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IPS創立50年、血の流れないトップ記事

Inter Press Service【IPS=タリフ・ディーン】

かつて国際連合児童基金(ユニセフ)の事務局次長も務めたターヅィー・ヴィタッチ氏が、あるアフリカの外交官が彼を事務所に訪ねてきて、自国の首相の国連総会での演説内容を、どうやったら米国のメディアに取り上げてもらえるかアドバイスを求めてきた時のエピソードを詳しく語ってくれたことがある。

ヴィタッチ氏の友人であったその外交官は、「我が国の首相は、貧困や飢餓、HIV/AIDSとの闘いに関するサクセス・ストーリーについて語るつもりです。」と打明けたうえで、「どのようにしたらその内容をアメリカの新聞の一面に載せることができるでしょうか?」と尋ねてきたという。

Tarzie Vittachi/ UNICEFこれに対して、当時「ニューズウィーク」誌のコラムニスト兼特約寄稿編集者だったヴィタッチ氏は、「(その首相を)撃ち殺しなさい。そうすれば全米の紙面のフロントページに大々的に掲載してもらえますよ。」と冗談交じりに返答したと語ってくれた。実はヴィタッチ氏自身、本国スリランカでは「伝説的な編集者」と評されていたジャーナリストで、長年に亘って「ほとんどの欧米メディアは、貧困、飢餓、妊産婦死亡等、国連加盟国の3分の2以上の国々の人々を悩ませている諸疾患について、深く洞察した取材記事を配信しようとしない」と嘆き、「これらのテーマは、大半のニュース編集室(報道局のスタジオ)にとって(報道するには)魅力に欠けるものなのだろう」と語っていた人物である。

古くからあるタブロイド・ジャーナリズムの格言に、「血を流せば、トップ記事になる」。(If it bleeds, it leads.)というものがある。

しかしインタープレスサービスIPS)は、この50年に亘る報道活動の中で、主流メディアに長らく無視されてきた、「セックスやスキャンダルを扱っていないため魅力に欠けるとされる(=Unsexy)」ストーリーや、「血が流れない(=Un-bleeding)」ストーリーをトップ記事にしてきた。

IPSが1964年の創立から今年で50年周年を迎える中、貧困や飢餓、人口、子ども、ジェンダーエンパワメント、教育、保健、難民、人権、軍縮、地球環境、持続可能な開発といった、国連の課題における社会・政治・経済問題に主要な焦点を当ててきたIPSの報道姿勢に、様々な方面から称賛の声が寄せられている。

UN Secretary General Ban Kimoon/ UN photo国連の潘基文事務総長は、IPS創立50周年記念に寄せて、「IPSは、経済開発に関するハイレベル交渉から、保健衛生の改善に取り組む現場でのプロジェクトに至るまで、途上国にとっての関心事に弛まず注目してきました。国連が課題の中心に据えている諸問題について、世界的な規模で世論を喚起してきたIPSの活動に感謝を申し上げるとともに、IPS報道の影響力が今後さらに大きくなることを望んでいます。」と語った。

IPSは、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントを強化するために新たな国連機関の創設を求める、世界の指導者や活動家、女性団体による長年に亘ったアドボカシー運動の先頭に立った。

Lakshimi Puri/ UN PhotoUNウイメン」のラクシュミ・プリ事務局長代理(国連事務次長補)は先週、持続可能な開発と女性のエンパワーメントに関する集中的な報道をしたとしてIPSを称賛した。

「IPSは、社会、経済、環境などのあらゆる側面において持続可能な開発に資するような、情報、知識、コミュニケーションのより民主的で平等な新秩序を実現するうえで、先導的な役割を果たしてきました。」

「UNウイメン」は国連体系内部におけるジェンダー平等や女性のエンパワーメント、女性の人権に関する新機構として既存のジェンダー関連4機関を統合して誕生したが、IPSはこの新機構創設を訴える運動において積極的な役割を果たした。

UN Women「私たちはIPSとパートナーシップを組んで、(UNウイメン創設という)21世紀の人類にとって最も重要なプロジェクトを推進しました。IPSは、継続的に説得力のある報道を展開して、当初孤立していたジェンダー平等と女性のエンパワーメントに対する政治的な支持を動員しようとする私たちの運動を強力にサポートしてくれました。」

「IPSは、途上国の協力組織77カ国グループ(G77、加盟133カ国)においてジェンダー視点を主流化しようとする私たちの取り組み、とりわけ2014年6月のG77サミットにおけるサンタクルス宣言『よりよく生きるための新たな世界秩序に向かって』と、5月の歴史的なプレサミット会議『新世界秩序に向けた女性の提言』への協力を通じて、開発問題に対する揺るぎないコミットメントを示しました。」

「またIPSは、『メディア・コンパクト』のパートナーとして、私たちが(北京女性会議で描かれたビジョンにもう一度息を吹き込む目的で)「女性をエンパワー、人間性をエンパワー:絵に描いてみよう。」のスローガンのもとに進めているパブリックキャンペーンに参画し、「北京+20」に向けた取り組みを全面的に支援してくれています。」

