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INPS JAPAN   IDN-InDepthNews - UN INSIDER

米ロの行動が冷戦を引きおこすとの懸念が強まる

Photo: A wide view of the Security Council meeting on threats to international peace and security. 22 August 2019. United Nations, New York. Credit: UN Photo/Manuel Elias.【ニューヨークIDN=サントー・D・バネルジー】

核問題の専門家や平和活動家が、中距離核戦力(INF)全廃条約の崩壊に関して強い懸念を表明する中、互いに相手が約束に違反しているとして非難の応酬を続ける米ロ両国は、あたかも冷戦時代を想起させる行動をおこしている。

INF条約は、米国のロナルド・レーガン大統領とソ連の指導者ミハイル・ゴルバチョフの間で1987年に調印された。射程500~5500キロメートルの地上発射型の弾頭・巡航両ミサイルを、核兵器と通常兵器の双方に関して廃絶し、恒久的に保有しないことを約したものである。

ダリル・G・キンボール氏が指摘するように、同条約は、二大核大国が初めて核兵器の削減に踏み切り、特定のカテゴリーの兵器を全廃し、検証のための広範な現地査察を容認することに合意したものである。この条約の結果として、米ソ両国は、短・中距離のミサイルを、条約の履行期限である1991年6月1日までに計2692発、廃棄した。

ロシアの主張:「アメリカは軍拡競争の準備を進めている」

SDGs Goal No. 168月22日に安保理を舞台に交わされた激しい議論で、ロシアのドミトリ・A・ポリャンスキー国連次席大使は、「ロシア・米国両国は、一時期はINF条約を履行していたが、この条約は米国にとって『望ましくないもの』になってしまった。」と指摘したうえで、「米国はルーマニアにミサイルを配備し、中距離ミサイルがこの地域で使用可能なものである事実を明確にした。そして今や、同様のシステムの開発・配備に関する制約はなくなり、軍縮の取り決めは脇に押しやられてしまった。」と語った。

ポリャンスキー次席大使はまた、「米政権の中心人物らが、ロシア・米国間の新戦略兵器削減条約(新START)を現在の形では履行するつもりがないことを明確にしてきた。」と指摘したうえで、「米国は少しずつ、武力で威嚇しながら、かつての時代に回帰しつつある。我々は今、軍拡競争の寸前にある。もしドナルド・トランプ(米大統領)を信じるなら、米国は軍拡競争に突入する準備ができているということだ。」と語った。

ポリャンスキー次席大使はまた、「ロシアの軍事予算は、米国の7000億ドルや北大西洋条約機構(NATO)の1兆ドルよりも遥かに少ない。さらに、米国では兵器開発の予算が軍事予算に含まれているにもかかわらず、ロシアが非難されている。」「ロシアは地上発射型巡航ミサイル『9M729』に対する米国の非難について、その内容を明らかにするよう再三要請した無視された。またこのミサイルを議題とした協議の開催を米国に打診したが、米国からの代表は欠席した。」と語った。

米国の主張:「ロシアには欧州の標的を撃破する能力がある」

米国のジョナサン・コーエン国連大使代行は、「ロシアは条約に違反する決定を下して、新型ミサイルを配備した部隊を複数編成している。」と主張した。そして、「米国は中距離核戦略全廃条約の履行に復帰するようロシアに促したが、結局条約からの脱退を決めた。」と語った。

コーエン大使代行は、現在の状況について、「中露は平然と軍備増強を続けながら、米国が自制心を働かせる世界を望んでいるようだ。」と説明した。また、「米国とNATOの同盟国は、ロシアは欧州の標的を撃破する能力を見せつける行動をとり、現在は失効してしまったINF条約に違反していたと認識している。中国もまた同様のシステムを配備している。」とコーエン大使代行は語った。

コーエン大使代行は、米国の活動に関して、「現在のところ地上発射型の[中距離]ミサイルは保有していない。」と強調したうえで、「中国は条約当事国であれば禁止されていたミサイル約2000発を保有している。」と語った。また、「米国のミサイル発射システムが条約義務を遵守しているのに対して、ロシア・中国は真逆の方向に進みつつある。新型核兵器の開発、ミサイルの増強、戦力の近代化、水中ドローンなどの新兵器の追加取得がなされている。」と語った。

コーエン大使代行は、ロシアで8月9日に核関連の爆発を引き起こした原因に言及しつつ、ロシア・中国が引き起こした他の懸念すべき出来事にも触れた。米国は、INF条約の義務を超える効果的な軍備管理に対して前向きであると同氏は述べた。

中国:「米国は条約脱退で単独行動を取ろうとしている」

UN Secretary Building/ Katsuhiro Asagiri of INPS中国の張軍国連大使は、「ロシアと米国は、条約遵守を巡る意見の相違について対話を通じて適切に処理すべきだった。しかし米国が条約から脱退したことで、条約の範囲を超えた負の影響が及ぶことになるだろう。中国を口実とする条約の放棄は受け入れられず、米側のむやみな非難も認められない。」と強調した。

