2020年代は恐怖・貪欲・憎悪の時代になるか(ロベルト・サビオINPS評議員、Other News代表)
【ローマIDN=ロベルト・サビオ】
2020年、世の中の仕組みが急速に道徳的指針を失いつつある今日の世界において、私たちは、人類の歴史の中で新たな最低地点に入りつつある(あるいは既に入ってしまった)と認識しないわけにはいかない。
今日、例えば、気候変動の危機がもたらす前例のない生存上の危機に私たちは直面している。科学者によれば、国際社会は2030年までに気候変動を止める必要があり、それ以降は地球に不吉な予兆が現れるのだという。にもかかわらず、先日マドリードで開催された気候変動に関する世界的な会議(COP25)では、なんの合意も見られなかった。
若者を核兵器禁止運動の前面に
【ニューヨークIDN=J・ナストラニス】
国連のアントニオ・グテーレス事務総長は2018年5月24日に発表した「軍縮アジェンダ」において、若者が関与できるプラットフォームを構築していく必要性を強調した。そうしたプラットフォームには、それぞれの地域で軍縮や不拡散、軍備管理の問題に熱心に取り組む「世界各地の若者集団」が含まれる。
また、若者や軍縮・不拡散教育、紛争予防といった問題とリンクさせながら持続可能な開発目標(SDGs)の履行を支持する若者グループや地域団体と関わることは、若者の関与を目指すプラットフォームの第2の柱である。
|国連|「新たな大分岐」を引き起こす格差の拡大に警告
【ニューヨークIDN=サントー・D・バネルジー】
2020年を目前にして、人間開発への堅固な基礎を構築する点でかなりの進展があったものの、その他多くの国々と同じくタイでも不平等の問題に直面していると国連が警告している。これはまた、国連開発計画(UNDP)が発行している2019年版人間開発報告書が注目している点でもある。
『所得の先を考え、平均の先と現在の先を見据えて:21世紀の人間開発格差』と題する報告書では、教育と技術、気候変動を中心に、新世代型の格差が広がっており、この2つの大転換を野放しにすれば、社会には産業革命以来、未曽有の規模で「新たな大分岐(=格差の拡大)」が引き起こされる恐れがあると警告している。
|ロシア|激化する軍拡競争に高まる懸念
【モスクワIDN=ケスター・ケン・クロメガー】
ロシアは、今日蔓延している核拡散のリスクと脅威は、核不拡散条約(NPT)の厳格な履行によって除去できると考えている。その際、核不拡散・軍縮・原子力の平和利用という三本柱の間のバランスを尊重し保つことが必要だとしている。
2020年は4月から5月にかけて、ニューヨークの国連本部でNPT再検討会議が開催される。セルゲイ・ラブロフ外相は、来たる再検討会議では「できるだけ対立を避けたい。お互いに話をせず、耳を傾けることすら拒否し、他者が言っていることに関しててんでばらばらに言いたいことを言っていた2015年NPT再検討会議の二の舞は避けなくてはならない。」と考えている。
再び非大量破壊兵器地帯への軌道に乗る中東諸国(セルジオ・ドゥアルテ元国連軍縮問題担当上級代表、パグウォッシュ会議議長)
【ニューヨークIDN=セルジオ・ドゥアルテ】
中東地域における非核兵器地帯の確立は、国連の軍備管理・不拡散分野において最も困難な取り組みの一つである。この数十年間、他のいくつかの地域では、平和と安全を大いに高める非核兵器地帯を確立する条約の交渉・採択に成功してきた。
核兵器は、まずは、南極や宇宙、海底といった無居住地において禁止された。1967年、ラテンアメリカ・カリブ海地域は、人口居住地域における核兵器非核地帯確立のパイオニアとなり(トラテロルコ条約)、これに、南太平洋(ラロトンガ条約)、東南アジア(バンコク条約)、アフリカ(ペリンダバ条約)、中央アジア(セメイ条約)、さらにモンゴルが加わっている。
