www.facebook.com
www.twitter.com
www.linkedin.com
www.blogger.com
www.myspace.com
RSS Feeds
 
INPS JAPAN   IDN-InDepthNews - UN INSIDER

カトリーナ後のヒスパニック系:雇われたり、追放されたり?

 

【ニューヨークIPS=キャサリン・スタップ】
 
米国土安全保障省は、ハリケーン「カトリーナ」によって家を追われた移民が政府の支援を受けようとする場合に、国外追放に処されることはないとの確証を与えることを拒否した。一方で同省は、不法滞在者を就労させたメキシコ湾岸地域の雇用主に対する制裁を一時的に停止するとの方針を打ち出している。

巨大な再開発計画がメキシコ湾岸の米南部諸州で動き始めているが、建設会社は、市街の洗浄作業と建築のために大量の労働者を雇っているといわれている。そして彼らの多くは、住民票を持たない日雇い労働者である。

 
しかし、不法滞在中の被災者は、そうした恩恵に浴することができない。当局はすでに、テキサス州のエルパソにある避難所に向かっていた3人の移民を逮捕し、湾岸地域からヴァージニア州にバスで避難途中の2人も逮捕された。
 
 
ワシントンにあるヒスパニック/ラテン系の権利向上団体、「全米ヒスパニック系人種評議会(National Council of La Raza、以下NCR)」のジャネット・マーグイア会長は、声明の中で、「ホワイトハウスは人々に表に出てくるよう促しているが、国土安全保障省(DHS)は[不法滞在者の]逮捕方針を崩していない。われわれはこの状況を懸念している」と述べた。「このために、カトリーナによってすでに生じている公衆衛生や安全上の大きな危機がさらに悪化することも考えられる」とマーグイア氏は言う。

DHS
は、英語とスペイン語の両方で今月初めに発表された声明の中で、不法滞在の移民も含め、ハリケーン「カトリーナ」の全ての被災者に対して、援助を受けるよう促している。メキシコのヴィセンテ・フォックス大統領も、テレビ中継を通じて、「不法滞在者であっても何らの圧力をかけられることもないし、起訴されることもない」との米当局からの約束があったと述べた。

しかしながら、関係者がIPSに語ったところによると、「不法滞在の避難民に対して米市民と同じ処遇をするよう政府に求めたNCRやその他の団体による公開アピール文の発表から1週間以上たっても、DHSは、移民に関する情報を法執行機関が開示することはないとの公的な確約を与えることを拒絶し続けている」という。

逮捕された3人(そのうち誰にも前科はない)は、エルパソの集会場に身を寄せようとしているところであった。彼らは、2人はグァテマラ出身、1人はフィリピン出身。裁判所に出頭することを条件に釈放された。そこで国外追放処分に処されるかどうか裁判官が判断を下すことになる。

18名の下院議員に加え、各関係団体は、政府に対して、被災した不法滞在移民に「一時的な保護地位」を与えるよう求めている。合計数は把握されていないが、約30万人のヒスパニック系がメキシコ湾岸地域に住んでいたと見られている。

NCR
のセシリア・ミュノス副会長(政策担当)は、「DHSは、市民情報の保護を一貫して拒んできた。だから、危険は現実のものであり続けると思う」とIPSの取材に応じて語った。「支援を拡大しようとするに際して、本当のジレンマに直面することになる」「民間の支援団体の中には、どうすればよいかわからず混乱が広がっているところもあるし(合法的な移民かどうかを[当局に]報告したり、移民自身にそれを尋ねたりすることに関して)、多くの支援者は2ヶ国語を話すことができない」とミュノス氏は言う。

NCR
およびその他の団体は、9月21日付でDHSのマイケル・チャートフ長官に書簡を送付した。その中で、DHSの現在の措置は、援助が行なわれている最中には法執行を一時停止するという過去の政策からは「著しく離脱している」と指摘されている。過去の事例には、昨年フロリダを襲ったいくつかのハリケーンや、2001年9月11日のニューヨーク、ワシントンDCにおけるテロなどが含まれている。

