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INPS JAPAN   IDN-InDepthNews - UN INSIDER

|視点|ヘイリー国連大使は、自らの誤った「改革」を人権団体のせいにしている(ケネス・ロス ヒューマン・ライツ・ウォッチ代表)

 Nikki R. Haley, Permanent Representative of the United States to the UN, addressing the Security Council meeting on 9 July 2018. Credit: UN Photo/Eskinder Debebe.【ニューヨークIDN-IPS=ケネス・ロス】

ニッキ―・ヘイリー氏は、ドナルド・トランプ政権の国連大使としてニューヨークに着任して間もなく、米国を支持しない者は「その名を書き留める(相応の対応を取る)」と述べた。当時ほとんどの人々は、ヘイリー大使は国連安全保障理事会(安保理)で米国の主張に反対した国々のことに言及しているのだと考えた。

しかし、最近になってヘイリー大使はヒューマン・ライツ・ウォッチアムネスティ・インターナショナルに対する非難を始めた。ヘリテージ財団の会合で登壇したヘイリー大使は、両人権団体が、自身が提唱している国連人権理事会の改革案に反対することで、「ロシアと中国の側についた」と述べたのだ。

 Kenneth Roth/ Human Rights Watch政府から敵意を向けられるのは、人権関連の仕事に付随する職業上の危険にほかならない。どこの政権も、自らの不正を調査で暴露されたり、その結果、変革を求める民衆のプレッシャーに晒されたくはないだろう。例えば、ヒューマン・ライツ・ウォッチが、ルワンダ政府による拷問の使用を暴露した際、ルワンダ政府は、同人権団体は「注目を得ようと必死になっている。」と非難した。また、私たちが、ベネズエラ政府の腐敗問題に端を発する弾圧事件を取り上げた際には、同政府は、「これらの人権団体は、北米帝国によるイデオロギーの武器」だと断言した。

数年前、私たちが中国政府について、個人活動家を抑圧していると表現したところ、中国政府の報道官は、「彼ら(=こうした人権諸団体)は常に視力に問題を抱えてきた…おそらくバラ色の眼鏡をつけている(=楽観的過ぎる)か、目を細めているだけのことだろう。」と皮肉混ざりの声明を出してきた。

これまで米国のいかなる歴代政権も、私たちの監視を免れることはなかった。例えば、私たちは、中央情報局(CIA)による拷問や恣意的な拘留、米国政府によるサウジアラビアへの武器輸出、飢餓に苦しんでいるイエメン人に対する爆撃、エジプト政府が、いかなる民主主義的な動きを弾圧しているにも関わらず、同国に対して安全保障上の援助をおこなっていること等も取り上げてきた。また米国内においても、大量投獄から拘留中の移民に対する取扱いまで、様々な人権問題を取り上げてきた。

Photo: Putin gifts Trump a Telstar Mechta, the official match ball for the knockout stage of the 2018 FIFA World Cup. CC BY 4.0これまでも、米国政府の高官が、周期的に私たち人権団体の見解と意見を異にすることはあった。しかし、(それもまさにトランプ大統領とプーチン大統領がヘルシンキで首脳会談を行っているときに)私たちが、ロシアと中国に与しているとして非難されたのは初めての経験だった。また、ヘイリー大使のように、米国の政府関係者が、(同国に対する)非難を理由に自身へのアクセスに応じないと発言した前例は思い浮かばない。

ヘイリー大使の辛辣な発言の背景には何があるのだろうか。トランプ政権が人権理事会を離脱した主な理由は、同理事会によるイスラエル批判だった。トランプ政権は、イスラエルの人権違反に関するいかなる批判に対して常に反対の立場をとってきたうえに、国連人権理事会は、必然的にイスラエルによる人権違反を非難することになるため、今回の米国の離脱を称賛した国はほとんどなかった。

