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|視点|気候変動:人間中心の取り組み(池田大作創価学会インタナショナル会長)

Dr. Daisaku Ikeda /Photo Credit: Seikyo Shimbun【東京IDN=池田大作】

「最も多くの人が共有するものは、最も注意が払われにくい」とは、古代ギリシャの哲学者・アリストテレスの箴言である。

人間が陥りやすい心理を剔抉した言葉だが、現代においてその意識転換が特に急務となっているのは、地球温暖化の防止に向けた取り組みといえよう。

4年前、その国際的な枠組みとなる「パリ協定」が合意され、対策の強化が目指されるようになったものの、国連のアントニオ・グテーレス事務総長が人類の「生存の脅威」と警鐘を鳴らすように、“気候変動が我々の取り組みを上回るスピードで進んでいる”という状況が生じているからだ。

実際、今年に入ってからも、ヨーロッパ各国やインドを熱波が襲ったほか、シベリアやアラスカなどの北極圏が記録的な高温に見舞われた。世界気象機関(WMO)は、各地で起こる異常気象の原因は一様ではないが、長期的な地球温暖化の傾向と関係している面は否めず、極端な異常気象は今後も続くとの予測を示している。

こうした状況を踏まえ、「気候危機」や「気候非常事態」との言葉も叫ばれる中、9月23日にニューヨークの国連本部で気候行動サミットが開催される。温室効果ガスの削減といった温暖化の“原因”をめぐる対策とともに、異常気象がもたらす被害という温暖化に伴う“影響”をめぐる対応について、各国が連帯した行動を強めていくことができるのかどうか――。その正念場を迎えているのである。

南極とグリーンランドの巨大な氷床の融解が引き起こす海面上昇や、熱波と集中豪雨などの異常気象による被害は、さまざまな国の経済や産業に打撃を与えるだけではない。今や気候変動は、強制的な移動を余儀なくされる人々を増加させる要因ともなっている。

私が創立した戸田記念国際平和研究所では、近年、この問題に焦点を当てた「気候変動と紛争」と題する研究プロジェクトを推進してきた。その研究を通して浮き彫りになったのは、太平洋の島嶼国の人々が直面している状況の深刻さである。

この地域では、海面上昇などの影響を特に強く受ける中で、他の場所への移住を迫られる人々が少なくない。しかし、その移住がどのような重い意味を持つのかという現実は、しばしば見過ごされてきた。

多くの島では、生まれ育った土地を“母”のような存在として捉える伝統があり、深い精神的つながりをもった土地からの移動を迫られることは、自分自身の根源的なアイデンティティーを失うことに等しい。そしてまた、生まれ育った土地には、新しい場所への移住による「物理的な安全環境」の確保だけでは決して得ることのできない、「存在論的な安心感」ともいうべきものがあるのではないか――。

研究プロジェクトでは、こうした人間と土地との関係性に対する眼差しを、気候変動の対策を考える上での重要な要素の一つとして組み込む必要があると提起しているのだ。

この眼差しの問題を考えるにつけ、私が思い起こすのは仏教で説かれる「沙羅の四見」の話である。同じ一つの場所を見ても、見る人の心の状態によって風景の映り方が違ってくることを示唆した譬えだ。

例えば、同じ森林を見ていても、自然の美しさに着目する人もいれば、経済的な生産性の観点から価値を判断しようとする人もいる。

問題なのは、その映り方の違いによって、自分の意識にないことが自分の世界から欠落してしまうことだ。その結果、ある人々にとって“かけがえのない重み”を持つものが奪われる危機が生じていても、多くの人が気づくことなく事態が悪化してしまう恐れがある。

同じように、気候変動の対策を考える際にも、経済的な影響のような数値化されやすいデータだけに目を向けるのではなく、温暖化に伴う被害で苦しむ各地の人々をはじめ、ジェンダーなどの差別構造によってもともと弱い立場にある人々の思いを、十分に汲み取った対策を講じていく必要があるといえよう。

その意味で、気候行動サミットに出席する各国の首脳らに求められるのは、地球温暖化という課題を通して“世界とどう向き合うのか”を共に見つめ直し、行動の連帯を強固にすることではないだろうか。

「パリ協定」の積極的な推進のために、発電や移動手段、食料の生産と流通をはじめ、あらゆる分野での温室効果ガスの削減とともに、植林などの温室効果ガスの吸収量を高めるための方策に関し、英知を結集しなければならない。

国連では、この開催に先駆ける形で9月21日に、世界の青年たちの代表が集っての「ユース気候サミット」も行われる。

地球温暖化に歯止めをかけることは容易ではないが、青年たちによるイニシアチブを積極的に受け止めて、そこから希望のシナリオを紡ぎ出し、より多くの人々の行動を喚起していけば、持続可能な地球社会を築くための道は必ず開くことができるはずだ。その挑戦を成し遂げることに、21世紀の人類の命運がかかっていると思えてならない。

INPS Japan

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