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より平等な世界を求めて

Photo: Girl on roof of a factory in India. Source: UNFPA © Andrea Bruce/Noor【ルンド(スウェーデン)IDN=ジョナサン・パワー】

おそらく、結局のところ、社会をより平等にしようとすれば、世界には少なからず暴力が必要であるという議論がある。これは、スタンフォード大学のウォルター・シャイデル教授による新刊『グレイト・レベラー』(Great Leveler)の結論の一つである。

シャイデル氏は、同書の中で私たちがよく知る事実―世界で最も裕福な62人が貧しい方から数えて人類全体の半数が保有する富の合計と同じだけのものを持っているという事実―から書き起こしている。ちなみに62人と言えば、ロンドンの2階建てバスにちょうど収まるぐらいの人数だ。

Pope Francisco/ Wikimedia Commonsこの不平等は年を追って悪化しているようだ(もっとも、1929年まで遡れば状況は今と同じ程度になるが)。2000年前の帝政ローマ時代、富める者は平均的な市民の約150万倍の富を有していたが、これは今日でいえば、ビル・ゲイツ氏と平均的な米国人との間の比率と同じぐらいである。

プラトンは紀元前4世紀に「1つではなく2つの国家がある。片方は貧者の国、他方は富める者の国である。」と、当時の貧富の格差に当惑する気持ちを記している。イエス・キリストも後に同じテーマを取り上げた。今日のローマ教皇もそうだ。一部の者に富が集中し貧者の暮らしむきが一向に改善しないという状況は、キリスト教・イスラム教・仏教・ユダヤ教のいずれの教えにおいても全く認められていない。これらの宗教の信者が自らの富を正当化しているとしたら、彼らは事実上の棄教者ということになる。

シャイデル氏の主張は、「ショック療法なしに何も変わらない」というものだ。歴史を紐解けば、黒死病がそうした一例にあたる。黒死病によりあまりにも多くの労働者が死亡したため、深刻な労働力不足に直面した地主層は、賃金を相当に引き上げざるを得なかった。

The New National Health Service leaflet/ Public Domain驚くべきことに、戦争でさえも特別な状況を除いて平等をもたらさなかった。第一次世界大戦までは、戦闘は地理的に局所的なものだった。それまでの時代における戦争は、一般的に、社会に深く浸透することがなかった。他方で、第二次世界大戦は、英国社会の大部分を巻き込み、富める階級に変革を強いることになった。彼らは、労働党政権が戦争の矢面に立たされた一般兵士たちの負担に「報いる」政策として国民保険サービスを導入するなど、社会改革の推進に協力していかざるを得なくなった。

歴史を数世紀遡れば、農民蜂起や内戦は不平等の解消に資するところがほとんどなかった。フランス革命もまたしかりだ。

そうしたなか、中国共産党が主導した土地改革は例外的なものだった。しかし、毛沢東の革命は鄧小平によってひっくり返され、不平等解消のプロセスは終わった。毛沢東の土地改革は、根の深い革命ゆえに不平等解消のプロセスを実現することができたが、それは暴力や暴力による脅しがあって初めて機能した。

では、非暴力運動はどうだろうか。 暴力なしに不平等解消を実現した唯一の確実な事例は、ラテンアメリカ諸国が2000年代初頭にたどった道である。しかし実現された内容はかなり限定的なものであった。それは持続可能であろうか。ブラジルでは、労働党のルラ・ダシルバ大統領の成果が、保守派の新大統領ジャイール・ボルソナーロ氏によって脅かされている。他方、メキシコでは社会主義的な新大統領が改革を前進させるとみられる。

冷戦後の今日の世界においては、米英では労組の力が弱められ、いくつかの国では税率が引き上げられ、各地の非熟練労働者らがグローバル化の波に苦しんでいる。不平等はさらに深刻になっている。冷戦は、社会組織にそれほど深く浸透した戦争ではなかった。

共産主義が終焉し、ロシアや中国、東欧諸国はみな一層不平等な社会になった。ロシアや中国では、不平等の問題はとりわけ深刻である。

ひとつの希望的な神話を再審に付さねばならない。一般的に言って、民主主義の導入は、経済成長を刺激することによって貧困層の賃金や教育、保健、福祉を向上させはしたが、それ自体ではより平等な社会を実現することはなかった。

世界が不平等だとしても、それは問題だろうか。実に大いに問題なのだ。次から次に出される国際通貨基金や世界銀行による調査報告書が、不平等によって経済成長が妨げられていることを証明している。

SDGs Goal No. 10しかし、どのような対処方法があるというのでろうか。 大量動員の時代は終わりを告げた。ロベスピエールや毛、ゲバラといった革命家による血塗られた革命は、もう誰も経験したくないのだ。トマス・ピケティ氏スティーブン・ピンカー氏が近著で証明しているように、世界はより暴力的でない場所になりつつある。暴力に起因する死に直面する可能性は、この数世紀にわたって下がってきた。欧州やロシア、日本、中国のような高齢化社会では、高齢者が(若者と比べて)暴力に不寛容であり、政治的解決策としての暴力に比較的魅力を感じない傾向にあることから、より暴力的でない社会になっていくだろう。

「この問題への解決策はそれほど多くない。」とシャイデル氏は記している。将来的には、「高まる不平等の波を抑えるために、大陸ヨーロッパの社会民主主義国が高税率と広範な再分配の仕組みを維持・調整し、アジアの民主主義諸国が課税前収入の例外的に平等な分配を維持することは、難しくなってくるだろう。グローバル化と前例なき人口構成上の変化の圧力がこれに加わって、不平等はますます強まるばかりだろう。」

歴史を通じて、取得の均等を目指す試みのほとんどが、悲しみや不幸をもたらしてきた。私たちは、何を望むべきかについて慎重であらねばならない。(原文へ

※ジョナサン・パワー氏は『インターナショナル・ヘラルド・トリビューン』紙で17年にわたり国際問題のコラムニスト・コメンテーターを務めた。

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