www.facebook.com
www.twitter.com
www.linkedin.com
www.blogger.com
www.myspace.com
RSS Feeds
 
INPS JAPAN   IDN-InDepthNews - UN INSIDER

急速に減少する最貧困層

An early morning outside the Opera Tavern in Stockholm, with a gang of beggars waiting for delivery of the scraps from the previous day. Sweden, 1868. Credit: Y. Broling in Ny illustrerad tidning 1868. - Julius Ejdestam: De fattigas Sverige, Public Domain. Wikimedia Commons.【ルンド(スウェーデン)IDN=ジョナサン・パワー】

ドナルド・トランプ次期大統領は、自身の減税策で米国の富裕層をさらに富ませようとしている。恥ずべき考え方だ。しかし、米国の歴史を振り返れば、過去200年にわたって、実は貧者の方が一般に思われているよりもよくやってきている

以前と比べれば、今日私たちをとりまく環境は大きく改善している。つまり、水道、暖房、電気の普及、天然痘や結核の心配のない生活、適切な栄養、以前よりずっと低い乳幼児・妊産婦の死亡率、2倍になった平均余命、ますます発展する医療の仕組み、身近になった避妊の手段、中等教育を受けられる子供の増加、大学に進学できる機会の向上、バス・電車・自転車の普及、弱くなった人種的偏見、延長された退職時期、購入する商品の質の向上、改善された労働条件、それに投票権。

かつて、こうしたものは富める者だけが享受できる贅沢であった。多くの研究によって、貧しい人の生活が向上するにつれて幸福感は急速に増すが、ある時点(1人あたり年間収入1万5000ドルレベル)を越すと、幸福感が増すペースは鈍ることが明らかになっている。今日、最も貧しい人々のほとんどが、まだまだ先は長いとはいえ、祖先よりも幸せな生活を送るものと期待されている。

欧州やカナダ、日本でも事情は同じだ。近年では、ラテンアメリカの大半の国々においても、(依然として人口の2割が深刻な貧困下にあるが)同じ状況である。(戦争以前のイラクとシリアを含めた)中東、中国、インド、パキスタン、スリランカ、東南アジア、北部アフリカでも、進展がめざましい。アフリカにおいてはそのペースはやや遅れてはいるが、南アフリカ共和国、ナイジェリア、コートジボワール、ガーナ、セネガル、ルワンダ、ガボン、エチオピア、タンザニア、ウガンダ、ケニアでの生活水準はよくなっている。


Bourgeois Equality/ The University of Chicago Press Books『ブルジョアの平等:いかにして資本や制度ではなく、理念が世界を豊かにしてきたのか』の著者ディアドラ・マクロスキー氏はこれを「大いなる豊かさ(Great Enrichment)」だと呼んでいる。

1日2ドル以下の収入で生活する最貧困層も、他の階層ほどではないが、こうしたことを経験している。最貧困層は、急速に減少しつつある集団だ。1993年からの20年余で、最貧困層の数は10億人以上も減少した。1990年と2010年の間に、5歳の誕生日までに死亡する児童の割合は半減した。なかでも、マンモハン・シン首相胡錦濤国家主席の下で、インドと中国では最貧困層の割合を最も減らした。

『エコノミスト』によれば、最貧困層の人々は、1日あたり平均1.33ドルで生活しているという。極度な貧困をなくすためには、1人あたりわずか0.67ドルが必要だということになる。これにかかるコストは年間わずか780億ドルで、世界全体のGDP合計の0.1%以下だ。

一般的な通念に反して、世界金融危機が8年前に始まって以来、世界はより平等な場所になりつつある。ブラジルやインド、中国の経済成長が、英国で産業革命が始まって以来、最大の不平等の減少をもたらしている。

また、戦争の影響という要素もある。人類の歴史においては、冷戦終結以降、今日ほど戦争の数が少なかった時代はない。いつの時代も、貧しい人々が、戦争によってもっとも脅威に晒される人たちだ。

スティーブン・ピンカー氏が2001年に著した『暴力の人類史』(原題はThe Better Angels of Our Nature)によれば、戦争による世界全体での死亡率は、第二次世界大戦時の10万人あたり300人が、1970・80年代には1ケタになり、今世紀には1人以下になった。

世界の6割の国々が今や民主主義国である(1940年には、両手で数えられるぐらいしかなかった)。民主主義国同士は、ほとんど互いに戦争をすることはない国連の平和維持活動の数は大幅に拡大し、大いに成功を収めている。世界で唯一の超大国である米国は、シリアの場合がそうであったように、バラク・オバマ大統領の下で、戦争に巻き込まれるリスクを警戒するようになっており、手を引く時期を窺っている。

殺人・犯罪率は急速に低下している。貧しい人々は特に犯罪によって傷つけられやすい。欧州における殺人率は中世と比較すると35分の1にまで低下した。殺人率は、19世紀末以来の進歩の傾向を逆転させて、最も低かった1970年代・80年代から再び上昇の兆しがあるが、それでも、21世紀になって75カ国で殺人率が急落している。

暴力的な犯罪はとりわけ先進国において急速に減少している。これは収監率が上がったためではない。警察の戦術が著しく改善されたためだ。DNA型鑑定によって犯罪者を追跡することが容易になった。中絶がより容易になったために、子どもに対処できない麻薬依存者やアルコール中毒者、シングルマザーの子として生まれ、結果的に犯罪に染まりやすくなる人々の数は大幅に減少した。

とりわけ、有鉛ガソリンが175カ国で廃止された点は特筆に値する。鉛にさらされると人間の脳は損傷を受ける。鉛によって障害を抱えた脳の部分は、人間の攻撃的な衝動をつかさどる部分と同じである。かつて車やトラックが世界中に広まった20世紀中盤から末にかけて、犯罪は急増している。

私たちはここからどこに向かっているのだろうか? 間違いなく、それはより豊かな方向だと信じたい。(原文へ

翻訳=INPS Japan

関連記事:

|世界平和度指標|5年前より平和でなくなった世界

ベルリンでの世界会議、「心の脱軍事化」を求める

奴隷貿易についての「沈黙を破る」