www.facebook.com
www.twitter.com
www.linkedin.com
www.blogger.com
www.myspace.com
RSS Feeds
 
INPS JAPAN   IDN-InDepthNews - UN INSIDER

|Q&A|「これ以上、地球温暖化を進行させる訳にはいかない」(レスター・ブラウン、アースポリシー研究所創立者インタビュー)

Dr. Lester Brown

【アクスブリッジ(カナダ)IPS

 

レスター・ブラウン氏は、「自分の見解は時々極端に聞こえるかもしれない。それは主流メディアが、破滅的な気候変動を避ける緊急性やそのための様々な難題について、ほとんど理解していないからです。」と言う。

ワシントンDCに本拠を置くアースポリシー研究所の設立者であり所長も務めるブラウン氏は、世界で最も影響力のある思想家の一人と考えられている。


「私が極端論者のように見えるのは、主流メディアが今日の世界の状況を正確に報じていないからです。」とブラウン氏は言う。


ブラウン氏はニュージャージー州の農家出身で、ラトガーズ大学、ハーバード大学で農学・行政学を修めた後、1960年代に農務省に入省、国際農業開発局長を務めた。1974年に
ワールドウォッチ研究所を設立した。

 

 

ブラウン氏は、その後多くの賞、名誉学位を獲得して、著作は50冊に及ぶ。2001年、環境的に持続可能な経済を達成するためのロードマップを提供する目的でアースポリシー研究所を設立した。

ブラウン氏の最新刊『
プランB.0:人類文明を救うために』(プランBシリーズの第4版でおそらく最も緊急の対応を訴えている版)はアースポリシー研究所のウェブサイトからダウンロードできる。ブラウン氏はこのプランB.0の中で、2020年までに炭素排出量を80パーセント削減するよう呼びかけている。

ブラウン氏はその理由を、「これ以上、地球温暖化を進行させるわけにはいきません。」と端的に語った。


IPS
環境問題特派員スティーブン・リーヒが、最新刊の出版に際してブラウン氏に取材を行った。


IPS:
あなたは2020年までに炭素排出量を80パーセント削減するよう訴えていますが、この数値はどこの政府による削減目標よりも遥かに高いものですが。


レスター・ブラウン:各国の政治家は、どの程度の排出量削減が政治的に実行可能性があるかを見ています。一方、アースポリシー研究所では、気候変動がもたらす最も危険な影響を回避するためにどの程度の排出量削減が必要かを見ているのです。


既に巨大なグリーンランドや南極西部の氷の海が急激な勢いで溶け出しています。もしこれらの氷塊が完全に溶けると地球上の海面は12メートル上昇するでしょう。また、世界の山々を覆っている氷河は縮小を続け、消滅の危機に瀕しています。その中には、山頂から溶け出した水が乾期に下流の広大な地域を潤してきたアジアの多くの大河が含まれています。


気候を安定させ将来における地球温暖化を最小限に抑えるには、私たちは空気中の二酸化炭素ガスを400ppmレベルに保たなければなりません。


IPS:
そのような地球規模の排出量削減は可能でしょうか?


レスター・ブラウン:そのためには、世界規模の動員が戦時体制のようなスピードでなされなければなりません。まず最初に、エネルギー効率を高めることに投資することで、世界的なエネルギー需要を抑えることが可能となります。照明装置をLEDに変換し、人感センサー(人などの動きを感知するセンサー)などを使用することで、照明に要する電気消費量を90パーセント削減することができます。


そして、発電及び熱生産に要する石化燃料を再生可能なエネルギー資源に変換することによって、私たちは炭素排出量を3分の1削減することができます。米国のテキサス州では、数年後には、風力発電による発電量が現在の4倍にあたる8000メガワットになる予定です。またテキサス州は同地の風力発電量を40000メガワットに拡大する予定であり、これは石炭を燃料とする火力発電所50基分の発電能力に相当します。このように代替エネルギー活用に向けた変化の流れには息をのむものがあります。


さらに14パーセントの排出量削減は、運輸システムの見直しと、産業界における石炭と石油使用を削減することで実現が可能です。また世界的な森林伐採を停止することで、さらに16パーセントの二酸化炭素排出の削減ができます。そして最後に、植林と炭素を封じ込める土壌改良によって現在の排出量の17パーセントを吸収することが可能です。


これらのイニシャチブはいずれも新たな技術を必要とするものではありません。私たちは2020年までに二酸化炭素排出量の80パーセントを削減するために何がなされなければならないのか分かっているのです。今日、あと必要なのは、これを実行に移すリーダーシップなのです。


IPS:
世界の指導者を含めてほとんどの人々は、気候変動がもたらす危険や緊急性について、全く危機意識を持っていないように思えます。どのようにすれば、こうした戦時体制のような動員に人々の関心を向けることができるでしょうか?
 

 
レスター・ブラウン:変化は既に起こっていますし、しかも加速度的に広がりをみせています。今年に入って、米国の二酸化炭素排出量は9パーセント下がりましたが、これは経済不況による影響だけではありません。今年だけでも22基にのぼる石炭火力発電所が閉鎖或いは他の施設への転換がなされており、米国において将来新たな石炭火力発電所が建設されることはおそらくないでしょう。世界の海面上昇がより顕著になれば、人々は行動に移ると思います。


地球温暖化の問題は、1989年の
ベルリンの壁崩壊に少し似ているかもしれません。当時は壁崩壊に先立つ何年も前から現地の人々の間で根深い不満が幅広く蔓延していました。そしてあたかも一夜のうちに政治的な革命が勃発し全てが変わりました。私たちは現在、このような転換点に向かっているのだと思います。


IPS:
私達がそのような転換点に向かっていることを示すその他の兆候はあるでしょうか?


レスター・ブラウン:私達の社会生活における行動様式に変化が表れています。かつて運転免許証を取得することや車を所有することが若い世代に人々にとって社会と関わっていく上で重要な要素と考えられたものです。しかし今やこの考え方は変わってきています。例えば日本では、社会との関与はインターネットを通じても可能となり、新車の売り上げは下落傾向にあります。米国でさえも、所有自動車総数が下落し、代わって自転車の利用が増えています。


また、新たな価値観を模索する動きが活発になっています。例えば車や通勤ライフスタイルが健康に及ぼす影響とは何か?車道に加えて歩道と自転車道を備え、かつ全てに人々にとって安全な通りはどのようにしたら作れるか?といった議論です。また、経済不況が人々のものの考え方を転換させてきた側面があります。私は、これからの人類はより物質に依存しない社会を再生させるのではないかと考えています。


IPS:
世界経済を再構築するにはそうした価値観の転換で十分でしょうか?


それは分かりません。つまり、文明を救うことができるかどうかは、こうした政治・社会の転換が、自然の包容力が限界点に達するまでに成し遂げられるか否かにかかっているのです。(原文へ


翻訳=IPS Japan戸田千鶴