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INPS JAPAN   IDN-InDepthNews - UN INSIDER

|視点|核軍備枠組みが崩壊する間に…(タリク・ラウフ元ストックホルム国際平和研究所軍縮・軍備管理・不拡散プログラム責任者)

Photo: Chair Syed Hussin addresses the 2019 NPT PrepCom. Credit: Alicia Sanders-Zakre, Arms Control Association.【ニューヨークIDN=タリク・ラウフ】

ニューヨークの国連本部で開かれていた核不拡散条約(NPT)2020年再検討会議第3回準備委員会は、核軍縮のペースと程度をめぐって、合意に達せずに終了した。

4月28日から5月10日まで開催されていた準備委員会には150カ国が議論に加わり、一般討論(各国の代表による意見表明)では106件の発言がなされた。これに続いて、3つのクラスターでは時として繰り返しになるような多数の発言がなされた。3つのクラスターとは、(1)核軍縮と安全の保証、(2)核の検証(IAEA保障措置)、非核兵器地帯、中東・北朝鮮・南アジアなどの地域問題、(3)原子力の平和的利用、NPT再検討プロセス、条約の脱退問題、である。

Tariq Rauf2020年は、1970年にNPTが発効してから50周年、1995年に同条約が無期限延長されてから25周年となる。191の加盟国を持つNPTは、核不拡散・核軍縮・原子力の平和利用の領域をカバーする核のグローバル・ガバナンスの礎石だと広くみなされている。

核兵器の拡散を予防し、その保有を9カ国(保有順に米国・ロシア・英国・フランス・中国・イスラエル・インド・パキスタン・北朝鮮)にとどめてきたことは、NPTの大きな成果だと考えられている。もっとも、イスラエル・インド・パキスタンの3か国はNPTに加盟したことがなく、北朝鮮は2003年に脱退している。

2020年にNPT発効50周年を迎えるにあたって、多くの西側諸国は、農業や発電、人の健康維持、海水の淡水化などの形で核エネルギーの広範な平和利用に成功してきたことや、国際原子力機関(IAEA)の検証能力の強化に焦点を当て、核兵器の廃絶に失敗してきていることからは目を逸らそうとしている。

他方、アジアやアフリカ、ラテンアメリカの多くの非核保有国は、核兵器の時代に終止符を打つというNPTの約束は、依然として果たされていないと指摘している。

NPTの会合では、一般的に言えば、各国はいくつかの国家グループに分かれる。最大のものは、122カ国を要する非同盟諸国(NAM)グループだ。他には、欧州連合(EU)・北大西洋条約機構(NATO)・カナダ・米国を含む西側諸国にオーストラリア・日本・韓国・ニュージーランド加えた西洋・その他の諸国グループ(WEOG)、ロシアやベラルーシ、ハンガリー、ポーランドなどからなる東側グループがある(その一部はEUやNATOに加入してもいるが)。

加えて、問題別に、ブラジル・エジプト・アイルランド・メキシコ・ニュージーランド・南アフリカから成る新アジェンダ連合(NAC)、オーストラリア・カナダ・チリ・ドイツ・日本・メキシコ・オランダ・ナイジェリア・フィリピン・ポーランド・トルコ・アラブ首長国連邦から成る核不拡散・軍縮イニシアチブ(NPDI)、オーストラリア・オーストリア・カナダ・デンマーク・フィンランド・ハンガリー・アイルランド・オランダ・ニュージーランド・ノルウェー・スウェーデンから成るウィーン10か国グループ、チリ・マレーシア・ニュージーランド・ナイジェリア・スウェーデン・スイスから成る(核兵器の)「警戒態勢解除」グループ、中国・フランス・ロシア・英国・米国の「P5」、アラブ諸国グループなどがある。

