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│スペイン│まるで犯罪者のように扱われる移民

 

【マラガ(スペイン)IPS=イネス・ベニテス】

 

「本当につらかった。まるで刑務所みたいだった」とたどたどしいスペイン語で話すのは、アルジェリアからやって来たSid Hamed Bouzianeさん(29歳)だ。彼は、スペイン南部アンダルシア州のマラガにある移民収容所に28日間収容されていた。

マラガ移民収容所は、市内のカプチノス地区にあるかつての兵舎を利用して1990年に設置された施設で、スペイン全土で9つある移民収容所のひとつである。スペインの移民法によると、内務省管轄の移民収容所は、裁判所の命令で強制送還手続きを待つ外国人を収容する非矯正施設である。

しかし社会組織や専門家の間から、こうした移民収容所で人権が侵害されているとする報告が繰り返し提出されている。

「マラガの移民と連帯する会」のルイス・ペルニア代表は、「これらの移民収容所は、欧州連合による偽善的な移民政策を正当化する目的のみのために存在するもので、実態は刑務所同然です。そこには民主主義も、法も、人間性もないのですから。」と語った。

 
2009年12月、「スペイン難民支援委員会(CEAR’s)」が、マラガ、バレンシア、マドリッドの移民収容所における収容者の生活環境や法的保護に関する調査を行った『スペインの移民収容所の状況』という報告書を出し、移民らが収容所内で虐待を受けている実態を明らかにした。

ARE’s
のサルバ・ラクルツ氏(ロビー活動担当)は、「外国に移住したからという理由で収監するということ自体、受け入れられるものではありません。」と、10月21日から23日にかけて開催された「第一回移民収容所に反対する会全国大会」に参加しているバレンシアからIPSの取材に応じて語った。同全国大会には、スペイン全土から約30団体が参画し、移民収容所閉鎖を目的とする全国規模キャンペーンのあり方を話し合った。

「移民収容所は、アフリカ大陸北岸から欧州に小舟で危険な航海に出るなど、移民を厳しい環境に追いやっている国境警備体制とともに移民を取り巻く悪循環を形成しており、いわば『法規範の中にあるブラックホール』といえる存在なのです。」とラクルツ氏は語った・

Bouziane
さんは、アルジェリアで死の脅迫を受け、2008年に小さな小舟に乗ってスペインに渡ってきた。しかし、自らが難民であることを証明するような文書を何も持っていなかったため難民申請をあきらめ、非正規のまま滞在してきた。それが今年7月になって逮捕され、移民収容所に送られたのである。

しかし彼の国外退去命令は、「5月15日運動」からの11日間にわたる抗議デモを受けて撤回された。

Bouziane
さんの弁護を引き受けた弁護士のホセ・コシン氏はIPSの取材に応じ、「人権高等弁務官事務所人種差別撤廃委員会は今年の3月、スペイン政府に対して、特定の人種・民族を標的にしたプロファイリングに基づいて身元チェックをする慣習を止めるよう勧告しました。しかしスペイン当局は、未だに「人種差別主義」に基づく移民の一斉検挙を行っているのです。」と語った。

一斉検挙の際、身分証明書を所持していない外国人は、そのこと自体が運転時に免許証を所持するのを忘れた程度の軽微な違反にも関わらず、最大60日間にもわたって拘留されている。移民収容所は矯正施設ではない。つまり身分証明書を保持していない移民達が収監されるは、彼らが法を犯したからではなく、強制送還されうると警戒させるための予防措置なのである。

「しかし移民収容所は刑務所と異なり、収監者の人権と自由を保障する特定の規定は設けられていないのです。」とNGO団体「アンダルシア・アコーゲ」のホセ・ルイス・ロドリゲス・カンデラ氏は、IPSの取材に応じて語った。

「法律の規定が及びづらいという点では、刑務所より移民収容所の方が深刻です。」とロドリゲス・カンデラ氏は語った。カンデラ氏は、移民収容所の機能と収監者の法的権利を規定するために包括的な法律を制定しなければならないと確信している。

CEAR
の報告書によると、収容者には移民法の規定により必ず弁護士が割り当てられねばならないが、58%の収容者が、自分の弁護士を知らないか、弁護士がまったく付いていなかった。

収容された移民たちはバラックや古い建物に、住むための最低限の便宜も与えられないまま監禁されている。マラガの移民収容所は、元々は兵舎だった建物である。またスペイン南端のアルへシラスにある移民収容所は、老朽化が進んだ刑務所同様の施設である。

移民収容所の場合、治安対策から収容者のヘルスケアや食事まで全ての面について、出資母体でもある警察が管理している。一方、刑務所の場合、看守は治安対策のみを担当している。

現在の移民法のもとでは、一時的にパスポートを預けるか週に一回は裁判所に出頭することで、移民収容所への収容を免れることは可能である。

内務省発行の不法移民取締りに関する統計によると、2010年に国外退去になった移民は3万163人で、前年の3万8129人よりは21%減少している。

「建物は老朽化が進んで湿気を帯びており、とても人間を収容するに相応しい場所ではありません。これでは刑務所の方がましです。」とマラガ移民収容所で働いている医師は匿名を条件に語った。この移民収容所はいわくつきの施設で、既に修理のため2度も閉鎖している。

「臨月の妊婦や精神病を患った人々が収容されたケースもありました。」とペルニア代表は語った。また「マラガの移民と連帯する会」によると、通訳やソーシャルワーカーの不足という問題もあるという。

CEAR
ボランティアのハビエル・トレグロッサ氏は、移民収容所制度の効果について疑問を抱いている。トレグロッサ氏は、「調査によると、収容所に入れられていた移民のうち、実際に国外退去になったのはわずか30%に満たない人々です。つまり、身分証明書を所持していないというだけで移民を片端から収監する現在のやり方は経費の無駄だということです。」と語った。
 
また国外退去命令数と実際の執行数には違いがあり、その理由として、執行するための政府の予算不足、移民の国籍を特定することの困難さ、そして、スペインが移民の引き渡し条約を締結していない国籍の移民を収監した場合等が指摘されている。

「スペイン当局は、国外退去させられなかった移民を収容所から釈放した後も、釈放者に退去命令をかけつづけることで、合法的に国内に滞在することを阻み続けているのです。」とロドリゲス・カンデアラ氏は語った。

アンダルシアのオンブズマンであるホセ・キャミソ氏は2006年に「収監されている移民たちが犯罪者のように扱われており、移民収容所が刑務所のようになっている。」として移民収容所の閉鎖を要求した。

「移民収容所は、私たちが作り上げ無理やり稼働させた、無軌道な代物、つまりモンスターなのです。」とペルニア代表は結論付けた。(原文へ

翻訳=IPS Japan戸田千鶴

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