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INPS JAPAN   IDN-InDepthNews - UN INSIDER

|視点|政治はタイタニック号の旅を楽しみ、かくて地球は破壊される(ロベルト・サビオINPS評議員、Other News代表)(前編)

Photo Credit: climate.nasa.gov【ローマIDN=ロベルト・サビオ】

欧州連合(EU)は、国連気候変動条約の全締約国にあたる195カ国とEUが全会一致で採択し、すでに172カ国が批准している「気候変動に関するパリ協定」へのコミットメントを弱める決定をしてしまったかのようだ。

欧州28カ国の環境閣僚が昨年12月20日にブリュッセルに集まって、CO2排出削減に関するEUの計画を討議し、パリ協定の順守について話し合ったが、デンマークやポルトガルからの多少の抵抗があったものの欧州が決定したのは、ドナルド・トランプ大統領が取った方向に従うということだった。トランプ大統領はすでに、米国の国益を優先し、地球の置かれた状況を無視して、パリ協定からの離脱を表明していた。

COP 21 Logoこれは、価値やビジョンをないがしろにして、狭い国益を優先することの一例だ。もちろん、現在生きている人々がその代償を払うことはない。次の世代の人々が、新たに出現しつつあるますます住みにくくなる世界の犠牲者になるのだ。

地球を救うために全人類を代表して2015年にパリで重大な約束をした人々のほとんどが、(気候変動への取り組みの)結果が不可逆的な形で明らかになる30年後に生きてはいないだろう。人間だけが、自らの生息環境を防衛することも保護することもできないことの証左だ。

現在の地球が置かれている状況の原因を分析してみるとしよう。第一に、パリ協定は、具体的な公約を伴わない善意の寄せ集めに過ぎない。それぞれの国がそれぞれの目標を定め、その履行に責任を持つだけだ。例えれば、何の制裁らしきものも設けないまま、各国のすべての市民に対して、税金をいくら払うつもりがあるか決めさせ、その履行を彼らに委ねているようなものだ。

科学者たちは、パリ協定までの20年で、気候変動は人間の活動によって引き起こされたものであると確証を持って結論づけた。彼らは、それを否定しようとする化石燃料業界の強力で潤沢な資金を伴ったキャンペーンに抗して、そう結論したのである。

国連の下で活動する組織であり、加盟国は194カ国、支援する活動家は154カ国の2000人以上を数える「気候変動に関する国際政府間パネル(IPCC)」は、1988年から2013年という長い時間をかけて、ひとつの決定的な結論に到達した。すなわち、地球が急速に悪化するのを防ぐ唯一の方法は、1850年の地球と比較して気温が1.5度以上上昇しないように温室効果ガス排出を抑えるべき、というのだ。

人類は、産業革命のさなかの1850年、とりわけ19世紀の後半にかけて、温度計を用いて気温の測定を開始した。これにより、石炭などの化石燃料が大気といかに反応し始めたかをよく知ることができる。先の科学者たちは、もし1850年の気温から1.5度以上上昇するようなことがあれば、超えてはならない線を不可逆的に超えることになる、と結論づけた。つまり、人類はこの流れに影響を及ぼすことはもはやできず、気候は制御不能に陥って、地球に非常に重大な帰結がもたらされる、というのである。

Maurice Strong, shortly after having rewarded the Freedom from Want Award in Middelburg, the Netherlands, 29th of May 2010./ Lymantria - Own work, CC BY-SA 3.02015年のパリ協定に関して言うならば、それは、リオデジャネイロで1992年に開かれた「国連環境開発会議(リオ環境サミット)」に始まるプロセスの最終的な帰結であった。この環境問題に関する史上初のサミットの開催実現に尽力したリーダーのうち、ブトロス・ブトロス=ガリ氏とモーリス・ストロング氏は既にこの世にはない。

環境問題を中心課題とすることに生涯を捧げたストロング氏が、会議を政府代表に限定せず、市民社会の代表に対しても門戸を開放したことは銘記されてよい。その結果、2万以上の団体や学者、活動家がリオに集い、国際社会によって認知されたグローバルな市民社会が創設される基礎を築くことになった。

1997年、リオ環境サミットの結果として、温室効果ガスの排出削減を目的とした京都議定書が採択された。その当時からパリ協定まで20年が経過したが、結果はどちらかというと控えめなものになった。パリ協定以後、緊急の課題が残された。世界銀行によれば、2014年には10億1700万人が電気を利用できていない。アフリカでは人口のわずか2割しか電気を使えないのだ。専門家は、温室効果ガス排出の大幅増加を避けるために、アフリカでは再生可能エネルギーを利用すべきだと考えている。

京都議定書とは異なり、パリ協定は真にグローバルな協定となるはずであった。したがって、できるだけ多くの国々を参加させるために - そしてこれはほとんど知られていない「決まりの悪い事実(Dirty Secret)」なのだが - 国連は、厳密な「摂氏1.5度」の目標にこだわらず、受け容れられやすい「摂氏2度」を目標としたのだ。

