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核兵器を巡る現状に判断を迫られる国際司法裁判所

Nuclear weapon test Bravo (yield 15 Mt) on Bikini Atoll. The test was part of the Operation Castle. The Bravo event was an experimental thermonuclear device surface event. Credit: Wikimedia Commons.【ベルリン/ハーグIDN=ラメシュ・ジャウラ】

「核兵器ゼロ」の実現を唱道する側と「核抑止」論に固執する側双方の支持を背景にした国際的に著名な法律専門家チームが参加した10日間にわたる公聴会を終え、国際司法裁判所(ICJ)は、将来にわたって大きな影響を及ぼすことになる重大な判断を迫られている。

とりわけ今年は、核兵器の威嚇と使用に関する違法性が問われ、核不拡散条約(NPT)第6条の規定を踏まえ、「全ての側面での核軍縮に導く交渉を誠実に行い、かつ完結させる義務が存在する」との「勧告的意見」がICJより提供され、核拡散の核心部分である核実験をあらゆる場所で禁止することを規定した包括的核実験禁止条約(CTBT)が署名開放されてから、20年の節目にあたる。

Phon van den Biesen/ Linked-In原告であるマーシャル諸島共和国の共同代理人として出廷したオランダの著名な法律家ファンデンビーゼン氏は、今回の訴訟のテーマについて、「法律的な見地から言えば、(マーシャル諸島共和国が、核兵器国が軍縮義務を怠っているとして提訴した)3件の訴訟内容は一般的なものですが、前向きな結果が出れば、世界を大きく変えることになります。」と語った。

なぜなら今日世界には、15000発を超える核兵器が存在しているからである。「核兵器が使用されれば、山積する地球的な課題に対し、人類がどれだけ努力を尽くしていったとしても、すべて一瞬にして無に帰してしまいかねない。」と、仏教哲学者、教育者、作家で反核運動家の池田大作氏は警告している。池田氏は東京に本部を置く仏教組織・創価学会インタナショナル(SGI)の会長である。

池田会長は今年の平和提言「万人の尊厳 平和の大道」のなかで、「どの地域であれ、ひとたび核兵器が使用され、核攻撃の応酬が始まるような事態が起これば、どれほど多くの人々が命を奪われ、後遺症に苦しむことになるのか計り知れません。」と明言している。

事実、最近の研究によれば、核攻撃の報酬が局地的に行われただけでも、深刻な気候変動が生じることが予測されており、「核の飢饉」と呼ばれる食糧危機が起こるとともに、人間の生存基盤である生態系に甚大な影響が及ぶことへの警鐘が鳴らされている。

Flag of the Republic of Marshall islandマーシャル諸島共和国のトニー・デブルム元外相は、同国政府がICJへの提訴に踏み切った動機について、「私はこの目で核兵器がもたらす惨状を目撃し、核兵器が人類に対して再び使われることがあってはならないと確信しています。核兵器は人類の生存を無差別に脅かす存在であり、核保有国には核軍縮を追求し最終的には廃絶するよう義務づける基本的な規範が存在します。」と語った。

マーシャル諸島共和国のビキニ環礁には、かつて核実験場があった。1945年に核攻撃の惨禍を被った日本の広島と長崎と並んで、マーシャル諸島共和国は、核兵器が引き起こす惨状を身近で目の当たりにした数少ない非核兵器国である。

米国は1946年から1958年の間に、史上最大規模の大気圏内核実験(15メガトン級)となったブラボー実験を含む、67回におよぶ核実験を実施した。

報告書によると、1954年3月1日に実施されたブラボー実験では、米国が核出力の見積もりを誤り、予想をはるかに超えた大気圏爆発により、広範囲にわたって放射能汚染を引き起こした。放射性物質を含んだ降下物は、オーストラリアやインド、日本、果ては米国や欧州の一部にまで到達した。ブラボー実験は秘密裡に実施されたが、被害の規模から瞬く間に国際事件として世界の注目を浴びることとなり、水爆装置の大気圏内実験禁止の声が高まることになった。

マーシャル諸島共和国は、核兵器保有国は、NPTと国際慣習法の下で、核軍縮義務に違反していると主張している。ここで言及されている核保有国とは、NPT加盟国である国連安保理常任理事国(米国、ロシア、英国、フランス、中国)5カ国と、NPT非加盟国(イスラエル、インド、パキスタン、北朝鮮)の4カ国の計9カ国である。

