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「リビアモデル」は役立たない:朝鮮半島には平和と核軍縮に向けた独自のプロセスが必要(レベッカ・ジョンソンICAN共同議長・アクロニム研究所所長)

Photo: Women Cross DMZ, in partnership with the Nobel Women’s Initiative and the Women’s Peace Walk, a coalition of more than 30 women’s peace organizations in South Korea, will travel to Seoul, South Korea May 24-26 for the #WomenPeaceKorea: A New Era delegation. Credit: Stepehen Wunrow | Women Cross DMZ【ソウルIDN=レベッカ・ジョンソン】

私は今、ソウルで「非武装地帯を超える女性たち」主催の平和行動や国際会議に参加している。

メディアでは、ジョン・ボルトン国家安全保障問題担当大統領補佐官が、待ち望まれていたシンガポールにおける米朝首脳会談の開催を危ういものにしたのではないかという話題でもちきりだが、はたしてそれがボルトン補佐官の意図だったのだろうか?

John R. Bolton at CPAC 2017 February 24th 2017韓国の文在寅大統領がワシントンでドナルド・トランプ大統領と首脳会談を開催するなか、シンガポールにおける米朝首脳会談の成功に向けて、あらゆる努力がなされることが期待されている。そうしたなか、ボルトン補佐官が北朝鮮の非核化に「リビア方式」を求める言及をしたのは全く何の助けにもならないものだった。

意図的だったかどうかにかかわらず、ボルトン補佐官の言及は、予想通り、2011年のリビアの「アラブの春」において同国の独裁者ムアンマール・カダフィが屈辱的かつ残虐な死を遂げた出来事を思い起こさせるものだった。カダフィが殺害された年に北朝鮮で世襲による権力を継承した金正恩は、カダフィに似た運命に遭遇するのではと怯えていると伝えられており、ボルトン発言に動揺したとみられている。これに対して、トランプ大統領は、金委員長の安全を改めて保障すると述べて安心させようとしているが、一方で米政府高官らは、金委員長が米国による非核化の要求を実現しないならば、カザフィが辿った運命が自身にも起こりうることを示唆しているようだ。

また、金委員長が、4月27日に文在寅大統領との首脳会談で始めた南北対話をさらに詳細に協議する高官級会談を中止したことも大いに関連している。金委員長は(延期されていた)米韓の合同空軍演習が再開されたことと、元北朝鮮の外交官で脱北したテ・ヨンホ氏が韓国の国会で発言したことに憤慨しているとみられている。

ボルトン補佐官が「2003年から2004年にかけて行われたリビアモデルに言及したのは、誤りであったか、そうでなければ威嚇のシグナルを送るものであった。

実際には、この言及は誤りというべきだろう。なぜなら、2003年から2004年にかけてリビアは核兵器を全く保有していなかったからだ。確かにカダフィは数年に亘って核兵器保有を望む姿勢を示してはいたが、実際の核兵器はおろか核計画も深刻な段階にあるものではなかった。

Muammar al-Gaddafi/Wikimedia Commonsしかし、英国のトニー・ブレア首相と米国のジョージ・W・ブッシュ大統領の支持を得て妥結したこの合意自体は、査察官の立ち入りと検証を実施して、カダフィの生物・化学兵器計画を廃棄させるうえで積極的な役割を果たした。また、この合意には核不拡散の要素も認められる。カダフィはこの合意によりパキスタンのA.Q.カーン博士を罠にかけるおとり捜査に協力し、結果的に同博士による悪名高い核の闇市場(核のデザイン、部品を含む核技術を売買)の大半を解体することに成功したからだ。カーン博士の顧客の中には、北朝鮮、イラン、サウジアラビア及びいくつかの中東諸国が含まれていると報じられている。

たしかにリビアモデルには、こうした軍縮・不拡散分野で重要な役割を果たした側面があることを過小評価してはならないが、それでも、これは非核化のモデルではなかった。当時この合意が成立したのは、米国と英国がイラク戦争の泥沼に行詰っていたなかで、カダフィとブッシュ並びにブレアの個人及び政治的利益にかなうものだったからだ。

この合意は、カダフィにとっては、パンアメリカン航空爆破事件以来15年に及んでいた国際的な孤立から脱却する千載一遇の機会だった。一方、イラク戦争が長期化し兵士の死傷者数が増加する一方で、ハンス・ブリックス国連監視検証査察委員会(UNMOVIC)委員長がイラクで大量破壊兵器が発見されなかったと警告するなか、この合意は、ブッシュとブレアにってはこうした逆境を跳ね返す念願の宣伝材料だった。こうして英米の首脳は、大々的な宣言工作によりリビアの非核化を実現したとして称賛を浴びることとなった。

カダフィはこの合意で協力したことにより外交的な孤立からの抜け出し、経済援助を手にすることができた。また、英米両国からは軍事・諜報面での援助も得ている。その中には、当時海外に亡命を求めていたリビアの反政府市民社会組織のメンバーをカダフィに引き渡す取引も含まれていた。アブドゥル・ハキム・ベルハジ氏と妊婦だった妻のファティマも当時の被害者であり、英国政府は最近になって、ベルハジ氏が6年間に亘って拷問・監禁される原因となった2004年当時の英国の行動について、夫婦に公式に謝罪している。

ボルトン補佐官がリビアモデルを想起させることで何を意図したのであれ、米朝の指導者や高官が問題発言をしたり、間違ったボタンを押す危険性や影響がある。今も多くのマスコミが、英米とカダフィの取引がリビアの非核化をもたらしたという偽りの物語を律儀に繰り返しているのを見ると憂慮せざるをえない。

Image: Montage of Trump and Kim. Credit: Wikimedia Commonsその結果、中にはこの誤った事例から、非核化の決断が数年後のカダフィの悲劇的な死につながったとする事実無根の教訓を引き出すものもでてきた。彼らはこの教訓から、金委員長の今後の生き残りは、現在保有している核能力の保持にかかっており、従って朝鮮半島の平和と非核化交渉は失敗する運命にあるという拙速な議論に飛躍している。平和、軍縮、安全保障というものは、誤った推定やまやかしや恐れから諦めるには、あまりにも重要である。こうした項目は、効果的な外交に加えて、事実と証拠、そして分析に基づくものでなくてはならない。さらに、当事者の心理、恐れや不安、さらには当事者の個人や国家の利益や目的を理解できなければならない。

長年が経過し、核軍縮はたった一回の首脳会談で成し遂げられるものではなく、平和プロセスと実質的な軍縮関係や道筋を創出するには、複数の首脳会談と南北対話の開催が必要なステップとなる。

ICAN指導者らが軍縮を交渉するのは、全ての当事者が安全保障と平和は核兵器がなくとも達成できるものであると考え、それを実現するために協力し合うときだ。核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)もこうして国連における交渉をへて2017年に核兵器禁止条約の採択を実現した。

軍縮を実現する最良の方法は協調外交によるものだ。近年の経験から言えることは、北朝鮮は強制によって核を放棄することはない。2017年に採択された核兵器禁止条約は、朝鮮半島の安全保障をめぐる全ての当事者が実現したいと表明している核軍縮目標の達成と持続に資する重要な法的文書かつ外交手段を提供している。

朝鮮半島に、リビアとの誤った比喩は必要ない。朝鮮半島の人々と南北朝鮮の指導者は、平和的で核兵器のない朝鮮半島を実現するための独自のモデルを創出するよう、触発され後押しを受ける必要がある。(原文へ

翻訳=INPS Japan

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