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中東和平を目指す諸宗教連合

Religious Leaders from Israel and Palestine pose with UN Secretary-General António Guterres (6th from left) and UNAOC High Representative Nassir Abdulaziz Al-Nasser (6th from right). Credit UN Photo【ニューヨークIDN=ジョアン・エラキート】

兄弟間の不幸なつながりについて暗示した旧約聖書のある有名な一節がある。(アダムとイブの)子供であるカインが、神から弟の行方について問われた。その時点で既に弟を殺害していたカインは、「知りません。私は弟の監視者なのですか?」と答えて神への忠誠を拒んだ一節だ。

By Peter Paul Rubens - The Courtauld Gallery, London, Public Domain

カインとアベルの寓話はこのように解釈されるかもしれない。人間として、私たちは生まれながらにして、互いをいたわるべく運命づけられた兄弟である。しかし、互いに敵対せざるをえない状況が生まれる。そこで最後には、様々な背景やものの見方を持った人々に調和をもたらし、互いの絆を強める宗教が求められる。

政治の舞台において、宗教はしばしば複雑なテーマであるが、中東の平和構築プロセスにおける宗教指導者の役割を巡る政治パネルディスカッションという形で、ニューヨークの国連本部での開催が実現した。

国連「文明の同盟」(UNAOC)がスペイン政府の後援を得て7月18日に開催したこのパネルディスカッション「中東の平和構築における宗教指導者の役割 」には、聖地エルサレムを代表する3つの宗教(キリスト教、イスラム教、ユダヤ教)の指導者らが参加した。パネリストらは、国連に対して、イスラエル・パレスチナ紛争の解決に、もはや宗教の関与を外すことができないことを正式に認めるよう強く促すとともに、平和構築交渉のテーブルに宗教指導者が加わる必要性を訴えた。主催者を代表してUNAOCからはナシル・アブドゥルアジズ・アルナセル上級代表、スペイン政府からは、アルフォンゾ・マリア・ダスティス外務・協力大臣が参加した。

António Guterres of Portugal. UN Photo/Manuel Eliasこの会合にはまた、国連のアントニオ・グテーレス事務総長も参加し、会場を埋め尽くした聴衆に語りかけた。なお壇上には、ラエド・バディール師(パレスチナ・ウラマー協会会員)、セオフィロス三世(ギリシア正教会エルサレム総主教)、アディナ・バー・シャローム博士(ハレディ大学[エルサレム]の創始者・学長)、アブラハム・ギーセル師(オフラ入植地のラビ、イスラエルの国家宗教教育制度評議議長)、マイケル・メルキオール師(エルサレム地域のラビ、モザイカ宗教平和イニシアチブの代表)といった著名なパネリストが並んだ。

パネリストとしてパレスチナからの参加を予定していたイマド・アベド・アルハミド・アルファルージ氏(アダム文明の対話センター長、メルキオール牧師の協力者)は、米国へのビザを取得できず、入国を断念するという不測の事態もあったが、急遽ビデオ会議を通じて議論に参加した。

グテーレス事務総長は、「聖地(エルサレム)は世界中の数多くの人々の心の中で、特別な地位を占めています。」と述べたうえで、「日時が経過するごとに、不満が高まり、希望が失われ、イスラエル・パレスチナ紛争の平和的解決の見通しは遠ざかっているかにみえます。」と発言した。

グテーレス事務総長の言葉は、パネリストらにしっかりと受け止められた。というのも、彼らは、2016年11月にスペイン政府とUNAOCが主催した「中東の宗教的平和を求める」サミットにおいて共に時間を過ごし、アリカンテ宣言を発していたからだ。

アリカンテ宣言は、3宗教の指導者らが互いに協力しあい信者間の平和的共存を創出する責任を引き受けることに合意した証として策定されたものだ。宣言は特にこう述べている。「私たちは、他者や隣人のイメージを煽ったり、偽ったり、歪めたりすることをやめるよう強く呼びかける。私たちは、互いを尊重するよう未来の世代を教育することにコミットする。宗教的伝統と、私たちのコミュニティーと民衆にとってなにが最善なのかという理解を基礎にして、2つの民族(ユダヤ人とパレスチナ人)が尊厳をもって共存する権利を認めた解決策を呼びかける。」

