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|視点|罵り合いはもういらな - 北朝鮮核危機からの出口

Photo: People in Pyongyang watch Kim Jong-un on North Korean TV, 2015. Credit: Wikimedia Commons.【ルンド(スウェーデン)IDN=ジョナサン・パワー】

大統領選後すぐにバラク・オバマ大統領がドナルド・トランプ氏をホワイトハウスに呼んで何が話されたか、私たちは窺い知ることができない。しかし、知らされたことがひとつだけある。それは、オバマ大統領がトランプ氏に対して、彼が直面する問題の中で北朝鮮問題が最も緊急で最も難しい、と語ったということだ。

これはまさに的を射た指摘だった。しかし端的に言えば、米国は好機を逸してしまった。済んでしまったことはしかたがないが、歴代3人の大統領(クリントン、ブッシュ、オバマ)が躊躇に躊躇を重ね、次々と機会を逃すうちに、北朝鮮は、核兵器を持っていない状態から、少なくとも20発の核弾頭を保有する状態にまでなってきたのである。11月29日未明に実施された大陸間弾道ミサイルの実験は、米国本土を攻撃する能力があったと言われる。現時点では核弾頭は積まれていないが、それも今後2、3年のことであろう。

 President Barack Obama meets with President-elect Donald Trump at the White House, Nov. 10, 2016./ VOAビル・クリントン大統領は退任直前、北朝鮮との協議がまとまる寸前だと考えていた。マデレーン・オルブライト国務長官(当時)はクリントン訪朝に向けた準備のため平壌に飛び、その間に協議内容が固められるとみられていた。しかし、クリントン大統領は任期の最終盤で、パレスチナに平和をもたらすであろうと思われた重要なアラブ・イスラエル協議に力を入れざるを得なかった。同時に、議会共和党は、北朝鮮との間ですでになされた合意を空文化させる努力に余念がなかった。

現在、いずれも気性の荒いトランプ大統領と金正恩最高指導者との間には激しい衝突がある。彼らがどのような制約のもとに置かれているかについては議論がある。両指導者はいずれも核兵器使用の決定について全権を与えられているとされているが、いずれかが、自国の軍当局が抱く疑念を回避することができるだろうか?

米軍は、もし米国が核兵器を発射したら、北朝鮮は通常兵器を搭載したミサイルで韓国を狙い、ソウルを破壊するであろうことを知っている。北朝鮮軍はどうかと言うと、仮に2、3年後に北朝鮮が長距離ミサイルに核兵器を搭載する技術を得て、それを使用すると決断したならば、米世論の多数は報復攻撃を加えることに賛成するであろうことを知っている。

Question Mark/ Wikimedia Commonsこうして、両国の軍当局は一時停止の姿勢を取ることになる。結局のところ彼らには、どんな攻撃の場合でも傷つけられることになる家族がいるのである。都市は、人が住めるところではなくなるだろう。

この状況で恐らく彼らは、大統領には責任感がなく、そもそも不安定なことから、事態の圧力の下で判断力を失うであろうと結論づけることになるだろう。仮にミサイルのボタンが押されたとしても、それが軍当局のコンピューターを通過することなく発射されることはない。

もちろん、いかなる核の対立においても、不確定要素はある。冷戦期には、敵の核攻撃があるとの誤った警告が数分間にわたって発されたこともあった。米国では、核ミサイル発射担当の将校が麻薬やアルコール中毒であることもあった。

双方の核の削減が必須だ。しかし、現実的には、米国が大量の核戦力を維持しつづけなければならないと考える限り、これは実現しそうにない。

冷戦期を通じてそうであったように、私たちはある程度の不確実性とともに生きて行かざるをえない。しかし、冷戦時と同じように、相手側との接触を持ち、無視したり孤立させたり、相手が慈悲を乞うまでに絞り上げたりしないようにしなくてはならない。

こうしたことは、クリントン政権時代の「米朝枠組み合意」にはみられなかった。米国は、電力の生成しかできない軽水炉を北朝鮮国内に建設し始めた。しばらくの間、北朝鮮はアジアで米国が援助を行う主要な相手だった。クリントン大統領が平壌に遣わせたオルブライト国務長官は現地で歓待を受けた。北朝鮮は態度を軟化させた。

しかし、次のジョージ・W・ブッシュ大統領は、国務長官であり元統合参謀本部議長のコリン・パウエル氏や、ほとんどの政治学者・国際関係学者等の意見を無視して、全てをひっくりかえした(これはイラク戦争に踏み切るよりも悪い過ちだった)。北朝鮮はこうしてそれ以降、核兵器開発の作業を完遂することを決意したのだった。

クリントン大統領の「米朝枠組み合意」の時代に時計を巻き戻すことはできないが、新たな枠組み合意をゆっくりとではあるが創り出すことはできる。しかしまずは、最終的にソ連を弱体化へと導いたのと同様の手法を用いて北朝鮮との関係を「改善する」ことが必要だ。それには、米国のサッカーチームやニューヨーク市バレエ団の定期訪問や、数学や政治学・人権を教えるハーバード大学のサテライトキャンパスの建設(中国の大学でやってきたこと)といったような、文化・教育・スポーツ面での交流が有効だろう。

ICANこうして、米国は北朝鮮が本当に望む2つのことに合意する必要がある。一つは、1953年の休戦協定で終了したに過ぎない朝鮮戦争を正式に終結させるための和平条約に関する協議を開始すること。もう一つは、朝鮮半島周辺における米軍の演習を制限することである。

罵り合いはもう必要ない。必要なのは、平和的解決の模索に乗り出すことだ。(原文へ

※注:ジョナサン・パワーは、17年にわたって『インターナショナル・ヘラルド・トリビューン』で外交問題のコラムニストを務める。スウェーデンのオロフ・パルメ首相が議長を務めた「軍縮に関する独立委員会」委員。新著に『戦争犯罪を終わらせ、戦争犯罪者を追求する』(ニジョフ社)。他の著作に『石の上の水のように:アムネスティ・インターナショナルの歴史』(ペンギン社)。

翻訳=INPS Japan

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