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核兵器禁止の「魔法の瞬間」を待つトランプ

Photo: Deputy Defense Secretary Patrick M. Shanahan, center, Undersecretary of State for Political Affairs Thomas A. Shannon Jr., left, and Deputy Energy Secretary Dan Brouillette brief the press on the 2018 Nuclear Posture Review at the Pentagon, Feb. 2, 2018. DoD photo by Navy Petty Officer 1st Class Kathryn E. Holm【国連IDN=シャンタ・ロイ】

2月2日に発表された2018年の核態勢見直し(NPR)は、過去からの危険な離脱であり、世界で最も恐るべき大量破壊兵器を使用する用意があるとの米国の固い意思を示しているかのようだ。米国が、サイバー攻撃を含めた「重大な非核戦略攻撃」の標的になったとしても、核を使うというのである。

核戦争を広範に正当化する今回の政策声明は、気候変動やイラン核合意、そして最も重要な点として、核兵器の使用といった問題に関してドナルド・トランプ大統領が発してきた数々の矛盾した発言に照らし合わせてみなくてはならない。

President Donald Trump poses for his official portrait at The White House, in Washington, D.C., on Friday, October 6, 2017.そして、米国の主要な政策的宣言となる1月30日の一般教書演説において、トランプ大統領はあからさまに、「おそらく、将来いつの日か、世界の国々がともに核兵器を廃絶する『魔法の瞬間』が訪れるかもしれない。」と述べる反面で、「残念ながら、われわれはまだそこには至らない。」と強調した。

しかし、こうした魔法の瞬間は、とりわけトランプ政権の下では、極めて困難か、せいぜいが政治的な夢想に過ぎないと言ってよい。

ジャヤンタ・ダナパラ元国連事務次長(軍縮担当)はIDNの取材に対して、「数年前に出されたオバマ政権の『核態勢見直し』に対する論評のほとんどは、『核兵器なき世界』の実現を約束した先駆的なリーダーとしては核兵器の使用可能性を十分に否定していない、と嘆くものであった。」と語った。

Jayantha Dhanapala/ K.Asagiri of INPS「トランプ氏の政策文書は、新型兵器を開発しそれを実際に使うと宣言することで、さらに踏み込んだものとなっています。世界終末時計が、真夜中、あるいは、アルマゲドンまで2分に設定されたのは、無理からぬことです。」とダナパラ氏は指摘した。

「米軍事予算の急拡大は、予想通りであり、他の核兵器国は同様に対処することになるでしょう。」と、パグウォッシュ会議の前議長(2007~17)でもあったダナパラ氏は警告した。

米国のニッキー・ヘイリー国連大使は、核をめぐるトランプ大統領の好戦的な姿勢を正当化して、NPRは「我々が今日直面している特異な脅威に対して、米国が柔軟性を保ち、十分な準備をするためのものだ。」と語った。

「核兵器なき世界の実現を望むが、我々の核政策は、我々の住む世界の現実に根差したものでなければならない。この世界では、北朝鮮のような好戦的な政権が、違法な核・弾道兵器の追求によって我々やその同盟国を脅かしている。」とヘイリー大使は指摘した。

『ニューヨーク・タイムズ』は、「北朝鮮への『炎と怒り』をもてあそぶ」と題する2月2日付の論説で、北朝鮮に対する「米国の単独軍事行動の兆候が強まっている」と書いた。

「これに対して我々は『やめよ』と言う。」と同紙は警告し、トランプ大統領は、北朝鮮に身柄拘束されたのちに昨年死亡した米国人学生オットー・ウォームビアー氏の件を引き合いに、「感情的な根拠」でもって戦争に進もうとしていると指摘した。

今回のNPRは、仮想敵国に対して核兵器で報復するという不吉な威嚇に加えて、▽米核戦力の大きな更新、▽潜水艦から発射する2種類の核兵器の開発、▽少なくとも12隻の新型コロンビア級原子力潜水艦を建造し2031年までに就役させる計画、▽現在のミニットマンミサイルに代わる、新型の陸上発射ミサイル100基の建造・配備、といった恐るべきシナリオを強調している。