ミュノス氏はさらに言う。「こういう逮捕には間違いなく萎縮効果がある」「被害を受けた地域で活動しているグループからは、人々がなかなか表に出てこないとの報告を受けている。ある避難所にいたある男性は、もし表に出てきたら[強制送還のため]飛行機に乗せられると聞いた、と言っている」。

不法滞在者は、自分の家に残されたものや自分の持ち物を回収することもできずにいると言われている。というのも、合法的な居住者であると証明できた者のみ、被災地域の所有地への立ち入りが許されているからだ。

テキサス州・ヒューストンの「メキシコ系アメリカ人権利向上協会」でアデランテ・プログラムのリーダーを務めるフアン・エスキヴェルは言う。「私たちは、家を追われた人々の居場所を把握しようと努力してきた」「見つかった人たちもいる。しかし隠れようとしている人たちもいる。人々は、送還されることを恐れており、政府の支援を求めるのではなく、他の地域に住む親戚縁者の下に身を寄せようとして必死だ」「彼らは、例えば、配布されている2000ドル相当のデビットカードのような支援策の多くを利用していない。ほとんどのヒスパニックはこのカードを請求していないだろう」。

ホンジュラス大使館では、ホンジュラスからの4万人にも及ぶ移民がカトリーナのために家を追われたのではないかと推測している。メキシコ当局でもほぼ同じ数のメキシコ人がルイジアナに住んでいたと考えている。そしてそのほとんどが、カトリーナによって最も甚大な被害を受けたニューオーリンズに住んでいた。

一方、報道によれば、滞在許可証を持たないメキシコ・中米の労働者が、被害地域再建のためにルイジアナ南東部にすでに到着している。

米下院は、支援策の一部として620億ドルを拠出することをいち早く決定している。また、ルイジアナ州当局は、復興のための連邦支援として2500億ドルが必要だと主張している。

これは、建設業界にとっては大きな追い風となる。そしてこの業界こそが、ラテン・アメリカからの移民を大量に雇っている主要な雇用主の一つなのである。米国における滞在許可証を持たないラテン系の推定1200万人のうち、少なくとも17%が建設業に従事しており、その多くが米南部にいる。

ジョージ・ブッシュ大統領は、カトリーナ襲来のほぼ直後に、ルイジアナ・ミシシッピーの一部・アラバマ・フロリダにおいて、「相場賃金(prevailing wages)」の支払いを公共事業の請負業者に義務付ける連邦法を一時停止すると発表した(「相場賃金」とは、連邦や州の行なう公共事業に関して、その事業の行なわれる地域における一般的・平均的な賃金を下回らないレベルで設定されたの賃金のこと:IPSJ)。また、DHSは、正式な労働許可証を持たない労働者を雇用した業者に対する制裁を免除することを決めた。

ラテン系の人々が大災害からの復興において大きな役割を果たしたのは今回が初めてではない。9・11テロ後にペンタゴンを再建した労働者の約4割はラテン系であった。また、数百名のラテン系労働者(そのほとんどが労働許可証を持たない)が、ニューヨークのツイン・タワー倒壊後、ロウワー・マンハッタンの瓦礫除去作業を行なったのである。

しかし、ほとんどの労働者が、アスベスト、重金属、ガレキを覆う毒性・可燃性のある副産物から身を守るための防護用装備を与えられていなかった。ニューオーリンズでは、汚染された油や化学物質、その他の汚染物質が洪水と共に流れ込んでおり、市街の洗浄・再建作業に従事する労働者は、同様に毒まみれになる可能性がある。

エスキヴァル氏は、IPSの取材に応じてこう語った。「これまでにも増して私たちが懸念しているのは、街の再建が始まった今、建設業者が、滞在許可証を持っている人も持っていない人も含めて多くのヒスパニック系を雇うだろうということであり、彼らが望ましくない労働条件で働かされるだろうということだ」「私たちは、この状況をしっかりとチェックして、彼らの人権が守られるようにしなくてはならない。」(原文へ

 

翻訳=IPS Japan