こうして、さまざまな考え方を追求する国家グループに複雑に分かれ、全会一致の合意に到達することがますます難しくなっている。

Press Briefing/ Photo by Katsuhiro Asagiri| INPS準備委員会の任務は2つある。ひとつは、次の2回の準備委員会の日程や手続き面のルール、作業プログラムの内容、再検討会議議長の決定を含めて、次の再検討会議に関する手続き的合意を行うこと、もうひとつは、核不拡散・核軍縮・原子力の平和利用という条約の三本柱や、非核兵器国への安全の保証、地域問題などに関連して「勧告」を行うことである。

今年の準備委員会は、以前の会合と同じく、手続き面での合意には何とか達し、ラファエル・グロッシ大使(在ウィーン国際機関アルゼンチン政府代表部)が2020年再検討会議の議長に就任することを原則的に承認した。しかし、以前と同じように、諸国は意見の大きな違いを埋めることができず、再検討会議を拘束するものでないにも関わらず、その「勧告」に関してすら合意することができなかった。

今日の国際社会の残念な現状や政治的・軍事的紛争、単独行動主義に有利となる多国間主義の後退、偏狭な国益の追求に関して、多くの懸念や主張が聞かれた。

しかし、かつてローマの街が燃え盛る中、議員らがつまらないことにうつつを抜かしていたのと同じく、今日の外交官も、核軍備管理が完全に崩壊する様を手をこまねいて見ているだけで、危険な核軍拡競争が起き、核兵器の偶発的・意図的使用の危険が増す方向へと道を切り開いているようだ。

核兵器が議論の中心にある。1975年の第1回NPT再検討以来、そしてその後の5年に一度の会合では、分断と対立の焦点は、条約第6条に規定された核軍縮問題であった。5つの核保有国とその同盟国は、軍縮を国家安全保障・国際安全保障の考慮や、通常兵器などの他の種類の兵器の軍縮とリンクさせてきた。

UN Secretary Building/ Katsuhiro Asagiri of INPS他方で、一般的には、非核兵器国のほとんどがNPT第6条の履行を重視する傾向にある。西側諸国は、長年にわたって、軍縮の達成に関して「ステップ・バイ・ステップ・アプローチ」あるいは「ブロック積み上げ型」を主唱してきた。すなわち、NPTに続いて包括的核実験禁止条約、次に兵器用核分裂性物質生産禁止条約、その後にまた別のステップが続くという想定である。他方で、非同盟諸国は、包括的核兵器禁止条約を通じた核兵器の完全廃絶に向けた、段階的かつ時限を規定した枠組みを提唱してきた。

2017年7月に122カ国の賛成で採択された核兵器禁止条約の主導国は、今回の準備委員会の軍縮問題クラスターの発言で同条約に中心的に言及することを避ける賢明な策を採った。これによって、準備委員会が核兵器禁止条約によって「ハイジャックされた」と主張したかった同条約の強硬な反対勢力は、批判することができなくなってしまった。

しかし、2018年のNPT準備委員会で米国が新たな要素を持ち込んだ。「核軍縮の条件を作る(CCND)」提案がそれで、1995年、2000年、2010年のNPT再検討会議での合意を回避する狙いがあった。

米国はさらに、「ステップ・バイ・ステップ」のアプローチは既に成果なく失敗に終わっており、すべての核保有国を巻き込んだ核兵器のさらなる削減を導く条件と環境を創出するには完全に新しいやり方が必要だという認識に基づいて、昨年の提案をさらに改訂した「核軍縮のための国際環境を整備する(CEND)」という新たな提案を行った。

これまで米国のやりかたに無条件で従ってきた同盟国は、「ステップ・バイ・ステップ」「ブロック積み上げ型」「踏石(ステッピング・ストーン)」アプローチを頑強に支持してきたが。単独行動主義に彩られた米国の新提案を受けて、動揺を隠せないでいた。こうした様子は、あたかも蝶やユニコーンが現れて、新しい時代と海図なき核軍備管理の新世界に導いてくれる魔法をかけてくれることを夢見ているかのようだった。(原文へ

※著者は、国際原子力機関(IAEA)のNPT代表団長を2002年から2010年まで務め、1987年から2019年までのすべてのNPT会合に参加している。本稿の見解は全て個人のものである。

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