「IPSはこの半世紀にわたって、現場の最前線における豊富な取材経験をもとに、勇気をもって真実を報道し、人類のあらゆる取り組みに関して、時には考え方を根本から変えるような客観的な見識と政策的視点を提供してきました。IPSには、これからの50年についても、引き続きダイナミックな進化を遂げながら、女性と女児にとってよりよい世界の実現を目指す私たちのパートナーであり続けてほしいと望んでいます。」とプリ事務局長代理は語った。

IPSはまた、長年にわたって、開発と軍縮問題、とりわけ核軍縮に関する報道を重視してきた。

Jayantha Dhanapalaジャヤンタ・ダナパラ元国連事務次長(軍縮問題担当)は先週、「IPSの創立50周年記念が(同年に誕生した)G77と、国際連合貿易開発会議(UNCTAD)とともに祝われていることには特別の意味合いがあります。」と語り、3つの組織がいずれも南の世界(=開発途上国)と密接な繋がりを持ってきた点を強調した。

「IPSは、(G77とUNCTAD等による発展途上国の経済開発促進と南北問題の経済格差是正を求める)こうした重要な動きに声を与え、それまで先進国の一部の通信社が独占していた国際報道体制に対する挑戦者として台頭してきてきました。」

「50年前の1964年、ロベルト・サビオ博士とパブロ・ピアチェンティーニ氏は、資金調達や不公正な競争という難題をものともせず、それまで先進国の主流メディアからは見向きもされなかった途上国の才能豊かなジャーナリストたちとともに、インタープレスサービスを創設しました。」

The atomic bomb dome at the Hiroshima Peace Memorial Park in Japan was designated a UNESCO World Heritage Site in 1996. Credit: Freedom II Andres_Imahinasyon/CC-BY-2.0「私は、国連で平和や軍縮といった分野に長年携わってきましたが、IPSが、軍縮、とりわけ核軍縮の大義を支持してきたこと、全面的かつ完全な軍縮を達成するうえで、大量破壊兵器を廃絶し通常兵器を現在のレベルよりも削減するような『核兵器のない世界』の重要性に焦点を当ててきたことに、個人的に感謝しています。」

「核廃絶が達成されて初めて、平和や安全保障の問題が、開発や人権とつながり、集団的で協調的なグローバル安全保障に結実するのです」と、「科学と世界問題に関するパグウォッシュ会議」(1995年ノーベル平和賞受賞)の議長であり元スリランカ大使のダナパラ氏は語った。

UNDPI国連が2004年に「今年の世界でもっとも報道されなかった10のニュース」という新シリーズを立ち上げた際、IPSは国連が選んだ10大ニュースのうち少なくとも7つ(アフリカのエイズ孤児、平和をつくる女性たち、無国籍者をとりまく知られざる世界、平和のための警察活動、少女兵士、先住民族、障害者条約)を報道していて、数ある国際通信社の中で断然トップの位置にいた。

Shashi Tharoor当時このシリーズを始めた元国連事務次長・国連広報局長のシャシ・タルール博士は、大手主流メディアが取り上げないストーリーを報道してきたIPSの役割について、先週詳しく語ってくれた。

タルール博士は、「私はIPSの30年来の読者で、国連で広報局長を担当していたころには、IPSと密接に協力し合って仕事をしました。」と指摘したうえで、「私は、IPSが世界の主流メディアがしばしば無視する様々な問題を綿密に取材し報道していることから、発展途上国世界に関するニュースと知見を得るのに有益な情報源だと考えています。IPSの記者たちは、職業的に最高水準のジャーナリズムを、南の世界(=発展途上国)にとってとりわけ関心事となっている問題を報道する組織的な取り組みと結び付けてきました。」と、現在はインド連邦議会の下院議員(ティルヴァナンタプラム選出)を務め、また多産の作家で『ゾウ・トラ・携帯電話』の筆者でもあるタルール博士は語った。

さらにタルール博士は、「IPSが報道する記事は、世界の途上国で起きていることにつねに接していたいと望む読者らにとって、不可欠のものです。」と、語った。

UNCA最近では、IPSは国連特派員協会による年間の賞を3度受賞している。「優秀な国連報道」を行ったとして、1997年には銅賞(ワシントン・ポストと同時受賞)、2012年と13年には金賞(そのうち1回はAP通信と同時受賞)を受けている。

さらに、IPSのガレス・ポーター記者は、2012年に「マーサ・ゲルホーン・ジャーナリズム賞」を受賞している。過去の受賞者には、ガーディアンインデペンデントサンデー・タイムズ、ウィキリークスなどがある。

開発報道に対する賞を毎年授与している米国ワシントンDCに本拠を置く「人口研究所」は、IPSを、人口と開発の報道における「もっとも良心的な通信社」として特筆している。