「突出した不安定要因により国際安全保障を脅かされており、多国間主義こそがこうした難題に対処するためのカギを握る。あらゆる国々が、全人類の持続可能な共通の未来構築に向けた努力を行い、他国の安全保障を損なうような行動を慎むべきだ。」と張大使は語った

さらに張大使は、「米国の条約脱退は、条約を破壊し、ミサイル配備などの単独行動を取ることを意図したものだ。中国は関連条約を遵守している。最大の核戦力を保有するすべての国々は、自らの軍縮義務を緊急に果たすべきである。」と指摘したうえで、ロシアと米国に対して、「対話に復帰し、戦力を削減し、現在の新START条約の更新も含めて、軍縮の目標に向かって前進する条件を作り出すべきだ。」と訴えた。さらに、「中国自身は専守防衛的政策を追求しており、多国間の軍備管理に加わり、いかなる軍拡競争にも反対している。」と語った。

ポーランド:ロシアに単独の責任がある

ポーランドのジョアンナ・ロネッカ国連大使(8月の安保理議長)は、「軍備管理と軍縮の約束は検証され、すべての当事国が信義をもって守らねばならない。」と語った。また、INF条約の下で約3000発のミサイルが撤去され、検証可能な形で廃棄されたことを指摘し、米国が条約を維持しなかったことに遺憾の意を示した。

ロネッカ大使は、「欧州の安全保障枠組みの重要な要素が喪失したことは、国際安全保障にとってさらなる試練となるだろう。」と指摘したうえで、INFの失効は一義的にロシア側に責任があり、効果的かつ検証可能で透明な形で条約を履行する措置をとる意思をロシアが示さなかったことに遺憾の意を表明した。

ポーランドは他の米同盟国と同じく米国のINF脱退の決定を支持しており、ロネッカ大使は、「(米国の決定は)ロシアの行動に対する合理的かつ理解可能な反応だ。」と語った。

南アフリカ共和国(南ア):「米国とロシアは新STARTの協議を再開すべき」

以前から一部の核保有国が核不拡散条約(NPT)に明白に違反する形で、核戦力や運搬手段の近代化を主張していることに懸念の声を上げていた南アのジェリー・マシューズ・マトジラ国連大使は、「(INF条約のような)確立されてきた軍備管理枠組みが破棄され、欧州だけではなく世界全体を核戦争の危険に晒していることは、きわめて遺憾だ。」と語った。

マトジラ大使は、米ロ両国に新STARTが失効する2021年を前に同条約の延長に向けた協議を再開するよう求めた。また、南アが核兵器を開発しながら自発的にそれを廃棄した唯一の国である事実を指摘した。

マトジラ大使は、国連加盟国に対して、2017年に採択された核兵器禁止条約を署名・批准するよう呼びかけ、核軍縮と核不拡散は相互に補強的なプロセスであることを強調した。そして、核不拡散ばかりを選択的に強調しながら、核軍縮に関しては何の努力もなされないことで、核不拡散体制は弱体化していると警告した。

国連軍縮問題上級代表:INF条約の失効で重大な制約が外された

Izumi Nakamitsu/ Photo by Katsuhiro Asagiri「国際の平和と安全への脅威:ミサイル問題」と題して安保理に対してブリーフィングを行った中満泉国連軍縮問題上級代表は、「INF条約が最近失効したことで、不安定要素となるカテゴリーのミサイルの開発・配備に対する数少ない制約の1つが除去されることになった。」と遺憾の意を述べた。

中満氏は、「今日、ロシアと米国だけが、両国が保有する特定のミサイルの数に法的拘束力のある制約を課している国であっただけに、INF条約の失効により、ミサイルの開発や獲得、拡散の無制限な競争が引き起こされてはならない。」と強調した。

中満氏は、国連事務総長が全ての加盟国に対して国際的な軍備管理への共通の新たな道に関する合意を緊急に追求すべきと訴えたことに呼応し、「既存の多国間協定に未加盟の国々も含めて、ますます多くの国々が弾道ミサイル能力を獲得し開発するようになってきている。」と語った。

実際、「ミサイル技術管理レジーム」が定義するところの「核能力」の基準を超える弾道ミサイル能力を持つ国は、20カ国を超えている。核保有国は、顕著なミサイル能力やミサイル防衛能力を積極的に追求しており、国際の平和と安全に不明瞭かつ潜在的にマイナスの影響を与えている。」と中満氏は主張した。

「超音速で運用できるミサイル技術を利用した兵器システムの開発は安全をさらに損ない、不安定な軍拡競争を招きかねない。」と中満氏は警告した。(原文へ

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