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INPS JAPAN   IDN-InDepthNews - UN INSIDER

核実験禁止条約実現にはより強力な政治的推進力が必要(CTBTOゼルボ事務局長インタビュー)

 Opening of the CTBT exhibition in the Vienna International Centre's Rotunda on the occasion of the CTBTO20 Ministerial Meeting June 2016. From left: Federica Mogherini, EU High Representative for Foreign Affairs and Security Policy, CTBTO Executive Secretary Lassina Zerbo and Lazӑr Comӑnescu, Foreign Minister of Romania.【ベルリン/ウィーンIDN/INPS=ラメシュ・ジャウラ】

包括的核実験禁止条約機構CTBTO)事務局長のラッシーナ・ゼルボ博士は、「私に任せてもらえば、すべての核実験を禁止する条約は『昨日にも』発効していたでしょう。」と語った。

こうした見方は、軽快な調子で自ら「きわめて楽観的」と語るゼルボ博士のものの見方を反映しているのみならず、CTBTという略語でよく知られる包括的核実験禁止条約が「未完の仕事」であり続けることがないよう「批准を巡る議論が新たな段階に移った」ことを示す一連の兆候に基づいたものでもある。

インターナショナル・プレス・シンジケート(INPS)の基幹メディアである「IDN・インデプスニューズ」による独占インタビューでゼルボ博士は、自らの「楽観主義」について詳しく理由を説明してくれた。またその中で、「オバマ大統領が検討していると報じられている核実験禁止に向けた国連安保理決議は、意義あるものかもしれません。しかし、本当に意味を持つのは、残りの8か国(=CTBTの発効要件国のうち未批准国)による批准です。」と指摘した。その8カ国とは、中国、北朝鮮、エジプト、インド、イラン、イスラエル、パキスタン、米国である。

中国、エジプト、イラン、イスラエル、米国は、CTBTが署名開放された1996年以降に同条約に署名した183カ国の中には入っているが、批准した164カ国の中には入っていない。

ゼルボ博士の楽観主義の背景には次のような理由がある。つまり、CTBTOのトップとして初めて、今年6月にイスラエル首相による招待を受けたこと。欧州議会と、CTBTO賢者グループ(GEM)のメンバーでもあるフェデリカ・モゲリーニ欧州連合(EU)外務・安全保障政策高等代表が「創造的なリーダーシップ」を見せていること。

また、自発的に核兵器を放棄したカザフスタンと、広島・長崎への無慈悲な原爆投下から70周年を2015年に迎えた日本は、CTBTの早期発効に向けた取り組みを強力に推進している。

加えて、中国当局がCTBTO事務局長であるゼルボ博士に対して、同国のCTBT批准は米国の批准を前提条件とするものではないとの意向を伝えている。ゼルボ博士は、「米国上院の両方の党派からの支持もあります。」と指摘した。また、ローズ・ゴットモーラー米国務次官(軍備管理・国際安全保障)を含む米国高官らが、米国は「核実験禁止の国際規範を確認する手段」を検討していると言明している。

 

以下はゼルボ博士とのインタビューの全文である。

IDN|INPS:(エルサレムで6月20日に持たれた)ベンヤミン・ネタニヤフ首相との会合後のあなたの発言を聞いていると、そう遠くない時期に、CTBT発効から初の記念日を祝うことができそうに思えてきます。「そう遠くない時期」というのは、今年末のことか、それとももう少し後でしょうか?

Dr. Lassina Zerbo/ CTBTOCTBTO事務局長ラッシーナ・ゼルボ博士:私がきわめて楽観的であることはご存知かと思います。しかし、CTBTは、最後の批准書が寄託されてから180日間を経て発効することになっています。ですから、仮に、中国、エジプト、インド、イラン、イスラエル、北朝鮮、パキスタン、米国が今日中に批准したとしても、今年中には間に合いません。

ということは、いったいいつになったらCTBTが発効するのでしょう? もし私に全てを任せてもらえていれば、それは昨日にも実現できていたでしょう。

真面目に答えましょう。私たちは、CTBT署名開放から20周年にあたる今年になって、多くの前向きな兆候を目にしています。加盟国からの多大な支援もあります。それに、CTBTO事務局長が初めてイスラエル首相から招待されたという事実も、イスラエルが条約批准に前向きであること、批准に関する議論があらたな段階に到達したことを示しています。

IDN|INPS:EUのモゲリーニ外務・安全保障政策高等代表は、6月に行なわれたCTBT20周年記念閣僚会合で、「私たちは目標をあきらめてはいません。しかし、それを達成するには、より強力な推進力と、団結が必要です。」と述べています。また、ゴットモーラー米国務次官も「私たちはあきらめることはできないし、またそうしてはなりません。」と述べています。どうすれば、そうした「強力な推進力と団結」を実現することができるでしょうか?

