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|イスラエル-パレスチナ|愛国心と良心から沈黙を破る元兵士たち

BTS takes on a tour of Hebron where they learn first hand about the life under occupation/ Mel Frykberg  of IDN【ヘブロンIDN=メル・フリクバーグ】

ヨルダン川西岸地区(ウエストバンク)南部の中心都市で聖書にも登場する古都ヘブロンは、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教のいずれにとっても聖地であり、歴史的、考古学的、宗教的に重要な遺跡が街の至る所に点在している。

しかし、絵のように美しい丘陵地に細い路地が縦横に巡るこの街の佇まいを一見しただけでは、この街が抱える辛く血塗られた歴史や緊張感は伝わってこないだろう。

City of Hebron/ Wikimedia Commonsこの預言者アブラハムの街には現在25万人以上のパレスチナ人が暮らしている。一方、1000人足らずのユダヤ人入植者が、この街の中心部で数百人のイスラエル軍の兵に守られながら、極めて険悪な雰囲気の中で暮らしている。

この数十年の間、両者間の憎悪はしばしば暴力と流血の惨事を引き起こしてきた。

1994年にはユダヤ人入植者で医師のバールーフ・カッペル・ゴールドシュテインがアブラハムモスクで礼拝中のパレスチナ人29人を殺害する乱射事件を引き起こし、その後起こった暴動や襲撃でユダヤ人入植者、パレスチナ人双方で多数の死傷者がでた。

イスラエル軍による占領の影響で、ヘブロン中心街の市場周辺で暮らしていた多数のパレスチナ人が職場と家を失ったほか、かつて賑わっていたシュハダ通りも封鎖され、パレスチナ人の通行が禁止されている。

Israeli Soldiers/ Breaking the Silenceまたイスラエル軍治安部隊は、様々な人権擁護団体から、パレスチナ人を虐待し無益に殺害しているとして非難されている。

ここヘブロンで、パレスチナ人とイスラエル人による2つの平和団体が正義のために協力し合い、イスラエル人と外国人を対象に占領下の人々の生活について情報を伝える活動を始めたのはこうした背景からである。

BTS(Breaking the Silence:沈黙を破る)は、2000年10月に始まった第二次インティファーダ以降に占領地パレスチナで軍務経験をしたイスラエル人の若者達が結成した平和団体である。

BTSBTSでは、メンバーの元イスラエル軍兵士たちが、イスラエル市民や観光客を対象にヘブロンの街を案内し、占領下の(パレスチナ人の)人々が直面している現場の現実について説明している。

「私たちは、若い兵士たちが日々占領地の民間人と対峙し、住民の日常生活を支配する任務に従事しなければならない現実と引き換えに、どのような代償を払わされているかについて、国民的な議論を促したいと努力しています。」とBTS広報担当のアキヤ・シャッツ氏はIDNの取材に対して語った。

「私たちはツアー参加者に対して、占領政策の被害者はイスラエル人ではなくパレスチナ人だと説明しています。」

元兵士であるBTSメンバーの多くが、占領軍として任務に従事していた頃にパレスチナ人に対して行われた数々の虐待を覚えている。

「ある時、私たちの部隊は『テロリスト』と考えていたパレスチナ人の家をめちゃくちゃに壊し、容疑者とその妻を痛めつけたうえ、通りに引きずり出したことがあります。」をシャッツ氏は当時を思い出しながら語った。

「しかしあとになって、相手を間違えていたことが分かったのです。私たちが探していた容疑者はその2軒先の住民でした。」

シャッツ氏はまた、当時の部隊長がシャッツ氏のチームが「テロリスト」を殺害できなかったことに失望していたのを覚えている。

BTSに集った元兵士達の証言内容には、シャッツ氏の経験よりも遥かに酷いものも少なくない。シャッツ氏は、「私の経験はヘブロンに駐留している占領軍兵士に限ったことではありません。ウエストバンクの占領地全域を通じて、一部のイスラエル軍兵士がパレスチナ人住民に対し示す普段の態度なのです。」と語った。

またBTSのメンバーらは、イスラエル市民に対して占領の現実を知らしめる活動のほか、パレスチナ人、とりわけパレスチナ人活動家との懸け橋となることを重視している。

「私たちはパレスチナ人にイスラエル人を紹介することを重視しています。なぜなら、こうすることが、固定観念を打破するのに役立つからです。こうしたイスラエル人にとって、個人的に直接パレスチナ人と会うのは、(BTSが仲介したこうした機会が)初めてという場合が少なくないのです。」

