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INPS JAPAN   IDN-InDepthNews - UN INSIDER

情報不足で困難に陥る難民支援

UNHCR/S.Modola

【ベルリンIDN=ジャヤ・ラマチャンドラン】

 

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が、情報不足からくる2つの問題に悩んでいる。ひとつは、難民発生国における活動の困難であり、もうひとつは、先進国に難民が集まりやすいという幅広く信じられている「誤解」の問題である。

UNHCR
では、近年のソマリア情勢の悪化により、今年に入って32万人がソマリアから避難したとみている。UNHCRのアンドレイ・マヘチッチ報道官が10月21日に語ったところによると、難民の多くはケニアやエチオピアといった隣国にも向かっているが、アデン湾を超えて対岸のアラビア半島に渡るという危険な行為に出る難民も少なくないという。

今年に入ってからすでに2万人のソマリア難民が対岸のイエメンに到着している。「イエメンの難民受入センター(Reception Center)に新たに到着した難民がUNHCR職員に語ったところによると、旱魃、飢饉、内戦、兵士への強制徴用が、ソマリアを逃れてきた主な原因です。」とマヘチッチ報道官は語った。

 
「到着した難民の大半は、イエメンの状況や到着後に直面する現実を認識しておらず、イエメンで職を見つけたり、他の湾岸諸国を目指すつもりでソマリアを後にしていました。」とUNHCRはプレスリリースの中で、情報不足が障害となっている点を指摘している。

UNHCR
によると、2011年1月から7月の間、イエメンに到着したソマリア難民の数は月平均1600人であった。しかし、イエメンの国内情勢が不安定になっているにもかかわらず、難民の到着数はその後急増し、8月には4500人、9月には3290人となった。現在、イエメン国内には推定19万6000人のソマリア難民がおり、UNHCRにとって41万5000人を上回ると見られるイエメンの国内難民への対応とともに大きな負担となっている。

「治安の悪化により私たちの救援活動もますます危険かつ複雑なものになってきています。」とマヘチッチ報道官は語った。現在アビヤン県でアルカイダと政府軍の交戦が激化しているため、新たに到着した難民をアデン湾沿いの難民受入センターからカラズ(Kharaz)難民キャンプに輸送する作業が益々困難になっている。このため、UNHCRのイエメン側パートナーであるSociety for Humanitarian Solidarity(SHS)も、交戦地を迂回する遠回りのルートをとったり輸送回数を減らす対応を余儀なくされている。UNHCRは、難民受入センターやトランジットセンターに新たな到着した難民に対して、イエメン情勢と難民キャンプへの移動に伴うリスクについて説明を行っている。

こうしたことから難民の中にはソマリアへの帰国を検討するものもでてきている。UNHCRは自発的に帰国を希望する難民に対して支援するプログラムを持っているが、ソマリアの場合、この支援が適用されるのは比較的政情がおちついている北部のプントランドとソマリランド出身者に限られている。しかしUNHCRの発表によると、イエメンに到着しているソマリア難民の大半は政情が不安定な南部及び中部ソマリア出身者が占めている。また、主にエチオピア人を中心に、ソマリア以外の周辺国からイエメンに到着する数も増加してきている。

さらに、イエメンの情勢不安を利用して、紅海沿岸の一帯では、難民をだましたり強制したりして売り飛ばす輩があとをたたない。こうした人身売買のターゲットは主に湾岸地域での職を求めて入国してくるエチオピア人だが、ソマリア難民が拉致される事件もでてきている。「イエメンの治安悪化により、人道支援チームのパトロール活動が困難になっており、結果的にそうした非合法集団が到着したばかりの難民を先に発見するケースが増えています。また、イエメンに逃れる航海の途中で難民や出稼ぎの女性が性的暴力に晒される被害も幅広く報告されています。UNHCRでは、イエメン側のパートナーと犠牲者に対する医療支援を行うとともにイエメン警察と情報共有してフォローアップにつとめています。」とマヘチッチ報道官は語った。

