|視点|「懸念の共有から行動の共有へ―ウィーン会議への期待」(池田大作創価学会インタナショナル会長)
【IPS東京=池田大作】
広島と長崎への原爆投下から70年となる明年を前に、核兵器に関わる議題の中心に「非人道性」の観点を据えるべきとの声が高まっている。
10月に発表された「核兵器の人道的影響に関する共同声明」には、国連加盟国の8割を超える155カ国が賛同した。「いかなる状況下でも」核兵器が使用されないことが、人類の生存にとって重大な意味を持つとの認識が、今や国際社会で大きな潮流を形成しつつあるのだ。
12月にはウィーンで「核兵器の人道的影響に関する第3回国際会議」が行われる。私は、この会議での討議を足かがりに、核兵器に安全保障を依存する「核時代」から脱却するための挑戦を、市民社会の行動と連動した“人類の共同作業”として進めることを呼び掛けたい。
この“人類の共同作業”を促す視座を提起するものとして、私は、ウィーン会議で討議される議題のうち、次の二つのテーマに特に着目をしている。
北東アジアに非核兵器地帯?(ジャヤンタ・ダナパラ元軍縮問題担当国連事務次長)
【キャンディ(スリランカ)IDN=ジャヤンタ・ダナパラ】
2015年、核兵器が米国によって史上唯一使用された広島・長崎への恐るべき原爆投下から70年を迎える。北東アジアにおける核問題の解決を緊急に模索する必要性は、アジア太平洋核不拡散・核軍縮リーダーシップ・ネットワーク(APLN)が9月に発表した「ジャカルタ宣言」の次の文章に強調されている。
「世界に1万6000発以上存在する核兵器の多くがアジア太平洋地域に集中しており、米国とロシアが世界の核備蓄の9割以上を保有しつつ大規模な戦略的プレゼンスを同地域に保っており、中国・インド・パキスタンがかなりの規模の核戦力を保持しており、国際社会に背を向けている北朝鮮が引き続き核能力を増強しつづけていることを痛烈に意識し…」
|視点|核戦争に向けて歩く夢遊病者(ヘルジュ・ルラス国際戦略分析センター所長)
【オスロIPS=ヘルジュ・ルラス】
英国のウェールズで9月4日から5日にかけて開かれた北大西洋条約機構(NATO)首脳会議において、ロシアからの直接的脅威とNATOがみなすものを抑止する新たな軍事的措置が決められた。その数日前、バラク・オバマ大統領はエストニアでバルト3国の大統領と会談し、「NATO加盟国1国への攻撃は全体への攻撃とみなす。決して孤立させることはない」と有事の際にバルト3国を守る決意を述べた。
|視点|持続可能な未来を創る―企業と社会の契約(ゲオルグ・ケル国連グローバル・コンパクト事務所長)
【国連IPS=ゲオルグ・ケル】
相当多数の企業がより良い世界のために投資を行っているような時代を、私たちは想像することができるだろうか? つまり企業が、経済的な意味合いだけではなく、社会的にも、環境的にも、倫理的にも、長期的な価値に奉仕するような世界を―。10年以上前ならそうした世界を想像することすらできなかったが、今は世界的な運動が進行中だと自信を持って言える。
|視点|カザフスタンはなぜ核兵器を廃絶したか(カイラット・アブドラフマノフ・カザフスタン国連大使)
【国連IPS=カイラット・アブドラフマノフ】
8月29日、「核実験に反対する国際デー」が制定されて5周年を迎えた。カザフスタンは1991年に独立を果たしたが、ヌルスルタン・ナザルバエフ大統領(当時はカザフソビエト社会主義共和国大統領)が同年打ち出した大統領令の一つが、当時世界第2位の規模であったセミパラチンスク核実験場の閉鎖を命じるものだった。
また当時のカザフスタンは、地球上のいかなる地点をも標的にできる110基を超える弾道ミサイルと1200発の核弾頭からなる世界第4位の核戦力を保持していたが、これも自発的に廃棄する決定を下した。
|視点|核時代から太陽光時代への平和的移行(ヘーゼル・ヘンダーソン「倫理的市場メディア」代表・未来学者)
【INPSコラム=ヘーゼル・ヘンダーソン】
