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開発財源として未開拓な軍事支出

U.S. Army Soldiers assigned to the 2nd-11th Armored Cavalry Regiment (ACR) cautiously advance into a bunker area as they conduct a raid on the Hateen Weapons Complex in Babil, Iraq | Credit: Wikimedia Commons【国連IPS=タリフ・ディーン、2015年12月1日】

持続可能な開発目標(SDGs)が昨年9月に世界の指導者らによって採択され、国連はこの財源として必要な数兆ドルを血眼になって探している。ところが、いまだに開拓されていない豊かな財源があるのだ。それは、世界の軍事支出である。

SDGサミットで演説したカザフスタンのヌルスルタン・ナザルバエフ大統領は、すべての国連加盟国に対して、軍事支出の1%をSDGsの財源として活用するよう求めた数少ない―おそらくは唯一の―国家元首であった。

Kazakh President Nursultan Nazarbayev addressing the UN General Assembly in September 2015 | Credit: almaty.sites.unicnetwork.orgしかし、この呼びかけに対しては、ほとんど、いや全くと言っていいほど反応はなかった。欧州や中東でのテロ攻撃の増加によって各国が軍事支出を減らすどころか増やすことが予想される現況にあっては、特にそうだ。

国連の推計では、世界での貧困や飢餓の根絶など、SDGsを実行しようとすれば、年間3.5~5兆ドル(約432~676兆円)の巨額の資金が必要となる。他方で、昨年の世界の軍事支出は1.8兆ドル(約243兆円)以上ある。

国連の「持続可能な開発解決ネットワーク」(SDSN)は、貧困を根絶しようとするだけでも年間1.4兆ドル(約189兆円)かかるとしている。世界の環境保護、健康の改善、質の高い教育ジェンダー平等持続可能なエネルギーなど、他の目標はここには含まれていない。

Colin Archer/ International Beace Bureau国際平和ビューロー(IPB、本部ジュネーブ)のコリン・アーチャー事務局長は、「世界の軍事予算を使うオプションがまたもや検討すらされなかったことは残念です。」とIPSの取材に対して語った。

アーチャー氏はまた、「『戦争なき世界』というビジョンのために邁進する300以上の加盟組織を抱えるグローバルなネットワークであるIPBは、10年以上もこの問題を取り上げてきています。」と指摘したうえで、「こうした観点は、来年ベルリンで開催される大きな国際会議で展開されることになります。」と語った。

IPBは、加盟国が軍事予算を毎年10%減らし、それを2030年までのSDGsの期間に社会・環境面の支出に振り向けるよう求めるキャンペーンを行っている。

「この設定は、穏健派やリアリストを参加させるための十分に練られた穏健な数字になっています。」とアーチャー氏は語った。

この提案の現実性についてアーチャー氏は、「これまでに、数多くの国連決議(1987年の国連軍縮開発特別総会)、多くの優れた演説(ドワイト・アイゼンハワー大統領など)、多くのリップサービス、いくつかの優れた分析(ルース・シバードストックホルム国際平和研究所シーモア・ヘルマンなど)がありましたが、実行には移されませんでした。」と語った。

ICAN東西冷戦期には、核危機の緊急性に圧倒されて、支出問題は語られなかった。もっとも、その核危機自体は、部分的には軍事支出によってもたらされたものではあるが。

この問題には長い歴史があるが(19世紀半ばにまでさかのぼることもできるが、実際上は第一次大戦後)、「軍事支出に関するグローバルキャンペーン」(GCOMS)が、世界規模で組織された最初のものであろう。

ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によると、2014年の世界の軍事支出国トップ6は、米国(6100億ドル)、中国(2160億ドル)、ロシア(845億ドル)、サウジアラビア(808億ドル)、フランス(623億ドル)、英国(605億ドル)である。

先週、英国政府は軍事予算の拡大を発表して、これまでの削減方針を反転させた。デイビッド・キャメロン首相は、今後10年間で軍事予算を180億ドル増加させることを明らかにした。

Dwight Eisenhower/ Wikimedia Commonsアイゼンハワー大統領は1953年4月、米国新聞編集者協会での有名な演説で、「製造される銃の一丁、就役する戦艦の一隻、発射されるロケットの一発が、究極的には、飢餓に苦しみ食べ物を与えられない人々や、寒さに苦しみ服を与えられない人々からの盗みとったものを意味するのだ。」と指摘したうえで、「武装する世界は、単にカネを消費しているだけではなく、労働者の汗を浪費し、すべての科学者の知性を浪費し、子どもたちの希望を浪費しているのです。」「これは、いかなる真の意味においても、正しい生き方とは言えない。戦争の暗雲が立ち込めるなか、人類は鉄の十字架に磔になったも同然です。」と警告した。

軍事支出の一部だけでも、どうすれば開発の資金源に振り向けることができるか、という問いに対してアーチャー氏は、「これは複雑な問題です。私は、議員やマスメディアにプレッシャーをかける強力な市民社会の運動が必要だと考えています。こうした運動こそIPBが苦労して育んでこようとしてきたものです。また、ほとんどの国において、現在よりも左寄りの政府へ政権交代することが恐らくは必要となるでしょう。」と語った。

"T-90 tanks during the Victory parade 2012" by Kremlin.ru. Licensed under CC BY 4.0 via Commons - さらにアーチャー氏は、「巨大な既得権益があり、すべての外部からの脅威に対して軍事的に防衛することをよしとする傾向のある、強力で(しかも成長しつつある)国家主義的な文化が存在します。」と指摘した。

しかしイラクやアフガニスタン、リビアなど(西側諸国が近年軍事介入に踏み切った)数多くの破壊的な冒険がもたらし結果を目の当たりにして、(西側諸国の)世論は少なくとも懐疑的になっている。

IPBは、「世界は巨額の資源を防衛部門につぎ込み、食料や保健、教育、雇用、環境といった基本的ニーズに対する支出をかなり抑えてきた。」と指摘した。

ほとんどの国において、防衛予算と、社会・開発関連予算との間の不均衡は、驚くべきものだ。

しかし、世界を経済危機が襲い、世界の世論が過剰な軍事支出に反対しているにも関わらず、支出の優先順位において諸政府が大胆な転換を図ろうとする兆しは、ほとんど見られない。

UN Headquarters/ K.Asagiri of INPSこの提案を推進するために誰がリードすべきかという問いに対してアーチャー氏は、「国連の潘基文事務総長は『世界は過剰に武装されているが、平和への資金は足りない』と発言しています。しかし、潘事務総長はあまりにも多くの難題を抱えているうえに、これらの軍事大国に立ち向かうにはあまりにも弱い存在です。」と語った。

アーチャー氏によれば、国連軍縮局(UNODA)も潘氏の意見に肯定的であるという。しかし、UNODAも軍縮交渉の流動的な状態に飲み込まれている。

国連総会は毎年この件で決議を採択しているが、実効的な措置がとられていない。「従って、実質的には、市民社会こそが立ち向かっていかなければなりません。」とアーチャー氏は語った。(原文へ

この記事はIPS北米局が、国際協力協議会(GCC)Devnet Tokyoと共同で実施しているメディアプロジェクトの一部。

翻訳=IPS Japan

 

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