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なぜノーベル平和賞は平和の擁護者に授与されないのか?(トマス・マグヌスン国際平和ビューロー(IPB)共同代表)

【ヨーテボリIPS=トマス・マグヌスン】Tomas Magnusson

今年の12月10日(アルフレッド・ノーベルの命日)は、欧州連合(EU)の指導者たちがノルウェーのオスロに集まり、ますます論争の的となっているノーベル平和賞の授賞式に臨む。ダイナマイトの発明で知られる科学者・実業家のノーベルは、自らの遺言により1895年に5つの賞(物理学・科学・医学生理学・文学・平和)を創設したが、彼が意図していた「平和の擁護者」に平和賞が与えられていないのではないかとの批判が世界的に強くなっている。

 
もちろん、どのような人びとや国家にも、寄り集まったり協議をしたり取り決めをしたりなどして、何らかの平和を作り出している側面はある。しかし、欧州連合(EUのどこにも、ノーベルが遺書に明記していたような、世界を非軍事化し平和秩序を作り出そうとの意思は存在しない。それどころか、EUは独自の防衛機関と戦闘集団を擁し、軍備と兵器生産・取引を推進しているのである。

 

11月下旬、過去のノーベル平和受賞者である国際平和ビューロー(IPBデズモンド・ツツ師(元南アフリカ共和国大司教)、マイレッド・マグワイヤ(英国・北アイルランドの平和活動家)、アドルフォ・ペレス・エスキバル(アルゼンチンの人権活動家)の4者が、EUに受賞させるのは不当だとの抗議声明を出し、さらにIPBはスウェーデン関係当局が、ノルウェーノーベル委員会のこの決定について調査に乗り出すよう要求した。

ノルウェーの政治家がEUを「平和」に貢献した組織として評価し、政界の友人らのために豪華なパーティーを開くのは自由である。しかしだからといって、自らの政治課題を推し進めるためにノーベル賞の権威や委託金を自由に利用することはできない。遺言は法的拘束力を持つ文章である。しかしノーベル平和賞が授与されたここ10年の実績(2008年のフィンランドの政治家マルティ・アティサーリ、2009年米国のバラク・オバマ大統領、2010年の中国の民主活動家〈劉暁波氏〉)を振り返ると、軍縮を望んだノーベルの遺志からは大きくかけ離れたものとなってしまっている。ノルウェー議会は、「平和」の基準を彼らなりに拡大して、自らの政治的目的のために平和賞をのっとってしまったようだ。
 
ノーベルは遺書の中で、(平和賞に託した)目的を明確に述べている。つまり、ノーベルの遺志は、世界を軍事主義と戦争の惨禍から救い出し、資源を飽くなき軍拡競争にではなく、人間の利益になるようなことに振り向けるという点にあった。

ノーベルは、「人類のために最大の恩恵をもたらす」変革を育んでいくことを願って、平和賞を世に残した。当時のノルウェー議会は、国際的な紛争が全面的な戦火に拡大しないよう軍縮や調停を行う、といった新しい「平和」という概念を現実の国際政治の中で追求していた。そこでノーベルは、ノルウェー議会こそが、彼の平和構想に専心する5人委員会を任命するのに最も相応しい組織だと考えた。

しかし今日のノルウェー議会は、冷戦を経てますます軍事色を強める西洋文化の影響下にあって、かつてノーベルが支援を望んだものとは逆の立場をとっている。議員らはノーベルが議会に期待した世界平和の構想さえ描けないでいるようだ。ノルウェー議会が、ノーベルが望んだ軍縮や平和の提唱に貢献したものを選定しない現状は、遺言の履行義務違反であり、これ以上許されるべきではない。

今日の現状は、ノーベルと彼の平和賞の支援を受ける資格がある平和運動に対する裏切りであるとともに、あたりまえの民主主義の実践及び法の支配に対する裏切り行為でもある。ノルウェーの弁護士でIPB元副会長のフレドリック・S. ヘッファメール(「ノーベルの遺志」の著者)が、ノーベルが平和賞に込めた元々の目的を再発見し、ノーベル委員会に対して、ノーベル平和賞の管理組織としての業務と責任を直ちに見直すよう勧告してから5年以上が経過した。ヘッファメールは、「ノーベルは平和賞を設けたのであり、環境、経済、人道的な活動に対する賞を意図していなかったノーベルは、武力の役割を減らすことで、国際政治を大きく変革させること目指していた。」と述べている。

ヘッファメールは、「一つ明らかに言えることがあります。」として、「今日ノーベル平和賞の選定者らは、ノーベル自身についてや彼が賞に託した意図について指摘されることを露骨に嫌がります。この5年間、彼らは一度として、アルフレッド・ノーベルという人物自身や彼の平和ビジョンに対して関心を示したことはありませんでしたしかもEUへの授与を決定した現在のノーベル委員会の委員長(トールビョルン・ヤーグラン)が欧州評議会の現役の事務総長でもあるという事実には驚愕せざるを得ません。このような動きは、ノーベル委員会が本来務めるべき原理原則を逸脱するものです。」と語った。

今年3月、ヘッファメールからの働きかけが実り、スウェーデン財団機構は、ノーベルの遺書を尊重するよう選定者らに求め、さらに、ノーベル財団に対して、平和賞も含め、すべての受賞内容をよく監督するよう命じた。にもかかわらず、ノルウェー議会とノーベル委員会は、依然として彼らが拡大解釈した「平和」の一般概念を基準に賞を授与し続けており、結果としてノーベルの遺書に明記されている平和賞の本来の目的は無視され続けている。

こうした中、最も古い歴史を持つ国際平和団体の一つであるIPBは、11月22日にスウェーデン政府に要望書を提出し、「平和の擁護者」の正当な権利を守るための第一歩を踏み出した。ノーベル平和賞と共通の理念と政治信条を源にもつIPBは、1910年に団体としてノーベル平和賞を受賞したほか、これまでに13人のメンバーが同賞を受賞している。

ノーベル平和賞の正当な受賞者は、軍事プログラムや軍事政策に賛成する者ではなく反対者であるべきだ。国際社会は、安全は協力ではなく軍事対決を通じて確保できるとする、幻想とも言える破綻した安全保障モデルに対して途方もない金額の資金を投じている。平和賞を使って先見的なノーベルの平和構想を推進することこそが、世界の貧者や不幸せな人びとにとって、そして、環境や人権、民主主義、女性や子ども、毎年どこかで生まれる戦争の犠牲者にとって、もっとも必要なことである。(原文へ

翻訳=IPS Japan

 

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