国際社会の監視を強化しようとしている。一方、他の加盟国の中には、イスラエルの所有する核兵器が中東地域に非核地帯(Middle East nuclear-free zone)を構築しようとする国際的な試みに及ぼす影響について強調する国々もある。

「確かに、イランや北朝鮮が核兵器を所有しようと野望を抱いていることに関して、ブッシュ政権が表明している懸念に賛同する部分もあります」とアラブ諸国や途上国から参加している外交官たちは語った。

しかし、過去2週間に亘って展開された公開討論では、各国の発表者から(イラン、北朝鮮対策のみならず)イスラエルに対しても核兵器開発計画を断念させ、中東地域に非核地帯を設定するよう、国際社会の協力を強く訴える発言が相次いだ。

「核兵器の存在は、その周辺地域のみならず世界の平和にとって障害となるものです」カタールの外交官ナスル・アル・アリは、会場の各国代表団に語りかけた。

「核兵器は中東地域の平和と安全保障にとって大きな障害となるものです」とサウジアラビア代表のナイフ・ビン・バンダル・アル・スダイリは語った。

中東地域に「非核地帯」を設けようとする要求はいくつかの国連総会決議と過去のNPT運用検討会議で合意された諸勧告に起因している。

一方(既に200個~300個の核兵器を所有していると見られる)イスラエルは、周辺のアラブ諸国(その多くイスラエルに対する「敵対国」と認識している)との包括的な平和合意が実現すれば核不拡散条約に加盟する意向である旨を表明している。

「中東非核地帯構想は、我々がこの地域に包括的な和平を実現でき、どの国からも物理的な攻撃やイスラエルの独立国家としての正当性を否定される危険がなくなったならば、イスラエル国民からも大変好意的に受け止められるだろう」と、イスラエルのダニエル・アヤロン大使は語った。

イスラエ外交官たちは、「イスラエルの核兵器は他の国々に脅威を及ぼすものではなく、イスラエルより大きな周辺諸国によるイスラエル侵攻を思いとどまらせる抑止力として機能している」と語った。

「中東における核拡散の本当の危険性は、核不拡散条約に加盟しながらその裏で義務を果たさない国々の存在です。」「これらの国々は、(核不拡散条約締結後も)引き続き中東地域に留まらず世界的な脅威となる大量破壊兵器と弾道ミサイルの入手に余念がないのが現実です」とイスラエル外務省軍縮局のアラン・バーは語った。

「イスラエルは、近隣諸国を威嚇したことはないし、イスラエルが締結した軍縮条約が課する義務を破棄したことはありません」とバーは語った。

一方、アラブ諸国の外交官はこれらのイスラエルの主張を真っ向から否定した。

「平和は大量破壊兵器を所有することで実現できることではありません」とスダイリは語った。「本当の平和は他者への信頼、信頼に対する責任、そして善意に基づいて構築されるものでなくてはなりません。すなわち、平和は中東地域を不正義と占領と侵略行為から開放することによって、はじめて実現できるのです」

しかしながら、イスラエル寄りの核問題専門家は、「イランは中東地域における核拡散問題の最大の不安定要因となっている」と語った。

「今日我々が直面している問題は、現在の核不拡散条約体制の維持が、イランによって脅かされているかどうかという問題であって、中東非核地域がすぐに実現可能かどうかという問題ではない」と、米国に拠点を置くヘリテージ財団のシニア分析官アリエル・コーエンは語った。

「(中東非核地域構想は)確かに将来いつか可能となる重要な問題かもしれない。しかし、インド、パキスタン両国に続いて北朝鮮が核不拡散体制を打破し、現在のNPT体制に重大な脅威を与えているのは目の前に迫った現実なのです」とコーエンはIPSの取材に対して語った。

1998年に核実験を実施したインド、パキスタン両国は核不拡散条約への批准を拒否していた。また北朝鮮は、核兵器開発を断念させようとする米国の圧力に対抗して、2年前に同条約を脱退している。

「もしイランがNPT体制を無視して核兵器所有に踏み切った場合」とコーエンは語った、「中東全域にドミノ現象を引き起こしトルコ、サウジアラビア、エジプトが核兵器所有に踏み切るだろう。そうすればその時点で、イスラエルは従来の核兵器所有に関する曖昧なスタンスを撤回し、核兵器を緊急体制に即応できる態勢を整えるだろう。」「これこそ、イランの核所有が引き起こしうる、『より不安定な』中東地域現出のシナリオである」


