|ロシア|激化する軍拡競争に高まる懸念
【モスクワIDN=ケスター・ケン・クロメガー】
ロシアは、今日蔓延している核拡散のリスクと脅威は、核不拡散条約(NPT)の厳格な履行によって除去できると考えている。その際、核不拡散・軍縮・原子力の平和利用という三本柱の間のバランスを尊重し保つことが必要だとしている。
2020年は4月から5月にかけて、ニューヨークの国連本部でNPT再検討会議が開催される。セルゲイ・ラブロフ外相は、来たる再検討会議では「できるだけ対立を避けたい。お互いに話をせず、耳を傾けることすら拒否し、他者が言っていることに関しててんでばらばらに言いたいことを言っていた2015年NPT再検討会議の二の舞は避けなくてはならない。」と考えている。
米国への対抗を図る欧州
【ニューヨーク/ミュンヘンIDN=ソマール・ウィジャヤダサ】
「リベラルな世界秩序全体が崩壊しつつあるようだ。状況はまったく変わってしまった。」自身が議長を務める2019年ミュンヘン安全保障会議(MSC)を前に寄稿したオピニオン記事の中で、ドイツの元外交官ウォルフガング・イッシンガー氏はこう述べている。
「ウラジミール・プーチンがクリミア半島を併合し、2014年にウクライナ東部で血塗られた紛争を開始した時、多くの人々が、彼こそが世界の不安定化の主たる原因だと考えた。…その数年後に米大統領が現在の国際秩序を大きく揺るがすことになろうとは、誰も想像しえなかっただろう。ドナルド・トランプ大統領は、西側の価値観や北大西洋条約機構(NATO)に疑問を呈するがごとく、自由貿易にも疑問を呈している。このことは、我々欧州の人間にとってだけではなく、影響は極めて大きい。」
フォルケ・ベルナドッテ、伝説的な意志力を備えた人道主義者
【ルンドIDN=ジョナサン・パワー】
ブダペスト駐留のスウェーデン人外交官で、ナチス・ドイツ占領軍の手を逃れてスウェーデンに逃れられるよう、少なくとも6000人のユダヤ人に「保護証書」を発行したラウル・ワレンバーグ氏についてはよく知られている。ワレンバーグ氏はユダヤ人虐殺計画を察知し、責任者の将校と交渉して阻止することにも成功した人物であり、米国は同氏に史上2番目(第一号はウィンストン・チャーチル英首相)の名誉市民権を付与している。
また、ナチス・ドイツ占領下にあった多くのデンマーク人が、小舟を使って約7000人のユダヤ人を、海峡を越えて当時中立国であったスウェーデンに入国させた素晴らしい取り組みについてもよく知られている。
不確実性の時代の軍縮:レイキャビクで議論
【レイキャビクIDN=ロワナ・ヴィール】
米ロ間の(さらには米ロとその他の国々との間での)緊張が高まる中、今回で14回目となる北大西洋条約機構(NATO)による大量破壊兵器に関する年次会合(アイスランド会合)にあわせて軍縮に関するセミナーが開催されたのは、時宜を得たものであった。
「不確実性の時代における軍縮への実践的なアプローチ」と題されたこのセミナーの構想は、アイスランドのカトリン・ヤコブスドッティル首相が7月にブリュッセルで開催されたNATO首脳会議に出席した際に生まれた。ヤコブスドッティル首相はNATO関係者をレイキャビクに招くにあたり、セミナーの主要議題は軍縮になるだろうと語った。首相はIDNの取材に対して、その理由として「NATO首脳会議では、軍縮が十分に議論されてこなかった。」と語った。
|視点|人間をカネで売るということ(フレッド・クウォルヌ放送作家・映画監督)
アフリカ移民がヨーロッパに流入する際の主要ルートであるイタリアにおける移民論争を念頭に、ガーナ人の父とイタリア人の母の元でイタリアに育ち、今は米国に移住している著名な映画監督がIDNに寄稿した移住の裏にある人身売買の実態を訴えたコラム。本稿の内容は人身売買の問題について、著者がイタリア人の視点から記した個人的な見解であり、IDNの編集方針を必ずしも反映したものではない。
【ニューヨークIDN=フレッド・クウォルヌ】
人身売買によって世界各地のマフィアは1500億ドルを得ているが、そのうち1000億ドルはアフリカ人の売買によるものだ。女性の人身売買を1人行うごとに、ナイジェリアマフィアに6万ユーロが流れ込む。つまり、イタリアで1万人を売買すれば、(送出元の)マフィアの懐に6億ユーロが入る計算だ。しかし、実際にヨーロッパで待ち受ける運命を事前に知っていたら、わざわざヨーロッパへの渡航を望むアフリカ人などいないだろう。
