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大統領拒否権をちらつかせるも、核軍縮を制限する法案が下院を通過

【ワシントンGSN

 

共和党が多数を占める米下院本会議は5月18日、バラク・オバマ大統領が核兵器削減を進める権限を制限することとなる、2013年度国防権限法修正案を可決した。

オバマ政権は15日の段階で、既に下院軍事委員会が可決していた修正案について、あまりにも多くの制限条項が含まれており、そのままでは最終的に大統領が拒否権を発動せざるを得ないだろうという声明を出していた。にもかかわらず、同修正案は下院本会議で可決される結果となった。


米下院では17日より、2013年度(2012年10月~2013年9月)国防予算の大枠を決める国防権限法案に関する140を超える改正試案が審議され、18日午後、同法案は賛成299票、反対120票で可決された。

 
下院軍事委員会が可決していた修正案では、オバマ政権が要求していた5510億ドルを上回る5540億ドルが国防予算として計上されていた。これに対してホワイトハウスは15日、「下院軍事委員会の修正案は、財政の健全化をはかるために大統領と議会による超党派合意で成立させた2011年財政管理法(Budget Control Act of 2011)に、違反するものである。」との声明を出した。

これから上院の軍事委員会が国防権限法案の審議を行うことになっており、今回下院を通過した法案は、最終的には米上院を通過する法案との擦り合わせがなされることになる。

米下院は18日、デニー・レーベルク議員(共和党、モンタナ州選出)とシンシア・ラミス議員(共和党、ワイオミング州選出)が提出した、ロシアとの新戦略兵器削減条約(新STARTに記載された核兵器削減を進める上で、オバマ政権の権限を制限する修正案を、賛成238票、反対162票で可決した。修正法案の要約版によれば、次のような禁止内容が盛り込まれている。すなわち、国防長官が、「新STARTの制限を遵守するためにロシアの核兵器をさらに削減する必要があること」また、「ロシアが新STARTの制限枠外で核兵器運搬システムを開発したり配備していないこと」を保障しない限り、「米国の戦略核戦力の三本柱(ICBMSLBM、及び核爆弾が搭載可能な戦略爆撃機)の規模を縮小してはならない。」というものである。

昨年発効した新STARTは、米露両国に対して2018年までに、配備された戦略核をそれぞれ1550発まで、運搬手段を700まで制限するよう義務付けている。

18日朝に修正案の説明に登壇したラミス議員は、「新STARTは米国にとってとんでもない取決です。」と語り、その問題点として、「同条約は、事実上米国が保有している核兵器に制限を加える一方で、ロシアに新規核弾頭の開発を許す内容になっている。」と主張した。2012年3月1日現在、ロシアの配備済戦略核弾頭の総数は、条約が上限としている1550発を(50発以上)下回っている。

もっともホワイトハウスは、下院本会議が修正案を可決する以前に、下院軍事委員会が可決していた修正案の中に、大統領が新START合意内容を履行していくうえで障害となる制約が多く含まれているとして不満を表明していた。ホワイトハウスは15日に出した声明には、そうした条項は、「オバマ政権が新STARTを履行する遂行能力」並びに「オバマ大統領が未配備核を退役、解体、廃棄する能力」に「やっかいな条件を課すものだ。」と述べられている。

また同声明には、「もし大統領に提出された最終法案にそのような条項が含まれていた場合、大統領上級顧問たちは、大統領に拒否権を行使するよう勧めることになるだろう。」と述べられている。

にもかかわらず、下院本会議は、トム・プライス議員(共和党、ジョージア州選出)が提出したオバマ大統領による一方的な核戦力削減を禁止する条項など、大統領に類似の制約を課すこととなるその他の修正案についても承認した。

また下院本会議は、ダグ・ランボーン議員(共和党、コロラド州選出)が提出した修正案を、賛成244票、反対181票で、可決した。この修正案は、ロシアがシリア政権への支持を止めるとともに、シリア、北朝鮮、或いはイランに対して大量破壊兵器の開発につながる機材や技術を提供していないことが、国防長官によって確認できるまで、「ロシアとの協調的脅威削減(CTR)活動への資金提供を制限する」というものである。

米政府は、過去20年間にわたって、CTRプログラムを通じて、ロシア及び旧ソ連諸国における核兵器やその他大量破壊兵器関連物質の廃棄と確保につとめてきた。

17日には、民主党議員が国防権限法案から米国東海岸に新たにミサイル防衛施設を建設するという議論の的となっていた条項を取り除こうとしたが、多数を占める共和党の反対で失敗に終わった。その項目は、ホワイトハウスが反対していたリスト項目に含まれるものである。
 