米国政府はまた、一部の人権侵害が指摘されている国が国連人権理事会の活動を妨害すべく理事国入りしているとして、同人権理事会の構成内容も非難した。しかし人権理事会は、こうしたリスクを避けるために、国連加盟国を5つの地域に分けたうえで、国連総会の無記名投票で過半数票を得、かつ、上位(議席数内)の得票を得た国が選出される仕組みになっている。

こうした競争プロセスが機能し、一部の人権侵害が指摘されている国が理事国メンバーへの選出に失敗している。最近の例では、シリアのアレッポ東部を爆撃していたロシアが、2016年10月の理事会選挙で落選している。

しかしいくつかの地域では、理事国の割当枠と同数の立候補国を出すことで、この競争プロセスを巧みに回避して無風選挙に持ち込んでいる事例もみられる。伝統的にこの手法を繰り返してきたのが、米国が属する「西ヨーロッパとその他のグループ」だ。こうした背景から、米国政府が他の地域グループに対して同じ手法をとらないよう説得するのは難しい状況にある。

このように選挙制度を巡る問題があるものの、これまでに人権問題にコミットした多くの国々が人権理事会に選出され、シリアやイエメン、ミャンマー、北朝鮮、スーダン、ブルンジ等、世界で最も対応を必要とする多くの緊急事態について、調査を開始し、非難声明を出し、問題解決に向けた国際社会の圧力を生み出してきた。しかし、トランプ政権の一面的な人権政策にとって、これらの緊急事態は、イスラエルを擁護することに比べたら重要な問題ではないようだ。

人権活動家で、国連人権理事会の質を向上させるという目標について異論があるものはいないだろう。問題はどのようにそれを実現するかということだ。問題は多くの国が国連人権理事会の有効性を向上させたいと思っている一方で、それを妨害したい国々もあるとう現実だ。国連人権理事会の事務局があるジュネーブで改革プロセスが始まっているが、全会一致をルールとしているため、議論を前進させるのは難しいが、同時に大きな後退を回避することもできる。

この改革プロセスの中で、米国が苦情理由の一つとしてきたイスラエル占領下の領土に関する議題項目が取り除かれる可能性は低いことから、トランプ政権は、(人権理事会より)制約が少ないが一方でリスクを抱えることになる国連総会における議論を望んできだ。しかし多数決で議決をする国連総会では票が割れるため、むしろ人権問題に効果的に取り組むという「改革」は後退する可能性の方が現実的になってしまう。結果的に、米国の改革案を支持した国はなかった。ヒューマン・ライツ・ウォッチとアムネスティ・インターナショナルも、米国の改革案に反対の立場を表明したのだが、このことが、後になって、ヘイリー大使から非難を受けることにつながってきた。

Photo: Poverty in America Documentary 2017 on YouTube米国が国連人権理事会を脱退した主な動機はイスラエルを擁護するというものだったが、異なる諸要因が、脱退のタイミングに影響を及ぼしたかもしれない。ヘイリー大使が脱退を発表したタイミングは、ザイド・フセイン国連人権高等弁務官が、米国の南部国境地帯で移民の家族を引き離していたトランプ政権の政策を「恥知らず」だと非難したのと同じ週であり、国連特別報告者が米国における極度の貧困に関する報告書を発表しようとしていた矢先だった。

このタイミングが意味するものは、米国の国連人権理事会からの脱退には、より大きな問題が潜んでいることを物語っている。多くの米国人は、米国憲法上の諸権利と市民権が自分たちを守っており、人権とは他の(=米国人以外の)人々を守っているものと、誤って認識している。しかし、国連人権理事会からの脱退は、トランプ政権の自身の活動を制限する全ての権利を幅広く拒否する姿勢を反映したものである。しかし皮肉なことに、トランプ政権の国際人権擁護団体に対する復讐は、結局は、米国人にとっても「人権」がいかに大切なものであるかを再確認することにつながる可能性がある。(原文へ

翻訳=INPS Japan

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