オーエンのこの中東における核拡散に対する懸念については、米国に拠点を持つ多くの独立系研究者やアナリストも同様の懸念を抱いているが-彼らの場合、(中東の核拡散の原因を)かなり異なった側面から捉えている。

「世界的によく知られていることだが、中東諸国の兵器開発プログラムの大半はイスラエルの核武装に対抗して始められたものである」と、リベラル系シンクタンクカーネギー財団不拡散プロジェクト代表で「Universal Compliance: A Strategy for Nuclear Security」の共同執筆者ジョセフ・シリンシオーネは語った。

「イスラエルが核兵器を既に所有していることは誰もが知っている公然の秘密です。イスラエルにこの問題を公式に認めさせ、それを中東和平交渉の議題の一部として交渉のテーブルに乗せることが、他のアラブ諸国に、各々の地下施設で核兵器開発を進めることを思い止まらせる唯一の方法かもしれないと思います」とシリンシオーネは語った。

シリンシオーネは、「そのような合意に持って行くことは容易なことではないが、それでも、我々は時間を無駄にすることなく、そのような努力をしていかなければならない」と語った。

シンシオーネは、現在中東で進行している外交交渉の流れはブッシュ政権にとって好機ととらえており、「今こそ、(ブッシュ政権は)中東地域から核兵器を廃絶する外交努力を強化する時期にきている」「イスラエルにとっても、核兵器を所有する国が皆無の中東地域の方が多くの核兵器所有国が存在する中東地域よりも好ましいはずだ」と語った。

しかし米国の外交当局との取材では、(シンシオーネの提言するような)具体的な方向性は見出せなかった。

「私達の立場は一貫している」と米国国連代表部の担当者は語った。「我々はイスラエルに対して核不拡散条約に加わるよう強く働きかけてきた。我々は長年に亘ってイスラエルの防衛施設に関して懸念を持っている」つまり、担当者が回答の意味するところは、米国政府としては中東地域に非核地域の必要性を認めるが、現時点でイスラエルを何が何でも説得してNPTに署名させる意図はないということである。

1990年代、米国、イスラエル、アラブ諸国は一致して核不拡散の目的を支持していたが、パレスチナーイスラエル和平プロセス崩壊後は、核不拡散に向けた具体的な進展を3者間で進めることはなかった。

今回の核不拡散条約定期会合に参加した各国代表団の多くは、「米国がイランの核開発疑惑を各国間の核拡散議論の中心に据えようとする一方、イスラエルの非合法な核兵器所有に関しては眼をつぶっている現状を引用して、『米国の核政策はダブルスタンダート(2重基準)と偽善に基づくもの』と結論付けざるを得ない」と語った。

シリア大使のファイサル・マクダッドは、シリアをテロ支援国として非難している米国に言及して「核兵器に反対を唱える国々の中には、イスラエルを擁護し中東に非核地域を妨害している国がある」と語った。

しかし、アラブ諸国の外交官たちは米国の役割に失望感を表明しながらも、積極的に核不拡散条約をレビューする定期会合における交渉に参加している。その中でも、非同盟運動加盟の115カ国を代表して参加しているエジプトは、指導的な役割を果たしており、現在各国に対して、過去に非核地域構想に関して決議した内容を実施に移す下部組織を設立するよう強く求めている。

「この定期会合で、中東に非核地帯の構築を保障する現実的なロードマップを作成すべきである」とエジプト代表のアーメッド・ファタラーは各国代表団に語った。

一ヶ月に亘って行われている協議は5月27日に閉会する予定である。参加している各国の外交官の中で、今回の協議を通じて中東問題やその他各国が抱えている重要議題で大きな進展を期待していると答える者はほとんどいなかった。にも関わらず、彼らは中東非核地域構想を今後も議題に乗せ続けるだろう。

「イスラエルを協議の席につけなければならない。」と、マクダッドは言う。「我々は(中東非核地域抗争を)諦めるつもりはない。今後もこの構想を協議しつつけているだろう。(原文へ

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