BTSでは、こうした観点からパレスチナ人の平和団体「入植地に反対する若者たち(Youth Against the Settlements:YAS)」と協力して活動している。

YASはパレスチナにおけるイスラエルによる植民活動(ユダヤ人入植地の建設・拡張政策)を、非暴力による民衆闘争と市民的不服従を通じてやめさせようと活動しているパレスチナ人による無党派組織である。

「私たちは、多くの活動について、イスラエル人団体(BTS)と協力し合っています。例えば、ツアーや抗議活動等のコミュニティアクション、人権侵害に関する啓蒙活動やイスラエル人にパレスチナ住民の生活の実態を紹介する活動などについて、BTSのメンバーとともに現場で話し合って計画を立てるようにしています。」とYAS広報担当のイッサ・アムロ氏はIDNの取材に対して語った。

「パレスチナ人活動家とイスラエル人活動家が占領政策に反対して団結し、協力し合うことを、私たちはコ・レジスタンス(co-resistance:共に抵抗する活動)と呼んでいます。」

Foreigners and Israelis on a tour with Il Amim learn about life in East Jerusalem under occupation/ Mel Frykberg of IDN 「多くのパレスチナ人とイスラエル人が、こうした協力活動への参加を通じて相互理解を深め合い、友情を育むようになっています。また両者のこうした姿は、パレスチナ人の間に、自分たちのことを大事に考えてくれるイスラエル人もいるのだという希望をもたらしているのです。」とアムロ氏は語った。

2004年に設立されたNGO「イル・アミーム(Ir Amim:「民の街」の意)」も、占領下のパレスチナ人と協力して東エルサレムの入植地問題に取り組むイスラエル人による平和組織である。

イル・アミームは、パレスチナ人のNGO「平和と民主主義フォーラム」とともにエルサレム政策フォーラムを設立した。

このグループは、イスラエル議会とエルサレム市当局に対して、同市の安定を脅かしたり市民の平等を阻害したり、あるいはイスラエル-パレスチナ間の和平交渉の行方を脅かすような行動について情報提供を行っている。

また当局に対して、東エルサレムの全ての住人の尊厳と福祉に対する配慮を求めるとともに、市内に点在する聖地における歴史文化財の保護に取り組んでいる。

イル・アミームの教育普及啓蒙活動は、主に一般のイスラエル市民に向けられたもので、東エルサレム問題に関するイスラエル社会全般の議論を再構築することを目的としている。

そこでこのグループは、一般市民を対象とした、メディア作品の制作をはじめ、スタディツアーや説明会、ハウスミーティング、教育プログラムの実施を通じて、実際に(東エルサレムの)現場で起きている出来事とそれらがイスラエル社会にどのような影響をもたらすかについて、冷静に分析するよう求めている。

イル・アミールによるスタディツアーに参加したスウェーデン人観光客のアミ―・カールソン氏は、「私はこれまで東エルサレムが西エルサレムと比較していかに不利な状況に置かれているか全く知りませんでした。今回イル・アミールの方から、東エルサレムが、西エルサレムが享受している市当局からの予算のほんの僅かな一部しか得ていないことを知りました。実際に東エルサレムを回って、町中にゴミが散乱し、街灯が不足し、標識がほとんどない惨状を目の当たりにして、この(パレスチナ人)地区がいかに当局からおざなりにされているかがよく理解できました。それとは対照的に、同じ東エルサレムでもユダヤ人入植地に関しては行政のケアが行き届いていたのが印象的でした。」とIDNの取材に対して語った。

このように平和のために協力し合っているイスラエル人とパレスチナ人が相互に有意義な体験を育んでいる一方で、シャッツ氏をはじめとした元イスラエル軍兵士たちは、個人のレベルでこうした人権活動に関与している代償を払わされているのが現状である。

「私は、これまでに殺害の脅迫を受けたり、軍務についていた頃のかつての同僚たちから裏切り者呼ばわりされたりしてきました。しかし、祖国イスラエルを心から愛しつつ、一方で間違っている占領政策は憎むということは可能だと確信しています。こうした脅迫や侮辱は、この信念を貫徹するための代償として、甘んじて受け入れる覚悟です。」とシャッツ氏は語った。(原文へ

翻訳=IPS Japan

*イスラエル人とパレスチナ人の有志グループが、時勢に逆らい、偏狭な利害を乗り越えて、深く対立する双方のコミュニティーに対して、自らが変わることで解決の一部になれるという働きかけを辛抱強く行っている姿(-「世界市民」の概念を地域で実践している好例-)に焦点をあてた記事。

 

 

 

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