The International Court of Justice in Session/ ICJマーシャル諸島共和国は、これら核兵器を保有している9カ国をそれぞれ相手取ってICJに訴訟を起こした。ところが米国、ロシア、中国、フランス、イスラエル、北朝鮮は、ICJに提訴された場合の裁判受け入れを義務付ける「強制管轄権」を受諾しておらず、マーシャル諸島共和国の訴えを無視した。その結果、「強制管轄権」を受諾していたインド、パキスタン、英国のみが提訴を受け入れることとなった。

3月8日の口頭弁論開始を前に、それまで書面手続きに参加していたパキスタン政府は、ICJに対して口頭弁論には参加しない旨を伝えてきた。パキスタン政府はその理由として、「たとえ口頭弁論に参加しても、既にICJに対して提出済の、マーシャル諸島共和国の訴状に対する反論を記した申述書(カウンターメモリアル)内容に新たに加える内容はないと思われる。」と説明している。

その結果、口頭弁論に参加したのはインドと英国のみとなったが、(パキスタンを含む)3カ国はいずれも、マーシャル諸島共和国による自国に向けられた提訴内容は、ICJの「轄権権や受理可能性(本案審議に進む可能性)」が認められるものではないと強く主張した。

英国は、他のNPT締結国と同様に、第6条が規定する(軍縮)義務を認識しており、軍縮に向けた取り組みを行っていると主張した。一方、インドは、NPTは差別的な取り決めであり、事実上国連安保理常任理事国である核保有5大国による核兵器を近代化する措置を許容している、と主張した。

マーシャル諸島共和国の共同代理人で同国の国際弁護団を率いてきたアムステルダムの弁護士であるファンデンビーゼン氏は、「私たちは基本的にICJに対して、被告の国々(インド、パキスタン、英国)に国際法の下での義務を果たし、あらゆる側面での核軍縮という、必要とされる結果を導くような交渉を行うよう求めているのです。」と語った。

とりわけ、マーシャル諸島共和国はICJに対して、核兵器による威嚇や使用の違法性を認めた1996年の勧告的意見で表明された知見をフォローアップするよう求めている。1996年当時、ICJは、核兵器の合法性を巡る国際的な論争について、国際秩序の安定を脅かしているとの判断を示し、「長らく約束されてきた完全核軍縮こそが、もっとも適切な手段であるかに見える」と述べて(第98段落)、批判に耐えられない(核兵器を巡る)当時の状況に終止符を打とうとした。

マーシャル諸島共和国を支持する国際弁護団は、ICJに対して、少なくとも「厳格かつ実効的な国際管理のもとで、全面的な核軍縮に向けた交渉を誠実に行い、その交渉を完結させる義務がある」とした1996年の勧告的意見を再び表明することを期待している。

Ban Ki-moon/ UN Photo国連の潘基文事務総長は、2009年に発表した核軍縮に関する核軍縮に関する5項目提案のなかで、「すべてのNPT締約国、とりわけ核兵器国は、核軍縮につながる効果的な措置に関する交渉を行う条約上の義務を果たすべき」だと訴えている。

ICJの公聴会に先んじて、(核兵器禁止に向けた具体的な法的措置の問題を話し合うべく国連総会が設置した)公開作業部会(OEWG)がジュネーブにおいて2月22~26日の日程で開催されたが、核兵器の軍縮に関する停滞を打破するには至らなかった。次のOEWGは5月と8月に開催予定である。

ICJの15名の裁判官及びムハンマド・ベジャウィ特別選任裁判官が、次回OEWGの開催までに、申述書及び口頭弁論で提起された問題について、ICJの管轄権と請求の受理可能性について判断を下しているかどうかは定かではない。

国連の主要司法機関であるICJは、3月16日に、法律面で一筋縄でいかない上に重大な政治的影響が予想される一連の口頭弁論を終えるにあたり、「管轄権の問題に関する裁判所の判断は、いずれ発表する開廷日に言い渡す。」方針を示した。

ICJにおける一連の口頭弁論を注意深く見守ってきた創価学会インタナショナル(SGI)の石渡一夫平和運動局次長は、「核兵器とその使用が招く結果について世論を喚起しなくてはなりません……。知識を得ることで、人々は、核兵器なき世界に向かってより効果的に動くことができるようになります。究極的には、民衆の犠牲の上にしか成り立たない安全保障をとるか、或いは、人間の安全保障を最優先した思考や行動をとるか、私たちの目前には2つの選択肢があることを理解する必要があります。」と語った。(原文へ

翻訳=INPS Japan

 

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