日本の仏教者で創価学会インタナショナル(SGI)の会長である池田大作氏の2014年の「平和提言」は、日常のニュースから、人類共通の未来を確かなものにするためのより平和的で平等、持続可能な人間社会に向けたより長期的な関心へと私の焦点を引き上げてくれました。これらの幅広い関心は、今では、個人的、地域的、国家的な目標を超越した何百万人もの世界市民によって共有されています。
核兵器のない世界への道筋(池田大作創価学会インタナショナル会長)
【IPSコラム=池田大作】
「核兵器の人道的影響」をテーマにした国際会議が、昨年のオスロでの会議に続いて、2月にメキシコで行われた。
科学的検証に基づき、そこで出されたのが次の結論である。
「核兵器爆発の場合に、適切に対処し、または必要とされる短期的、長期的人道支援と保護を提供できる能力を持つ国や国際機関は存在しない」広島と長崎への原爆投下から来年で70年を迎えるが、今もって、核兵器の使用がもたらす壊滅的な結果から、人々の生命と尊厳を守る手段など、世界のどこにもありはしないのだ。
|視点|核軍縮の現状(ピーター・ワイス核政策法律家委員会名誉会長)
【ニューヨークIPS=ピーター・ワイス】
もし精神病というものが現実との接点を失うことだとしたら、核軍縮の現状はまさに精神病と言えるだろう。
一方で核問題は、数十年にわたる休眠状態から表舞台へと徐々に現れつつある。他方で「核兵器なき世界」への核兵器国のコミットメントは、遵守というよりも違反としてとらえられている。
まずは、核軍縮に関する前進点と後退点を挙げることから始めてみよう。
前進点では、核軍縮問題の中心である米国において、(徐々にトーンが落ちてきてはいるが)この問題に繰り返し言及している大統領がいる。2008年6月16日にパデュー大学で行った講演でバラク・オバマ上院議員(当時は民主党大統領候補)は、「世界に対して、米国は核兵器なき世界を目指すとの明確なメッセージを送る時が来ました。…私たちは、核兵器廃絶という目標を核政策の中心的要素としたい。」と語った。
|視点|ムスリム同胞団を「テロ集団」とみなすことの深い意味合い
【ワシントンINPS=エミール・ナクレー】
12月25日、ムスリム同胞団(1928年創設)が85年の歴史の中で初めて、エジプト政府(軍部を背景にしたアドリー・マンスール暫定政権)によってテロ集団指定を受けた。おそらくは軍部からの承認によってなされた今回の暫定決定は、北部ダカリヤ県のマンスーラとカイロにおける2度の爆弾テロ事件を受けてなされた。
エジプト政府はムスリム同胞団がこれらのテロ事件に関与したとの証拠を示していない。それどころか、アンサール・ベイト・マクディス(聖モスクの擁護者)という名前の過激派集団が、犯行声明を出しているのである。ムスリム同胞団自体は、すべての暴力的行為、とりわけ治安当局に対するそれを非難している。
|視点|「我々はスローモーションの核戦争を経験しつつある」(ロバート・ジェイコブズ広島市立大学准教授)
【ベルリンIDN=ジュリオ・ゴドイ】
ロバート・ジェイコブズ氏(53)は、核攻撃により人類は絶滅の淵にあるとする誇大妄想が支配的だった冷戦の最中に生まれた。彼は小学生だった8才当時の自身を振り返って、「当時学校で、核攻撃をどう生き延びるかについて学びました。生き残るために大事なことは、核攻撃の最初の兆候を見逃さないように気を張っていることだと教わったのです。」と語った。
友人の間で「ボー」という愛称で呼ばれていたジェイコブズ少年は、45年後、放射能が家族と地域社会に及ぼす社会的・文化的帰結に関する世界的に著名な研究者の一人となった。歴史学の博士号を持つ(専門分野:核兵器の文化と戦争史、米国の冷戦史と文化、科学技術の文化史)「ボー」博士には、核問題に関する3冊の著作があり、同テーマで数多くの論文を書いている。彼はまた、広島市立大学の大学院国際学研究科および広島平和研究所の准教授および研究員でもある。