「難民の多くが先進国に集まりやすい」という誤解

さて、UNHCRの直面するもうひとつの問題は、先述の先進国における「誤解」である。「難民の多くが先進国に集まりやすい」というこの誤った認識が先進国で幅広く信じられている背景には、既存の情報と主流メディアが支配する現在のコミュニケーションの仕組みの問題がある。

アントニオ・グテーレス難民高等弁務官は、2011年6月に「2010年世界の動向レポート」を発表した際、「今日の難民の動向と国際保護の状況について憂慮すべき誤解が広がっています。難民の殺到を恐れる先進国に広がる感情は大げさに誇張されたものか、移民の流入問題と混同したものなのです。一方で現実はずっと貧しい国々が実質的に負担を負わざるを得ない事態に置かれているのです。」と語った。

同レポートは、難民受け入れの負担を受けているのは、富裕国ではなく、難民の絶対数からも、また、ホスト国の経済規模から見ても、圧倒的に貧困国(全世界の難民の8割が居住)である実態を明らかにしている。具体的には、パキスタン(190万人)、イラン(110万人)、シリア(100万人)がもっとも多くの難民を抱えた国なのである。

一人当たりの国内総生産に占める受入難民数でみても、パキスタンが最大の受入国で1ドル当たり710人である。これにケニアの475人、コンゴ民主共和国の247人が続いている。一方、先進国で国内に最も多い難民人口を抱えるドイツ(59万4000人)でさえ、一人当たりの国内総生産に占める受入難民数は17人である。

また同レポートは、UNHCRが設立された60年前とは大きく変化した移民を取り巻く環境を描いている。UNHCR設立当時の取り扱い件数は、210万人で、第二次世界大戦の結果発生した欧州の難民が対象であった。今日UNHCRが受持つ国地域は120カ国を超え、保護対象者も国外への移転を余儀なくされた人々に止まらず国内難民も含まれている。

グテーレス氏は、2011年上半期の先進国における難民申請の動向をまとめた報告書に言及して、「2011年は私が難民高等弁務官に就任して以来、かつてない難民危機の年となっています。しかし難民の大半が近隣諸国に逃れたことから、今までのところ難民申請が先進国に及ぼす影響は予想を下回っています。」と語った。

10月18日に発表された同報告書によると、今年1月から6月までの期間における難民申請者数は19万8300人で、昨年の同時期16万9300人を上回った。しかし難民申請数は通常下半期にピークを迎えるため、UNHCRでは2011年の難民総数を、過去8年で最高となる42万人と予想している。

UNHCR
のプレスリリースには、「今年は西アフリカ、北アフリカ、東アフリカで深刻な難民危機が発生し、チュニジア(4600人)、コートジボアール(3300人)、リビア(2000人)等の難民申請数が増加しました。しかし、全体で見れば、先進国への難民申請の割合は限定的なものとなっています。」と記されている。

今回のUNHCR報告書で難民の出身国として上位にランクされている国々は、アフガニスタン(1万5300件)、中国(1万1700件)、セルビア(1万300件)、イラク(1万100件)、イラン(7600件)で、以前の調査結果と比較して概ね変わっていない。

難民申請を受けた先進国を地域別にみると欧州が最大の受入れ地域で全体の73%を占めている。また、難民申請数が大きく減少したのはオーストラレーシア(オーストラリア、ニュージーランドおよびその付近の南太平洋諸島の総称)のみで、昨年の6300件に対して今年は5100件にとどまった。

一方国別にみると、先進国の中でもっとも難民受け入れが多いのが米国で、2011年上半期の実績が3万6400件となっており、これにフランス(2万6100件)、ドイツ(2万100件)、スウェーデン(1万2600件)、英国(1万2200件)が続いている。なお、欧州で難民申請数が減少したのは北欧諸国のみであった。一方、北東アジア(日本と韓国)においては、難民申請数が昨年前期実績の600件から今年前期には1300件と2倍以上に伸びている。

「上半期の先進国における難民申請の動向」は、UNHCRが「国際難民デー」(6月20日)に合わせて発表する「世界の動向レポート」の内容を補完するものであり、2011年版の内容は、世界の80%の難民を受け入れているのが途上国である現実を伝えている。(原文へ

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩

 

 

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