しかし、残念なことに、人類はすでに1.5度を超えてしまったというのがコンセンサスだ。国連環境計画(UNEP)によれば、仮にパリ協定が改定されることがあれば、気温上昇は6度にもなるという。科学界によれば、これでは地球の大部分が住めない場所になってしまう。

実際、この4年は1850年以来もっとも暑い夏が続いた。そして、2017年、温室効果ガスの排出量は41.5ギガトンとなり、史上最大を記録した。このうち9割は人間の活動に由来するものであるが、再生可能エネルギーは、今まや化石燃料と価格面で競争可能になったにもかかわらず、世界全体のエネルギー消費のうち18%を占めるにすぎない。

もうひとつの「決まりの悪い事実(Dirty Secret)」は、人類は、化石燃料の使用削減について議論するかたわらで、真反対のことを行っているということだ。この瞬間にも、化石燃料業界を補助するために、1分あたり1000万ドルが消費されている。

国連によれば、直接補助金は7750億~1兆米ドルの間であるという。G20諸国の公的額だけでも4440億ドルである。しかし、これが最終的な額ではない。国際通貨基金は、補助金だけが唯一の支払い金ではないとのエコノミストの見方を受け入れている。それは、土壌の破壊、水の使用、政治的関税(いわゆる外部不経済。企業予算の外部にあるコストのこと)のような、地球と社会の使用のことなのだ。こうしたものを含めれば、コストは5.3兆ドルという巨額に達する。2013年には4.9兆ドルだった。化石燃料の使用は、世界全体の国内総生産のうち6.5%分のコストを、各国政府や社会、地球に課している。

しかしメディアはこれを報じない。化石燃料業界の強さを知っている者はごくわずかだ。トランプ大統領が炭坑を再開したがっているのは、時代遅れのこの仕事を失った人々からの票を期待しているからというだけではなく、化石燃料業界が共和党の強力な支持基盤だからだ。米国最大の炭鉱保有者である億万長者のチャールズ・コークデイビッド・コーク兄弟は、前回の大統領選挙戦で8億ドル使ったと明らかにしている。

Transparency International Logoあるいはこう言う者がいるかもしれない。米国ではこんなことはよくある、と。しかし、高い評価を得ている「トランスペアレンシー・インターナショナル」によれば、欧州にも4万人以上のロビイストがいて、政治的影響力を発揮しようとしている。金融部門を監視している「ヨーロッパ企業観測所」は、ブリュッセルだけでも、年間に1億2000万ドルが使われ、1700人のロビイストが雇われている。また、彼らは規則に違反して700以上の組織にロビー活動をしているが、これは労働運動や市民団体の7倍であるという。

化石燃料業界の持つ影響力を見れば、2009年に各国政府が同部門に5570億ドルもの補助金を与え、他方で再生可能エネルギー部門全体にわずか430~460億ドルしか与えなかった理由がよく分かる(数字は国際エネルギー機構の推計)。

明らかに、一般の人びとは、地球の破壊に一役買っていることを十分認識している部門に対してかなりの利益をもたらすお金が、自分たちの懐から流れ出ていることに気づいていないようだ。この部門は、CO2が350ppmが限界だとされている時に400ppmを排出していることを認識しているのである。恐るべき偽善の狂宴が繰り広げられている。

SDGs Goal No. 13国連は2015年、970万人が参加した大規模な調査を行った。対象者は16のテーマの中から重要なものを6つ選ぶように求められた。気候変動もリストに入っていた。650万人の回答者が真っ先に選んだのが「よい教育」であり、500万人以上が選んだ第2位・第3位の回答が「よりよい保健システム」「よりよい労働機会」であった。

200万人以下からしか肯定的な回答が得られず、16テーマのうち最下位だったのが「気候変動」だった。この優先順位の付け方は、気候変動最大の被害者になるであろう後発開発途上国においても同じであった。後発開発途上国の430万人のうち、300万人が教育を優先事項として選んだ。気候変動は最下位で、56万1000票しか集まらなかった。海面の上昇により消滅するかもしれないポリネシアやミクロネシア、メラネシアにおいてですら、気候変動は最優先事項にはならなかった。これは、私たちが今どんな状況にあるのか、すなわち、私たちが数千年間知っているはずの地球の生存そのものが危機に立っているということを、人々が理解できていないことを示す十分な証左なのである。

もし市民がこうした現実を知らず、それゆえに関心を持っていないとすれば、なぜ政治家が関心を持つべきということになるのだろうか? その答えは、政治家は、市民によって彼らの利益を代表するために選ばれるのだから、もっと多くの情報を得たうえで決定を下せるはずだ、というものだ。しかしこれはどのように聞こえるだろうか? ロビイスト達が自らの利益のために「雇用」や「安定」を売りにしている時に、それよりも魅力的なものがあるだろうか? 後編に続く原文へ

編集=ラメシュ・ジャウラ/翻訳=INPS Japan

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