移民に関する神話に覆い隠される現実(ロベルト・サビオINPS評議員、Other News代表)(後編)
【ローマIDN=ロベルト・サビオ】
しかし、移住がもたらすポジティブな影響は枚挙に暇がない。フランス国立科学研究センター(CNRS)が欧州15カ国(2015年にシリア、イラク、アフガニスタンから多数の移民が欧州に流入した際、難民申請の89%を受入れた国々)における30年に及ぶ移住者受入動向を研究した調査報告書が参考になるだろう。
それから4年が経過し、GNPは0.32%上昇した。報告書の著者の一人であるヒポリト・ダルビス教授は、移民の受入れと財政の関連について、「もちろん移民を受け入れた当初は費用がかかりますが、この公的支出は社会に対する再投資となるのです。つまり10年も経過すると元移民は一般住民よりもより多くの富を築いており、こうした貢献は一般の統計にとけ込んでいるのです。」と記している。
移民に関する神話に覆い隠される現実(ロベルト・サビオINPS評議員、Other News代表)(前編)
【ローマIDN=ロベルト・サビオ】
最新の統計によると、2018年の現時点における移民の総数は50,000人で、昨年は186,768人、2016年は1,259,955人、2015年は1,327,825人であった。移民に関する一般の認識と現実の乖離は驚くべきもので、私たちは明らかに、史上最も巧みなイメージ操作を目の当たりにしている。
フランス、ドイツ、イタリア、スウェーデン、英国、米国の23,000人を対象に実施した最新の世論調査によると、偽情報が広範に信じられていることが明らかになった。これら6カ国において、人々は移民の数が実際よりも3倍多くいると誤って認識していた。イタリア人は移民が国民に占める割合について、実際には欧州連合加盟国の平均を下回る1割程度にもかかわらず、3割を占めていると考えていた。一方で、一般の認識が現実に最も近かったのはスウェーデン人で、移民の割合が実際には2割なのに対して3割と回答していた。
|視点|ベルリン大空輸から70年、米欧関係を振り返る(フレデリック・ケンペ大西洋評議会会長・CEO)
【ワシントンDC IDN=フレデリック・ケンペ】
今から70年前の1948年、ソ連は、冷戦が始まって最初の主要な危機で早期の勝利を収めようとして、西ベルリンに向かう全ての鉄道と道路を封鎖した。しかしソ連の予想に反し、徹底した対抗措置を決意した米国は、英国と協力して「ベルリン大空輸作戦」(又の名称は「糧食作戦Operation Vittles」)を6月26日に開始した。
この大空輸作戦は318日続き、27万回のフライトで150万トンもの物資が西ベルリンに空輸された。ソ連は米国との全面衝突を避けるため、西ベルリンの封鎖を解除した。この事件から1年を経過しない1949年4月、12カ国の首脳が、その後の北大西洋条約機構(NATO)の創設につながる北大西洋条約に署名した。
|アイスランド|SDGsの宣伝を若者がリード
【レイキャビクIDN=ロワナ・ヴィール】
アイスランドでは、首相官邸の支援の下に13~18才の12人の青少年で構成する「若者評議会(Youth Council)」が設置され、持続可能な開発目標(SDGs)の促進を主導することになった。
コーディネーターのニルシナ・ラルセン・アイナルスドッティル氏は、12人の枠に140人超の応募があったことを明かしたうえで、「応募者全てが素晴らしい発想の持ち主で、選考は難航を極めました。」と語った。
|フランス|アルノー・ベルトラーム氏を殺害したナイフに対する回答を見出すのは容易ではない
【ルンドIDN-INPS=ジョナサン・パワー】
私は元来臆病者で、とてもヒーローにはなれそうにない性格だ。(異なる機会に溺れそうになった3人の子供を救出したことはあるが、自分の命を危険に晒したわけではなかった。)そんな私は、フランスの警察官アルノー・ベルトラーム氏がとったと同じ行動は、とてもとらなかっただろう。
ベルトラーム氏はスーパーマーケットに立てこもったテロリストに、女性の人質の身代わりとなることを自らかってでた。テロリストは人質交換を受け入れたが、ベルトラーム氏はその後店内で殺害された(手足を撃たれたうえに、首をナイフで切られ重傷を負い、その日の夜死亡:INPS)。フランス政府は3月28日にパリのアンバリッドでベルトラーム氏の告別式を行った。イスラム過激派組織『イラク・レバントのイスラム国(ISIL)』の支持者とみられるモロッコ人の共犯者は現在刑務所に拘留されている。