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INPS JAPAN   IDN-InDepthNews - UN INSIDER

米国に直接対話のシグナルを送るイラン

【ワシントンIPS=ガレス・ポーター】

 

2005年末以降、イランの指導層が、イランの核問題および米・イラン間のその他重要問題について米国との直接交渉を望むとのシグナルを米政府に送り続けている。

この動きは、イラン国内において同国の高官と海外の要人が行なったいくつかの非公式協議に始まる。イランの国会議員が、米・イラン協議を示唆する発言を行なったこともある。しかし、4月下旬になって、イランのマフムード・アフマディネジャド大統領が、米政府と協議を行なうのにやぶさかでない、と初めて明らかにしたのである。

 
大統領は、4月24日に行なった1時間ほどの記者会見の中で、イランには「世界中の全ての国々と協議する用意があるが、どの国と交渉をするにせよそれぞれの条件がある」と述べ、特に米国を名指ししたのである。「もしこの条件が満たされるのならば、我々は交渉するだろう」。

パリの独立系通信社「イラン・ニュース・サービス」が報じたこのアフマディネジャド大統領の発言は、米国のメディアでは注目されることがなかった。しかし、米メディアは、同じ記者会見における、「イラク政府が確立された以上、イラク問題で米国と協議する必要はない」というイラン大統領の発言については、確かに報道していたのである。

アフマディネジャド氏は、協議の条件が何かを明らかにしていなかった。しかし、イラク問題に関する米・イラン二国間協議を昨年11月に米国から持ちかけられたときの反応が、イラン政府の考え方をよく示しているといえるだろう。イラクのジャラル・タラバニ大統領は、昨年11月末にイランを訪問して、アフマディネジャド大統領、最高指導者アヤトラ・ハメネイ師らイランの指導者と会談し米国の提案を伝えた。そのときイラン側は、2つの条件が満たされれば協議に応じると返答した。その条件とは、第一に、協議が非公式のものであること、第二に、米・イラン二国間の全ての重要問題を取り扱うことである。
 
昨年8月に大統領に就任して以来アフマディネジャド氏はイランの政策をより過激な方向に導いているとの米政権の見方、さらにはその意向を受けたメディアの一般的な見方とは異なり、アフマディネジャド氏の公の主張に対して批判的な人々を含め、イランの指導層の強調点は、イランの核政策は大統領によって決定されるのではない、という点であった。

イラン国家最高安全保障会議の事務局で16年間務めたハッサン・ロハニ氏は、2月末と3月初めの2度にわたり、核問題に関するイランの立場は、政府の最高指導層によって決められるものであって、現政権によって決められたものではない、と発言している。2月20日には、「イランの一般的な政策は、新政権ができたからといって変わらない」と述べた。

米国との協議問題に関してアフマディネジャド大統領が発言したのは今回がはじめてであるが、核問題やその他の安全保障問題に関してイラン政府が米国との直接交渉に公に関心を示したのは、今回の大統領記者会見が初めてではない。

3月6日、イランのハミッド・レザ・アセフィ外務省報道官は、「我々が言っているのは、もしアメリカが我々を威嚇することをやめ、前提条件を課すことによって交渉プロセスに影響を与えることを求めない雰囲気を醸成するのであれば、米国との交渉を妨げるものは何もないということだ」と述べている。

こうしたシグナルを新たに公式に示し始めた背景には、安全保障問題につき広く米国と直接交渉する用意があるとのイランの意向を伝える、この数ヶ月間にわたる密かな外交活動がある。イラン側は、テヘランでイランの政府高官と会談した各国外交官や著名人を通じてこうしたメッセージを送り続けてきた。

米・ドイツ・オランダ・ポーランド・フランス・ルクセンブルグの元外務大臣が4月26日付の『インターナショナル・ヘラルド・トリビューン』紙上で発表した声明によれば、彼らのうち[米国を除く]欧州5ヶ国の声明賛同者が「この数ヶ月の間にイランの影響力のある人々と会談した際、安全保障問題に関して米国と様々な議論をしようとの関心がイラン側に広く見られた」としている。

米国政府を安全保障問題に関する直接交渉に引き込もうとする現在のイランの動きは、初めて生じたものではない。2003年5月初め、米国の意図の伝達役となっていたティム・グルディマン駐イラン・スイス大使が、米国政府に対して、イラン側の提案を記した1ページの文書を送った。そこでは、イランに対して安全保障の確約を与え、経済制裁を終わらせることと引き換えに、核問題、および、イランによるヒズボラその他の反イスラエル的団体の支援に関する米国の懸念にイランが応えることが提案されていた。

最高指導者ハメネイ氏とイラン国家最高安全保障会議の承認を得ていたといわれるこの提案に先立ち、イラン政府は、公的の外交ルートおよび非公式ルートを通じて、イランが直接協議に関心を持っているというシグナルを静かに送り続けていた、と語るのは、当時イランにおいて諜報活動を行なっていたポール・ピラー氏だ。

イランは明らかに、交渉への機は熟したと考えているようである。なぜなら、米国のイラク侵攻に伴ってイラクは混乱の中に飲み込まれ、また、イランが支援する[イラクの]シーア派諸党派、イランの意見に近い立場をとる武装集団と協力する必要性を米国側が感じているからだ。

ブッシュ政権は、2002年末、イラン原子力計画の進展や、核兵器製造能力を得るためとされるイランの計画の進展に対して警戒感を表明し始めた。

「これは米国に接近するよい機会だ――イラン側は実際にそう期待したし、そう期待するだけの十分な理由があった」とピラー氏はいう。

ブッシュ政権は翌2003年、イランからのこの提案を無視し、最近では、核問題に関してイランと協議する可能性を公的には否定している。しかし、イランは、4月初め、ウランを3.6%レベルにまで濃縮することに成功したと発表する。これは、核兵器級ウランの保有に向けた第一歩であり、交渉による問題解決がさらに急務の課題となった。

この発表ののち、米上院外交関係委員会のリチャード・ルーガー委員長と、民主党側の筆頭理事ジョセフ・バイデン委員が、ともに米・イランの直接対話を呼びかけた。

イランの国家安全保障筋の思考法に詳しい識者の意見によれば、イランが初歩的な濃縮に踏み切ったのは、核問題を越えて米国と広く協議を行なえる立場に立つためだという。

「ウラン濃縮によってイランは交渉上の大きなカードを手にした」と語るのは、この数年間にわたりオフレコでイランのトップ指導層に対するインタビューを行なってきたイランのジャーナリスト、ナジメフ・ボゾルグメフル氏だ。「彼らは、米国との交渉においてテコとなるであろうものをベースに事実を積み上げている」と彼は言う。

現在はワシントンのブルッキングズ研究所で研究員を務めるボゾルグメフル氏はまた、イランは、ウラン濃縮問題における譲歩と引き換えに、対イラン経済制裁の解除、安全の保証、確実な核燃料供給を狙っているのだと語る。

ジャーナリストのプラフル・ビドワイは、イラン政府関係者・その他の専門家によれば、核問題・安全の保証の問題に関する譲歩的提案と、米国との関係正常化に関しては交渉の対象になりうるとの「かなり広い合意」が存在する、と先日IPSにおいて報じていた。(原文へ

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩


※ガレス・ポーターは、歴史学者で安全保障政策のアナリスト。最新の著書『Perils of Dominance: Imbalance of Power and the Road to War in Vietnam(優勢の危険:力の不均衡とベトナム戦争への道)』が2005年6月に刊行されている。