現在米国には、敵の弾道ミサイルによる攻撃から本土を防衛する拠点として、アラスカ州とカリフォルニア州に、「地上配備中間飛翔段階(ミッドコース)防衛(GMD)」プログラムに基づく合計2か所の地上配備型迎撃ミサイル(GBI)の発射サイトがある。

ホワイトハウスは15日に行った声明の中で、「下院軍事委員会が可決した修正案の223条には、東海岸にGBIの第三の発射サイト候補地を準備するとされている。」と指摘した。つまり同条項は、国防総省に対して東海岸のGMDプログラムに基づくGBIの発射サイト候補地3か所の調査費として1億ドルの予算を承認し、国防総省は2015年までに候補地を確定して施設を建設するとしている。

これについてホワイトハウスの声明は、「政府は第3のミサイル防衛拠点の必要性を確認していないし、財政が逼迫した状況の中で、その可能性評価もコスト研究も行っていない。米国東海岸にミサイル防衛拠点の設置まで求めた223条の内容は時期尚早である。また、2013年度予算要求の中に第3防衛拠点へのミサイル防衛迎撃ミサイルの配備計画を含むよう求めているが、これは、大統領府の意思決定に対する不当な侵害である。」と述べている。

ジャレド・ポリス議員
(民主党、コロラド州選出)とロレッタ・サンチェス議員(民主党、カリフォルニア州選出)が提出した修正案が可決されていれば、「ミッドコース(中間飛行段階)防衛セグメント関連の予算や東海岸候補地の計画、開発費、その他関連プログラム予算の削減により」同法案で承認される予算を4億300万ドル削減することができただろう。また、GMD関連予算も12億ドルから8億5700万ドルに削減できたはずである。

木曜日の夕方に修正案の説明に登壇したポリス議員は、「これまで15回行われた迎撃実験で、成功したのは8回に留まっている。」と述べ、度重なる失敗に見舞われてきたGBI発射実験に言及した。

ポリス議員は、「ほとんど命中しないミサイル防衛システム計画こそ、納税者のための節約を達成するためにメスを入れるべき項目です。」と語った。またポリス議員は、政府監査院(GAO)が東海岸のミサイル防衛(MD)基地建設計画に対し、「時期尚早」との見解を示している点を指摘した。

「ミサイル攻撃に対して防御できないミサイル防衛システムは、防衛政策とは言えません。」とポリス議員は語った。これに対して、下院軍事委員会戦略戦力小委員会委員長のマイケル・ターナー議員(共和党、オハイオ州選出)は、“Capability Enhancement として知られる第一世代のサイロ式迎撃ミサイルは、3回の実験で3回とも成功していると反論した。さらにターナー議員は、「この修正案は民主党が『我が国の防衛システムの弱体化を狙って』国防権限法案に対して行っている画策の一部である。」と主張した。

また、エドワード・マーキー議員(民主党、アサチューセッツ州選出)、ピーター・ウェルチ議員(民主党・バーモント州選出)、ジョン・コンヤーズ議員(民主党、ミシガン州選出)による、核兵器搭載可能な新型長距離爆撃機の開発を10年間遅らせることで、2億9100万ドルの歳出削減を目指した動きも、下院の多数を占める共和党の反対で阻止された。

修正案の説明に登壇したマーキー議員は、「私たちは1兆5000億ドルもの財政赤字を抱えている中で、新たな戦略核爆撃機は必要ありません。」と語った。マーキー議員はその根拠として、B-52などの現役戦略爆撃機が今後も数十年に亘って現役運用を予定していること、さらに、米軍の戦略ミサイル原子力潜水艦1隻の破壊力だけでも、敵の96都市を壊滅させられるだけの能力を有している点を指摘した。

マーキー議員は、「(現存の攻撃力でカバーできない)都市など、もはや地球上にないのです。」と語り、予算支出は(新規長距離戦略核爆撃機の開発ではなく)、高齢者向け医療保険制度や社会保障、さらには、アルツハイマー病パーキンソン病といった衰弱性疾患の研究に向けられるべきだと主張した。「今日アメリカ国民が恐れているのは、核戦争勃発の恐怖ではありません。ある日突然、家族・親戚の誰かがアルツハイマー患者になったという知らせの電話これこそが、国民が日常生活の中でリアルに感じている恐れなのです。」と、マーキー議員は主張した。(原文へ

翻訳=IPS Japan

 

 

 

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