Central Israel next to the Palestinian National Authority in the West Bank and the Gaza Strip, 2007/ Public Domainイスラエル・パレスチナ紛争が、長年にわたって、中東とひいては世界全体を不安定にしかねない火種となってきた。そうした中で、イスラエル・パレスチナ双方の団体や個人が解決策を導こうとして数多くの試みがなされたが、ほとんどが失敗に終わってきたことは否定できない事実だ。

同時に、宗教が、その中核において、民衆に影響を与える力を持っていることも否定できない。アルナセル上級代表は、「宗教が問題の原因ではないと固く信じています。むしろそれとは逆に、宗教は問題解決の一翼を担えるのです。」と語った。

UNAOCでは、こうした認識から、イスラエル・パレスチナ紛争に対するこれまでのアプローチを転換し、新たな調停の道筋を模索すべく、紛争当事者の両サイドの宗教指導者らとの協力を推進しており、将来的には、平和構築の交渉テーブルに宗教指導者の席を確保したいと考えている。

「『文明の同盟』は、様々な宗教や文化間の対話を促進する国連の主導的な組織のひとつです。私たちは、平和というものは、政治家だけの取り組みで実現できるものではないと考えています。そのために、市民社会や民間部門、学者、そしてなによりも、宗教指導者や宗教を基盤とした組織(FBO)とのパートナーシップと関与を重視しています。」とアルナセル上級代表は語った。

癒しと理解を求める人々に導きを提供するために宗教指導者らが存在し、社会における彼らの地位がきわめて高いことを考えれば、とりわけ紛争に関していえば、人類のスピリチュアルな旅を形成するうえで宗教指導者らが重要な役割を果たすにふさわしいと言えよう。

SDGs Goal No. 16宗教の違いを越えて活動する個人的経験をビデオ会議で披露したアルファルージ氏の熱烈な言葉であれ、エルサレムはユダヤ教徒・キリスト教徒・イスラム教徒の共通の故郷であると自信を持って考えているテオフィロス大司教であれ、ひとつの確実なことは、宗教は政治的な手段であり、この場合、歴史的に悲惨な対立が続いてきたイスラエルとパレスチナの間に平和の橋を架けようとするものなのである。

「私が一貫して強調してきたように、「Two-state solution」(2国共存解決案)のみが、パレスチナ人とイスラエル人が自らの国家的・歴史的希望を認識し、平和と安全、尊重のうちに生きるための唯一の道筋です。違法な入植地の拡大、あるいは暴力、煽動は、この見通しを曇らせるものにほかなりません。」とグテーレス事務総長は語った。

さらにグテーレス事務総長は、会場の宗教指導者らに対して、「一部の宗教的過激主義者や急進主義者によって歪められてきたそれぞれの信仰に関する言説を変える機会を逸してはなりません。」と指摘したうえで、「そうではなく、地元の、そして地域の宗教指導者らが、信者間の平和と解決、共通性のメッセージを強化するように影響力を発揮してほしい。」と率直に訴えた。

グテーレス事務総長は、「宗教平和イニシアチブ」を通じて、紛争のどちらの側にいるかに関係なく、3つのすべての宗教の中核的な価値に訴えかけることで、少なくとも対話を始めることが可能だと確信している。

これは、理論的には、まさにグテーレス事務総長が望んでいるような成果をあげる可能性を秘めた期待の持てるイニシアチブである。実際には、地域の宗教指導者らにアリカンテ宣言に則した責任ある行動を求める具体的な行動計画を必要とするだろう。また、信者間の対話を始めるための能力構築や、手段、空間も提供していかなくてはならない。

「宗教が問題の原因ではないと固く信じています。むしろそれとは逆に、宗教は問題解決の一翼を担えるのです。」とアルナセル上級代表は結論付けた。

UNAOC国連本部の会場にいた誰もが、平和構築プロセスへの関与を強く望む、パネリストらの危機意識をひしひしと感じただろう。いずれの宗教指導者も、メルキオール師が「夢」という言葉で表現した「紛争のない中東での暮らし」の実現をいかに切望しているかを、熱烈な言葉で語りかけていた。

昨年スペインのアリカンテで開催した実り多いサミットと、今回の国連での生産的な会合を受けて、イスラム教徒やキリスト教徒、ユダヤ教徒をまとめあげる決意をした宗教指導者の連合は、統一されたメッセージを発するだけではなく、3つのすべての宗教の人々が、互いを敵ではなく兄弟だと見れる形で訴えかける対話の方法を作り上げていかねばならない。(原文へ

翻訳=INPS Japan

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