ゼルボ博士:CTBT加盟国が条約発効を真剣に考えているならば(もちろん考えていると思いますが)、政治的な資本を進んで差し出さねばなりません。私たちに必要なのは政治的リーダーシップなのです。つまり、①政府が自国の議員と積極的に関与しようとすること、②批准国が未批准国に関与してその懸念に対処しインセンティブを生み出そうとすること、③そして、政府が市民社会と協働し既成概念の外側で思考するリーダーシップが必要なのです。

Erlan IDRISSOV/ CTBTOカザフスタンの外相が昨秋(2015年9月29日)にニューヨークで開催された「CTBT批准促進会議」(第14条会議)で述べたように、「いつも通りのやり方」では不十分です。

CTBT賢人グループのメンバーであり、私の友人であるフェデリカ・モゲリーニ高等代表とともに、EU外交委員会で7月7日に説明会を行いました。

その場で議員らが出した提案の1つに、第三国との貿易協定の中にCTBTを含めるというものがありました。これこそまさに、私が述べている(CTBT実現に向けた)「創造的なリーダーシップ」によるアプローチといえます。あるいは、原子力供給国グループ(NSG)への加入をインドが希望しているという例を取ってみましょう。同じような形で、CTBTに関する議論を始めることを条件に含めてみてはいかがでしょうか?

IDN|INPS:オバマ大統領はCTBTを強く支持していますが、米国上院では、CTBTが核戦力の効果を減ずると共和党が主張し、批准が阻止されています。中国の批准に対する後ろ向きな態度は、こうした米国の現状が原因であると言われています。オバマ大統領の任期終了が近づく中、条約批准の見通しをどのように立てていらっしゃいますか?

ゼルボ博士:米国では、上院が批准を「阻止」しているわけではありません。むしろ、単に、条約に関して、検討が繰り返されたり、議論が維持されたりしていないだけです。上院のほとんどの民主党議員も共和党議員も、単にこの問題に関心がないだけであり、1999年に上院がCTBT批准を否決した際の主要な懸念に対応するような技術的進歩があったことを知らないだけだと私は聞いています。

George Shultz/ K.Asagiri of INPS上院の両方の党派からの支持があるのです。ジョージ・シュルツ元国務長官はかつて、同僚の共和党議員らが「1999年にCTBTを否決したのは正しかったかもしれないが、現在の事情を考えれば、批准に賛成する方が正しいだろう」と述べています。

「現在の事情」とは、①1999年段階で青写真に過ぎなかったCTBTOの国際監視システム(IMS)の効率性が証明されていること、②核爆発実験なしに核戦力の安全性と信頼性を確かめることを米国の実験当局に可能にした「核兵器備蓄性能維持計画」が成功していることです。

中国に関しては、同国の批准は米国による批准を条件とするものではないとの説明を中国政府当局から受けています。これもまた、リーダーシップを示し、前進する機会であると言えます。

IDN|INPS:インドが、米国・中国・パキスタンの例に倣って、CTBTO会合のボイコットをやめる可能性はあるでしょうか。CTBTOは、条約に親和的な勢力をインド国内で作り上げようとしていると理解していますが。

ゼルボ博士:インドとCTBTOには互いに提供できるものが多くあります。災害の早期警戒や、地球に関する科学研究に私たちのモニタリングデータを副次的に利用することを考えています。逆に、インド人科学者の専門知識は、私たちのモニタリングシステムの改善に大いに貢献してくれるものと期待しています。

他方で、インドの核科学者や政治勢力の中で、核実験を再開したいと真面目に考えている人はいないのです。したがって、核実験禁止という考え方をCTBT交渉開始に先立つ40年も前に既に提案していたこの国が、最終的にはCTBT加盟国の輪の中に加わるだろうという楽観的な考えを私は持っているわけです。

IDN|INPS:もしCTBTが(発効に至らない)「未完の仕事」という状態がこのまま続けば、準備委員会はいずれ政治的・財政的支持を失うことになるだろうという見方が、しばしば出されています。そうした見方についてどうお考えですか。

ゼルボ博士:私たちはCTBTOが現在加盟国より得ている高いレベルの政治的・財政的支援に深く感謝していますが、確かにこれには中期的なリスクが存在します。既に加盟国の中には、一部の頑強な国々が今後も条約発効を阻止しつづけるならば、核実験禁止とCTBTOへの支持を無期限に続けるわけにはいかないと言明している国もでてきています。

だからこそ、条約発効プロセスを、とりわけCTBT署名開放20周年にあたるこの年に、軌道に乗せることが大事なのです。要するに、国際社会は、今こそ、始めた仕事を終わらせる時なのです!

IDN|INPS:報道によれば、オバマ大統領が、米国によるCTBT批准に代わるものとして、核兵器実験禁止を謳った国連安保理決議の採択を追求しているとのことですが、これについてどうお考えですか。

President Barack Obama speaks at Cairo University in Cairo, Egypt, Thursday, 4 June 2009/ Chuck Kennedy (Official White House photo) - The Official White House Photostream on Flickr, Public Domainゼルボ博士:オバマ大統領とオバマ政権がCTBTとCTBTOに強い支持を示していることを歓迎します。また、オバマ大統領の取組みにも感謝しています。6月13日にはウィーンで、ゴットモーラー米国務次官を含む米高官らが、米国は「核実験禁止の国際規範を確認する手段」を検討している、と言明しています。

核実験禁止に対する米国のコミットメントだけではなく、国際社会のコミットメントを再確認するような措置は正しい方向への一歩ですし、国連安保理決議は明確に強力なシグナルを送ることになるでしょう。

とは言っても、これがために、「真に未完の仕事(=機能してはいるが20年経過しても未発効のままになっているCTBTという条約があるという事実)」から目が逸らされるようなことがあってはなりません。国連安保理決議は、意義あるものかもしれません。しかし、本当に意味を持つのは、残りの8か国(=CTBTの発効要件国のうち未批准国)がCTBTに批准することなのです。(原文へ

CTBTの発効要件国のうち未批准国の8カ国/ CTBTO翻訳=INPS Japan

 

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