|キルギス|10代で略奪婚による花嫁となった母親の告白
【ナリンIDN=アクイラ・ハッサンザダ】
マイラム・ビビさんは、「息子には決して父親の真似をしてほしくない。」と語った。「父親」とは、かつて10代の少女だったマイラムさんを誘拐して暴力的な婚姻生活を強いた夫のことである。
現在41歳になるマイラムさんは小さな藁葺屋根の自宅に座って記者に身の上話を聞かせてくれたが、略奪婚を強いられた経験を語れるキルギス女性は少なくない。
|日本|ローマ教皇の来訪を機会に死刑制度を巡る議論が再燃
【東京IDN=浅霧勝浩】
「いのちなきところ正義なし〜日本の死刑制度の今後について〜」と題した国際シンポジウム」が開かれ、日本政府に対してオリンピックが開催される2020年に一切の死刑執行を停止する呼びかけがなされた。日本は死刑制度を維持している56カ国の一つである。また先進国(=OECD加盟36カ国)の中では死刑制度を維持しているのは米国と日本と韓国のみである。
この国際シンポジウムは、23日から4日間にわたり日本滞在するローマ教皇フランシスコの到着を前に、来訪のテーマである「いかなる状況においてもすべての生命と人間の尊厳を守ることを中心に据える」を支持する意味合いを込めて、22日に開催された。
|国際人口開発会議|女性・女児の人権を守る道筋を示す
【ナイロビIDN=ジャスタス・ワンザラ】
ケニアの首都ナイロビで11月12日~14日の日程で開催されたナイロビ・サミット(ICPD+25)は、1994年の初の国際人口開発会議(ICPD:カイロ会議)が開催されてから25周年の節目となるもので、女性・女児の人権擁護に向けた大胆な公約が採択されて、幕を閉じた。
世界各地から首脳や学者、人権活動家、宗教者ら6000人以上が集ったこの会議では、パートナーらが、2030年までに、妊婦の死亡をなくし、家族計画に関するニーズを満たし、ジェンダーを基礎とした暴力や女性・女児に対する有害な行為をなくすことを誓った。
忘れられた感染症:肺炎が5歳未満児の死因第1位に
【ニューヨークIDN=ショーン・ブキャナン】
肺炎は予防可能な疾病であるにも関わらず、昨年は39秒に一人に相当する80万人以上の5歳未満の子どもが命を落とした。しかし、最新の分析によると、引き続き肺炎対策に割り当てられる資金不足から、子供たちの生存率は改善できていない。
国連児童基金(UNICEF)が、WHO(世界保健機関)および母子疫学推計グループ(MCEE)の中間推定値と2018年の子どもの死亡率推計に関する国連の機関間グループ推定値に基づいて9月に発表した分析報告によると、亡くなった子供の大半が2歳未満であり、約153,000人が生後1か月以内の新生児が命を落としている。
賠償がいかに貧困を根絶し、SDGs実現に寄与するか
【ニューデリーIDN=マニッシュ・アプレティ、ジャイネンドラ・カーン】
数字を扱うことにはマイナスもあり、他の領域での満足を得ようと考える者が出てくるかもしれない。20世紀で最も影響力のあった詩人(=後のノーベル文学賞作家T.S.エリオット)が、ロンドンの厳格なロイズ銀行の植民地外務部に勤めていた1922年に『荒地』を著したことは不思議ではない。
他に思い付く事例と言えば、ピーター・ボーン氏だ。彼は叩き上げの会計士であり、ウェリングバラ地区選出の保守党国会議員である。2018年11月、(かつての英国の植民地である)インドがどのように国家予算を使うべきかについて明け透けに語り、反発を招いた。ボーン議員の(時代錯誤的な)発言は、有名な格言の一つ「パル・アップデシュ・クシャル・バフテーレ(他者に教えを垂れる前に、自らそれを実践せよ)」を思い起こさせるものだ。