Image: Montage of an inert test of a United States Trident SLBM (submarine launched ballistic missile), from submerged to the terminal, or re-entry phase, of the multiple independently targetable reentry vehicles. Credit: Wikimedia Commons.潜水艦から発射する兵器とは、低出力の潜水艦発射弾道ミサイルと、潜水艦発射巡航ミサイルである。

米議会予算局によると、アメリカの新規核関連予算は1兆2000億ドルにも達する可能性があるという。

核政策法律家委員会(LCNP(ニューヨーク)のジョン・バローズ代表は、NPRは米国の国際法的義務を無視し、核戦争の危険を増している、と語った。

トランプ政権のNPRには「核作戦の遂行は武力紛争の法に従ったものになる」との一節があるという。

John Burroughsそのため、2013年の『核運用政策報告』は、核兵器使用のあらゆる計画は「例えば、軍民の区別と均衡性の原則を適用し、(軍事攻撃に伴う)民間の人やモノの巻き添え被害を最小化するようにしなくてはならない。」と述べている。

米戦略軍の現職と前職の司令官が、武力紛争の法に違反した核兵器使用命令は拒否されると昨秋に公に述べている、とバローズは語った。

「実際のところ、核兵器がこの法律を守って使用されることなどありえません。というのも、大規模で無差別的な効果により、軍事標的と民間人・インフラを区別することは不可能だからです。」とバローズ氏は指摘した。

バローズ氏はさらに、「NPRは、核兵器使用の可能性がある状況、すなわち、サイバー攻撃を含めた『戦略的非核攻撃』への対応を明らかにすることで核兵器の役割を強化しています。」と指摘したうえで、「この変更は、軍縮を促進するために安全保障上の核兵器の役割を低減するとしたNPT上の約束に真っ向から反するものです。軍縮を誠実に追求するとの義務にも反します。そしてこれは、核戦争のリスクを増すものです。」と語った。

例えば、犯人が明らかでない明白なサイバー攻撃は、核兵器使用の理由となりうるが、他の核兵器国が米国のこの政策を模倣した場合、より危険な状況になるだろう、とバローズは指摘した。

Rick Wayman、Programs Director of the Nucelar Age Peace Foundation/ NAPF核時代平和財団プログラム責任者であるリック・ウェイマン氏は、「NPRは、米国や他に核兵器を保有する条約締約国に対して、核軍縮に向けた交渉を誠実に行うことを義務づけた核不拡散条約第6条に一言半句も触れていません。」と指摘したうえで、「この核態勢見直しは、米核政策の方向性の大胆かつ危険な変化を示すものであり、北大西洋条約機構(NATO諸国は、この変更された核政策において米国を自動的に容認したり支持したりすることのないようにその立場を再考せざるを得ないだろう。」と語った。

米国科学者連盟によれば、米国の4000発の核弾頭に比較して、ロシアは4300発、フランスが300発、中国が270発、英国が215発を保有しているという。これらはいずれも国連安保理の常任理事国である。

これに続くのが、他の4つの核兵器国、すなわち、パキスタン(140発)、インド(130発)、イスラエル(80発)、北朝鮮(15発)である。

軍備管理協会で軍縮・脅威削減部門の責任者を務めるキングストン・ライフ氏は、今回のNPRは米国の過去の政策からの決別であり、「トランプ大統領のより攻撃的で直情的な核に関する見方に同調したものだ。」と語った。

「核脅威イニシアチブ」のジョアン・ロールフィング代表は、NPRは、米国がこれまで数十年間にわたって謳ってきた「核兵器なき世界」のビジョンにまったく言及していない、という。

「このNPRから全体として見えることは、我々にはもっと核が必要だということであり、国家安全保障政策において核兵器にもっと役割を与えなくてはならない、というメッセージだ。これは、核不拡散という我々の目標を損なうものであり、長期的に見れば世界はより危険になります。」とロールフィング代表は警告した。

ICAN核時代平和財団のデイビッド・クリーガー所長は、「核兵器の禁止と廃絶が唯一の合理的な選択です。世界の指導者らは今こそ正しい措置を取り、昨年9月20日に国連で署名開放された核兵器禁止条約に署名すべきです。」「そうすることによって、彼らは、ほぼ確実な大惨事から世界を救い、核兵器廃絶という価値ある目標に向かわせ、人類すべてにとってより安全でより安定した世界を作り上げることができるのです。」と語った。(原文へ

翻訳=INPS Japan

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