IPSは1990年代に9つの賞を受けた。時にはロイターやAP通信にかなわないこともあるが、毎年のように主要な通信社を差し置いて受賞している。

Barbara Crossetteニューヨーク・タイムズ』の元国連支局長(1994~2001)で、現在は『ネイション』誌の国連特派員、『パスブルー』のライター及び編集委員でもあるバーバラ・クロセット氏は、「私はIPSの記事を毎日読んでいる多くのジャーナリストの一人です。その理由は、一つには国連における出来事や人物に関する洞察を把握したいという動機もありますが、恐らくそれよりもむしろ、IPSが途上国世界からの視点で取材分析した世界のニュース報道を読みたいという気持ちの方が強いと思います。」と指摘したうえで、「最近の米国や欧州の出版・放送業界では、国連に関する報道が、これまでよりも一層低調なものになっています。私はIPS報道の中に、大半の欧米メディアで見かける論調とは異なる、時には論争を呼ぶような記者らによる視点や解説に出会うのを楽しみにしています。」と語った。 

Oxford University Press「国連内部からの報道に関して言えば、国連における女性に関する問題やその国際的な活動を注意深く追ってきたIPSの報道は、一貫して際立っていると言えます。」そう語るクロセットは氏、(本記事の冒頭に紹介した)2007年のヴィタッチ氏の逸話を、オックスフォード大学出版から出された『オックスフォード国連ハンドブック』の中で紹介している。

「UNウイメンという組織とそこに従事する人々、そしてこの組織が直面している諸課題についての客観的な分析を踏まえて、女性が開発の中心的な役割を果たさねばならないことが明らかになっている今の時代において、加盟国がこの新しい国連組織の機能を強化していくためにどの程度の取り組みをなすべきなのかを率直に報じています。この点においてIPSほど信頼性のある報道を行っているところはありません。」と、『ニューヨーク・タイムズ』バンコク支局長(1984~88)、デリー支局長(1988~91)を歴任したクロセット氏は語った。 

IPSは「社会的責任を負う」報道機関と評されることもあるが、世界の市民社会と非政府組織(NGO)の大義を一貫して後押ししてきた。

James Paul19年にわたって国連政治を監視してきた「グローバル政策フォーラム」(ニューヨーク)のジェームズ・ポール事務局長は、「この半世紀にわたってIPSは、グローバルな正義を追及する運動に多大なる貢献をしてきました。」と指摘したうえで、「今日では、1964年当時の世界を想像するのは難しい。当時は、植民地主義が終焉を迎えつつあり、民主主義的な精神が新たな潮流として台頭し、既存の体制変革を求める世界的な運動が展開されていた時代でした。」と語った。

ポール氏はまた、「IPSは、一部の先進国が情報の流れを独占していた状況を打破し、当時の新たな時代精神を反映したアプローチを国際報道にもたらす目的で立ち上がりました。そしてまもなく、世界各地で民主主義や正義、平和のために活動している人々、つまり、時の権力者に追従する不毛なジャーナリズムに対抗するオルタナティブメディアを必要としていた人々を大いに鼓舞し、(彼らの間で)名誉ある地位を獲得したのです。」と指摘したうえで、「IPSのその後半世紀にわたる報道活動を見ると、世界情勢を調査・分析する際の真摯な姿勢、誠実な考察、徹底して正義を追及する記者の視線など、創業精神が頑固に貫かれていくことが分かります。私は日々目にするジャーナリズムの中で、IPSが突出して優れていると考えています。」と語った。

IPSさらにポール氏は、「私は、IPSが、もっとも暗い時代にあっても、常に根本的な問題を報道し続け、読者に歴史の記憶を想起させ、しかもユーモアや希望、可能性を考えさせる取り組みをしてきたことに感心していす。私たちは、人権や経済的正義、平和と追求していく際には、IPS報道をまさに時代を映す「第三の目」として誇りを持って使用できると考えています。」と語った。

「今日、報道は半世紀前のように一部の国際通信社が独占しているような状況ではありませんが、途上国と先進国の双方において、報道の提供者が依然として、権力者の報道官や宣伝人であるというケースが少なくない現実があります。」

「したがって、IPSの重要性は明らかに以前よりも増しているといえます。つまり(情報をより民主的で一般参加型のものにし、声なき人々の声を代弁するというIPS創業以来の)闘争は今後も続いていくということです!(A luta continua! ) 私は、IPS創設者のロベルト・サビオ氏と、彼とともに長年にわたってIPSを支えてきた多くの才能豊かな人々に拍手を送りたい。とりわけ、IPSの創立精神を体現し、国連で起こっている様々な出来事を丹念に報道し続けてきたIPSの国連報道班に拍手を送りたい。私たちは、IPSからの一連の報道を必要としています。誕生日おめでとう、IPS!」とポール氏は語った。

Cora Weiss 国際平和ビューローの元会長でハーグ平和アピール代表のコーラ・ワイス氏は、「日々、IPSやニュースレター「TerraViva(地球万歳)」が、他の場所では読めないニュースを提供してくれています。IPSの報道は、世界各地の声なき声に光をあてたニュースであり、私たちの幸福と生存のために極めて重要な問題を取り上げたニュースなのです。」と語った。

ワイス氏は、「私は、IPSが世界の女性が直面している諸問題、平和への脅威、核兵器とその廃絶に向けた政策、島嶼や島嶼住民に影響を与える気候変動、その他多くの課題について報道してくれていることに感謝しています。引き続きIPSの活動に大きな期待を寄せています。」と語った。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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